新型コロナウイルス感染症の診断法として、現在日本を始め世界中で広く使われているPCR検査法。そのPCR検査の検体に水を使ったところ「陽性」になったという動画がTwitter上で拡散した。しかし動画に映っている検査結果は「無効」を示しており「陽性」ではない。加えて、検査キットはPCR検査のものではなかった。(佐藤翠)
水でPCR検査「陽性」をお見せしましょう
(Twitter一般ユーザー、2021年8月9日投稿)
【誤り】 動画にうつっているのはPCR検査ではなく迅速(抗原)検査キットであり、その検査結果は「陽性」ではなく「無効」。
匿名アカウントが【水でPCR検査陽性】になったという説明と動画を含むツイートを発信し、8月16日現在で1069リツイートと1826いいねを集めた。
しかし、動画の後半にクローズアップでうつるキットには、COVID-19 Agと書かれている。これは、PCR検査よりも安く検査でき結果が早く判明することから、欧米では国境を超える際やナイトクラブに入る際の陰性証明のツールとして幅広く用いられている迅速抗原検査(Rapid-Antigen)の略だ。つまり、PCR検査ではない。
そして一番大事な点が検査結果だ。画像ではT(テストライン)に反応が出ている一方で、C(コントロールライン)にはしっかりと反応が出ていない。これは、検査結果が無効あることを示している。
迅速抗原検査の結果が陽性であれば、Cがはっきりと反応した上で、Tも反応する。Cが反応した上でTが少しでも反応すれば、陽性とみなされる。Cのみが反応した場合は陰性だ。
無効の場合は、Cが反応しない。Tが反応してもしなくても、Cが反応しなければ検査結果は無効だ。
新型コロナウイルス検査薬が水で陽性反応を示すことはあるようだ。2021年3月17日の朝日新聞の記事は、遺伝物質が含まれない水でも「陽性」結果を出しやすい検査薬があると指摘している。また同紙は、ウイルスの遺伝物質が少ない場合、検査薬によってはウイルスを検出できない場合があるとも報道。検査薬の性能にはばらつきがあると説明している。
このファクトチェックはあくまで拡散した画像とその説明についてのものだ。
結論
動画にうつっているのは迅速抗原検査キットであり、PCR検査ではない。また、検査結果は「無効」であり「陽性」ではない。よって、このツイッターの情報は誤りだ。
(冒頭写真:チェック対象動画より抜粋)