政治家やメディアが流す情報の真偽を確認するファクトチェック。各国で既に成果を上げている取り組みだが、日本でもその取り組みに向けた議論が本格化し始めた。
7月15日、東京・渋谷のスマートニュースのイベントホールに50人余りが集まった。ファクトチェックについての世界の動向を伝える会合だ。
司会を務めたのはスマートニュースの藤村厚夫執行役員。日本報道検証機構の楊井人文代表、そしてNPOアイ・アジアの編集長である私(筆者)が報告を行った。3人は何れも、日本でファクトチェックを推進するために設立されたFIJ(FactCheck Initiative Japan)の発起人だ。
会合では、7月5日から7日にかけてスペインのマドリッドで開かれたファクトチェック国際会議での議論を中心に、各国の取り組みが紹介された。その詳細は楊井氏がYahooニュースで伝えているのでそちらに譲るが、主に、米国で政治家の発言をチェックする仕組みが発達し、欧州ではソーシャルメディア上での言説をチェックする活動が活発に行われていることが紹介された。
(参考記事: ファクトチェックを経ずして偽ニュースを語るなかれ 韓国メディアも取組み強化へ)
また、アジアでは、インド、フィリピンを除くと、本格的にファクトチェックが行われている状況にはないこと、その一方で、韓国にはソウル大学が中心となって多くのメディアが参加するファクトチェックの取り組みが始まったことが紹介された。
私は、特に欧州の事例を使って、「新聞やテレビの記者のみが事実を確認するという時代は終わりを告げていて、ファクトチェックの活動そのものが広く一般の人が参加するものになっている」と伝えた。
(参考記事: 北朝鮮報道に求められるファクトチェック)
会合は、土曜日の夜に有料で行われたにも関わらず、主催者側を除くと49人が参加。NHK、朝日新聞、毎日新聞といった大手メディアからの参加が目立った。質疑応答では、会場から、「新聞記者が担ってきた事実確認を一般の人が行うなどいうことが可能なのだろうか?」といった疑問や、「ファクトチェックをする際に、何を対象とするのか?」といった質問が出された。
これに対して、報告者からは、「新聞記者も当然、ファクトチェックの枠組みに入ってもらい、市民と一緒にファクトチェックを行ってもらいたい。ただ、新聞記者だけがファクトチェックを行う時代は終わったかと思っている」と説明。後者の質問については、「ファクトチェックの対象はFIJを中心に議論を進めている」と話した。
会合に参加した大手メディアの中堅幹部は、「会社の枠を越えた議論は難しいが、個人としては参加して今後の議論に加わりたい」と話した。
また、大阪の大学で教授職にある男性は、「市民が参加する枠組みというのに関心を持った。私の学生でも参加したいという人は多いのではないか」と話した。
また、主婦が家庭で仕事をするためのネットワーク作りを行っている会社の幹部は、「主婦へのファクトチェックのノウハウを伝授するなど、様々な形で関われると考えている。積極的に議論に参加したい」と話した。
FIJでは、同様な報告会を7月22日(土曜日)に大阪で開く他、全国の主要都市で段階的に開いていくことにしている。