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[FactCheck]「マクドナルド、バドワイザーが五輪のスポンサーを降りた。多くのスポンサー企業が東京五輪に冷めている」はミスリード

[FactCheck]「マクドナルド、バドワイザーが五輪のスポンサーを降りた。多くのスポンサー企業が東京五輪に冷めている」はミスリード

米大手企業のマクドナルドとバドワイザーが、「五輪のスポンサーを降りた」というツイートが拡散。このツイートからはスポンサー降板が昨今のコロナ禍の影響であるかのように連想されるが、実際に両企業が降板したのは2017年で、成長戦略の見直しがその理由だった。(上辻創太)

チェック対象
マクドナルドやバドワイザーは五輪のスポンサーを降りたんですね。多くのスポンサー企業が #東京五輪 に一番冷めているらしいです #週刊現代
(Twitter一般ユーザー、2021年5月7日投稿)
結論
【不正確】 両企業がオリンピックのスポンサーから撤退したのは2017年のことである。

この投稿は2021年6月20日時点で約2300RTと約5100いいねを獲得している。

五輪スポンサー

2021年の夏に開催が予定される東京五輪のスポンサーは、IOC(国際オリンピック委員会)とのパートナープログラムである「ワールドワイドオリンピックパートナー」を最上位として、その下に各国・地域のオリンピック委員会(NOC)のスポンサーや大会組織委員会(OCOG)のスポンサーが位置付けられている。協賛したスポンサーには、五輪のエンブレムや大会会場におけるプロモーションなど、知的財産の使用が承認される。

マクドナルドは、契約期間が2020年の東京五輪までだったワールドワイドオリンピックパートナーとUSOC(アメリカオリンピック委員会)の両スポンサーから、2017年6月に撤退した

ビール製造のバドワイザーは、1984年のロサンゼルス大会からUSOCのスポンサーを32年間務めたが、2016年のリオデジャネイロ五輪後に契約を満了し、2017年1月に更新の見送りを発表した

撤退の理由

両企業がスポンサーを撤退したのは企業の成長戦略の見直しからだとされている。IOCはマクドナルドとのスポンサー契約終了を発表したが、発表の中でマクドナルドは「世界的な成長戦略の一部として、全てのビジネスを見直し、他の優先事項に注力する」と声明を出している

一方のバドワイザーも、クラフトビールやワイン市場で苦戦を強いられ、収益向上に集中するためにUSOCとのスポンサー契約の更新を見送ったとされている(参照)。

チェック対象のツイートの返信には、新型コロナウイルスの蔓延が撤退の理由だと捉えるコメントが多数見られた。しかし、両社が撤退したのは2017年で、中国で最初に感染が確認された2019年末より以前のことである。両社のスポンサー撤退とコロナ禍の間には関連がない。

このツイートには「#週刊現代」と記載されている。ツイート投稿と同日の『週刊現代』の記事「緊急座談会『東京五輪は、やっぱり中止すべきか』〜騒動が示す日本の“劣化”ぶり」の中では、神戸大学大学院教授の小笠原博毅氏が「実は、いま東京五輪の利害関係者の中で一番冷めているのがスポンサー企業です」とした上で、「象徴的なのが、これはコロナ前から始まっていた動きですが、マクドナルドやバドワイザーといった大手がこの大会から公式スポンサーを降りたこと」と語っている。この記事は新型コロナの状況が続く中で「東京五輪は、やっぱり中止すべきか」と題した座談会についてのものだ。しかし、少なくともこの2社がスポンサーを降りたのは新型コロナのウイルスが中国・武漢で確認される前のことだ。

結論

マクドナルドとバドワイザーが五輪スポンサーから撤退したのは2017年で、新型コロナウイルスの感染が最初に中国で確認された2019年末より以前の出来事だ。チェック対象ツイートの表現だと、昨今のコロナ禍の影響を受け両社が東京五輪開催を前にスポンサーを降板したと受け取れる恐れがあるため、「ミスリード」と判定した。

(冒頭画像:東京2020大会公式HPより

InFactはファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)のメディアパートナーに加盟しています。この記事は、InFactのファクトチェック基本方針、およびFIJのレーティング基準に基づいて作成しました。

 

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