新型コロナウイルスワクチンの中に人間を操る「ナノテクノロジーロボット」が入っていると主張するユーザーが、細胞を捕獲する奇妙な物体の動画を投稿している。しかし、この動画に映っているのはワクチンとは何ら関係の無い不妊治療用のロボットである。(大船怜)
ワクチンの中のナノテクノロジーロボット
(Twitter一般ユーザー、2021年2月12日投稿)
【誤り】 動画は2016年に発表された、精子を運ぶ不妊治療用の装置である。
この投稿(冒頭画像)は新型コロナウイルスのワクチンに関する連続ツイートの一環としてされたもので、ワクチンに含まれるナノテクノロジーが人間の思考を支配するという趣旨の主張がされている。ツイートに添付された動画には、顕微鏡映像でらせん状の物体が細長い細胞らしき物を取り込んで移動する様子が映っている。
投稿は約1300件のリツイートを獲得している。
動画は不妊治療用ナノボット
しかしながら、この動画に映っているは実際はコロナワクチンとは何ら関係が無い、不妊治療用のナノボット(微小な機械装置)である。
「精子ボット(Spermbot)」と名付けられたこのらせん型のナノボットは、2016年1月にアメリカの科学誌「Nano Letters」で発表された。元の論文と動画はウェブ上で見ることができ、そのうち「Sperm delivery 2」と題された動画が上のツイートのものと同一である。
「精子ボット」については日本ではウォールストリートジャーナル(WSJ)、ハフポスト、読売新聞などにその詳細が報じられており、当該の動画はWSJ作成の映像コンテンツ(下)にも一部引用されている(1:30頃~)。
男性の精子細胞の動きが悪く卵子への受精に困難なる「精子無力症」は、不妊の大きな原因の一つと言われている。「精子ボット」はまだ実験段階の装置だが、磁場によって操作でき、精子を包み込み卵子へ直接運んで受精させるという仕組みのものだ。
動画はその背景からも公開時期からも、コロナワクチンとは全く無関係と言える。
この「精子ボット」の動画をコロナワクチンと関連付ける言説は海外でも拡散していて、ロイター通信や、オーストリアのファクトチェックサイト「Mimikama」などが検証し、ともに誤りと判定している。
結論
投稿でコロナワクチンと関連付けられている動画は、実際はコロナワクチンとは全く関係が無い。したがってこの言説は誤りである。