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[新型コロナFactCheck] 「アベノマスクの不良品たったの12枚」はミスリード 妊婦向けは4万7千枚

[新型コロナFactCheck] 「アベノマスクの不良品たったの12枚」はミスリード 妊婦向けは4万7千枚

新型コロナウイルス感染症対策の一環として、政府が各世帯や妊婦・子供向けに配布すると発表した布マスクに不良品が見つかったと指摘された問題について、不良品は「たったの12枚」であったかのような情報がネットで拡散したが、これは全戸向けのみの数で、先に配布された妊婦用マスクの不良品数が含まれておらず、ミスリーディングだ。(大船怜)

チェック対象
あんだけパさんが大騒ぎしてたアベノマスクの不良品って、回収して再検品したら、たったの12枚だったってひどい話だよね。
Twitter、2020年5月26日投稿)
結論
【ミスリード】厚生労働省によれば、全戸配布用マスクの不良品は12枚だが、妊婦向けマスクの不良品は4万7千枚だったことが明らかになっている(5月14日時点の情報)。
Twitter投稿のスクリーンショット

検証

政府配布マスクの不良品が「たったの12枚」であったかのように指摘したツイッター投稿は1万回以上リツイートされた。この投稿には、福島瑞穂参議院議員がホームページ上で公開した参議院厚生労働委員会の議事録(未定稿)のスクリーンショットも添付され、不良品の枚数について「五月十二日時点で十二枚」との政府側答弁などが赤線で強調されている。

だが、よく見ると、抜粋された部分は全戸配布用マスクの不良品についての答弁である。政府配布マスクは、全戸配布用に先立ち、まず、妊婦向けや小・中学校向けに配布を行い、多くの不良品が見つかっている。

政府は、4月14日から妊婦向けや小・中学校向けに布マスクの配布を始めたが、妊婦向けマスクに汚れなどの不具合の報告が相次ぎ、学校向けでも虫が混入する事例があった。これを受け政府は、メーカーに対し全戸配布用を含めた生産体制の見直しや検品体制の強化を要請。未配布分は一旦全て回収となった(NHK4月24日報道同日加藤厚生労働大臣会見)。

このマスク不良品問題について、福島議員は5月14日の参議院厚生労働委員会で質問。まず、妊婦向けマスクについて質問し、政府側(厚生労働省、吉田学医政局長)は不良品の数について次のように答弁していた(下線強調は筆者による)。

○福島みずほ君 四十七万枚のうち一割の四万七千、不良品があったということでよろしいですね。不良品の中身について説明してください。
○政府参考人(吉田学君) お答えいたします。
妊婦向けマスク、今御指摘いただきました不具合として私どもに寄せられました報告の内容といたしましては、異物の混入、あるいは汚れ、ほつれ、あるいはいわゆる黄ばみとして御指摘をいただいたものがございました。
このようなもの、市町村から四月三十日までに御報告いただいたものが件数で申し上げると四万七千件余となっておりまして、これまで妊婦向けに配布をさせていただきました約四十七万について約一〇%という状況になってございます。
ただ、今この不具合として報告されたものにつきまして、私ども厚生労働省において順次、あるいはメーカーにも御協力をいただいて、その内容、原因等について調査、確認を行っているところでございますが、黄ばみという御指摘をいただいたマスクにつきましては、検査機関で検査をさせていただいた結果、生地本来の色が残っているということでありまして、何らか新しいものが加わったものではないと、そういう意味では利用する上で品質に問題はないというものも、その黄ばみというものについてはそういうことであったという報告を専門機関からいただいておりますが、引き続き、それ以外の不具合というものについて現在調査、分析をしているところでございます。

つまり、政府側は、品質上問題ないと判断したものも含めて、妊婦向けマスクの「不具合」数は4万7千枚余りだったことを明らかにしている。

この後、福島議員は全戸配布用マスクの不良品についても質問し、政府側は次のように答弁した。

○福島みずほ君 不良品の割合はどれぐらいですか。
○政府参考人(吉田学君) お答えいたします。
全戸向けマスクにつきましては、これまで配布いたしましたマスクの中で、それぞれ配布先から指摘をいただいて返送があったマスク、そして、それを私どもの方で検品をさせていただいて、先ほど申し上げましたように異物の混入があるなど不良品と認めたもの、五月十二日時点で十二枚というふうに私ども把握をしてございます。
○福島みずほ君 十二枚ということですと、十二枚なんですね。どうして妊婦用マスクは、同じ企業がかなりダブっていますが、大量にあって、こちらはないんですか。
○政府参考人(吉田学君) お答えさせていただきます。
二つ考えられるかと思います。
一つは、全戸配布マスクにつきましては今配布をさせていただいているところでございますので、妊婦用マスクのときの経験から申し上げますと、配布をしてある程度時間がたってからこれはどうだろうかという御指摘をいただいて私どもの方にお話をいただく、また、それに基づいて私どもの方から返送をお願いして、返送をさせていただいて確認をするというところで若干のタイムラグが出ますので、先ほど申し上げました十二枚というのは五月十二日時点で私ども不良品として認められるものということでございますが、今後、御照会をいただいたり、あるいは物を送っていただいて私どもが確認すれば、この数字はこれから十二よりも増えることは予想されるということが一点でございます。
(※以下省略)

結論

以上の通り、「12枚」というのは政府が配布した布マスクのうち「全戸配布用マスク」のみの不良品数であり(5月14日時点の情報)、今後さらに増える可能性もある。

問題のツイッター投稿では「アベノマスク」の不良品が12枚であると述べられている。その指摘は、全戸配布用マスクの不良品数に限るなら正しいが、報道等で先立って問題となった妊婦向けマスクの不良品が4万7千枚であったという重要な事実が抜け落ち、誤解を与える。「アベノマスク」という言葉の指すものははっきりと定義されているわけではないが、妊婦や学校向けを含む政府配布マスク全体の通称とするのが通例のため、「ミスリード」と判断した。

※INFACTは、FIJの新型コロナのファクトチェック国際協力プロジェクトに参加している。このプロジェクトは日本財団などの支援を得て、各国のファクトチェック団体と協力して、海外の拡散した新型コロナに関する情報の検証も行っている。この記事の調査には、FIJのリサーチャーである八木風香氏が協力した。

(冒頭写真は、全戸配布で届いた政府配布マスク。インファクト撮影)

レーティング基準

INFACTはファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)のメディアパートナーに加盟しています。この記事は、INFACTのファクトチェック基本方針、およびFIJのレーティング基準に基づいて作成しました。FIJ編集委員会でガイドラインを満たすと判断されると、こちらのページにも掲載されます
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