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[新型コロナFactCheck] PCR検査の綿棒の長さ 「インフルエンザ用の2倍」との情報は不正確

[新型コロナFactCheck] PCR検査の綿棒の長さ 「インフルエンザ用の2倍」との情報は不正確

PCR検査での検体採取は非常に苦しいとの情報が拡散されている。苦しさは人それぞれだが、実際に検査を受けた人への取材から、その情報には事実と異なる点が見られ、PCR検査について必要以上に恐怖を煽る内容となっている。(池雅蓉)

チェック対象
コロナ検査経験者ですが検査はすごく苦しいです。 あの写真の状態で綿棒を10回ぐらい回します。そして同じことを口にもします。綿棒の長さも2倍です・・・涙も出たし鼻血も出ました。だからこんなことされたくないなら黙って自粛しろ
Twitter、2020年4月9日
結論
【不正確】PCR検査に回す検体としては、主に鼻の奥の粘液を取る。取材の結果、PCR検査用の綿棒はインフルエンザ用のと同じか少し長い程度であり、その綿棒を鼻の奥に入れて大体5回ぐらい回すことが確認できた。

検証

このツイートでは、自分が「コロナ検査経験者」と名乗っており、新型コロナウイルス感染症のPCR検査を受けたとみられる。そのPCR検査を受けた時の苦しい経験から、検査の自粛を呼びかけている。ツイートは、5月21日時点で、9.1万回以上リツイートされ、いいね数は19万回記録している。また中国語にも翻訳されて、「微博」(Weibo)で13万フォロワーを持っている「小红在霓虹」が中国でも拡散させている。

そこで、実際のPCR検査がどういうものか調べた。

国立感染症研究所が発表した「2019-nCoV(新型コロナウイルス)感染を疑う患者の検体採取・輸送マニュアル」によると、検体は気管、気管支、肺から採取する検体(下気道由来検体)と綿棒で鼻の奥に軽く擦るによって取った粘液(鼻咽頭ぬぐい液)の二つの種類がある。二つ検体の採取の優先順位も以下のように書いてある。

・・・下気道にウイルス量が多いことが報告されていますので、なるべく喀痰などの下気道由来検体の採取をお願いします。痰が出ないなど、下気道由来検体の採取が難しい場合は鼻咽頭ぬぐい液のみで構いません

つまり、もし痰が出ない場合には、鼻の奥の粘液を採取することになる。この対象言説で苦痛を訴えていることは、この作業である。

検査用の綿棒の長さについて、PCR検査のための検体の採取を実際に行っている看護師に確認したところ、看護師は、「インフルエンザとほとんど変わらない」と答えた。またPCR検査を受けた2人にも確認したところ、1人は「インフルエンザの綿棒より長かったが2倍までは行かない」と答えたが、もう1人は「一般的な綿棒と同じ長さだった」と語った。

また、医学雑誌「The New England Journal of Medicine」のウェブサイトには、鼻咽頭で検体採取の手順を説明する動画が掲載されている。動画には、「綿棒を取り外す前に、綿棒を数回回転させることを勧める(Your institution may also recommend rotating the swab in place several times before removing it )」という内容がある。

回数は明確にしていないが、動画(03:00ー03:06)を見ると、綿棒を大体5回ぐらい回している。実際に、前述のPCR検査経験者に確認すると、「綿棒を鼻に入れたあと、5回くらい回していた」と語っており、おおむね5回程度回して検体を採取すると考えられる。対象言説に書いてある10回と異なる。

結論

PCR検査を受ける人は痰が出ない場合には、通常鼻の奥の粘液のみを取る。また、看護師と複数の検査経験者により、新型コロナウイルス検査に使う綿棒の長さは、インフルエンザ検査の場合と同じ程度か、長くてもインフルエンザ検査の際の2倍以上ということはない。また検体を取るため、通常5回ぐらい回している。この情報は事実と異なるため、不正確と判定した。

※INFACTは、FIJの新型コロナのファクトチェック国際協力プロジェクトに参加している。このプロジェクトは日本財団などの支援を得て、各国のファクトチェック団体と協力して、海外の拡散した新型コロナに関する情報の検証も行っている。この記事の調査には、FIJのリサーチャーであるユウセンブン氏が協力した。

(冒頭写真は、amanaimagesより)

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