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[新型コロナFactCheck] モーニングショー 岡田教授の「療養ホテルに医師はいない」発言はミスリード

玉川徹氏が誤った発言で謝罪するなどしたテレビ朝日の情報番組「モーニングショー」だが、コメンテーターの発言には相変わらず事実確認に疑問符のつくものが散見される。今回は新型コロナウイルスの問題で常連コメンテーターとなっている白鴎大学の岡田晴恵教授の「軽症者が入る療養ホテルには医師がいない」との発言だが、この発言はミスリードだ。(立岩陽一郎)

チェック対象
(新型コロナウイルス感染症の軽症者が入るホテル等の宿泊療養施設について)「療養なんですね、医療じゃないんですね。ですから、お医者様がいるわけではないので。急変すればすぐつくようになっていると思うんですけれども、そこも多少改善は必要かなと思います」
(岡田晴恵・白鴎大学特任教授、テレビ朝日「モーニングショー」2020年5月1日放送)
結論
【ミスリード】厚労省のマニュアルでは療養と位置付けられ、その医師が常駐することになっていないのはその通り。だが、東京都のように医師がホテルに日中常駐し、看護師は夜間もいる対応をとっていることや、マニュアル上、看護師が日中常駐しているという事実にも触れていないため、実際の状況よりも不十分な体制になっているとの印象を与える。

検証

政府は、新型コロナウイルス感染症対策の基本対処方針(4月16日改正)で、医療崩壊を防ぐために、軽症者についてはホテル等の宿泊施設にて療養させる方策を打ち出している。これによって各地でホテルへの軽症者の受け入れが進められている。

東京都で、現在、都内で軽症者を受け入れているホテルは次の5か所だ。
東横INN東京駅新大橋前(4月7日〜)
東京虎ノ門東急REIホテル(4月15日〜)
品川プリンスホテル イーストタワー(4月17日〜)
APAホテル&リゾート 両国駅タワー(5月1日〜)
the b八王子(5月1日〜)

「医療ではなく療養」はその通り

療養なんですね、医療じゃないんですね。ですから、お医者様がいるわけではないので」は、モーニングショーで事実上のレギュラーコメンテーターのような役回りとなっている白鴎大学の岡田晴恵教授が発言したものだ。この発言は「急変すれば、すぐつくようにはなっているんだと思うんですけど、そこも多少改善は必要かなと思います」と続き、現状の療養ホテルでの対応は不十分で、医師を常駐させる必要があると指摘する内容となっている。

療養ホテルについては、厚生労働省が4月23日付けで各都道府県向けに発表したマニュアルがある。そこには次のように書かれている。

新型コロナウイルス感染症の感染者が全国的に増加傾向にあり、医療提供体制が逼迫し始めている中にあって、病床の更なる確保に取り組むとともに、限られた医療資源の有効活用の観点から重症者を優先する医療体制へ移行することが想定される。その際、軽症者等の同居人が高齢者等や医療従事者、福祉・介護職員等である場合など、軽症者等に適切な療養を 確保しつつ、更なる感染拡大を防ぐためには、宿泊療養が確実に必要になると考えられる。
新型コロナウイルス感染症の軽症者等に係る宿泊療養のための宿泊施設確保業務マニュアル(第1版)

療養施設は文字通り、軽症者を「宿泊療養」させるためのもので、医療目的ではない。つまり、岡田教授の発言にある「療養なんですね、医療じゃないんですね」はその通りだ。

東京都の療養ホテルでは日中、医師が常駐

次に、「お医者様がいるわけではない」という点について東京都の担当部局である福祉保健局に問い合わせたところ、「医師は、日中はホテルに常駐する体制となっています」と回答し岡田教授の発言を否定した。そして、「夜間は看護師のみで、24時間体制対応しています」と付け加えた。

看護師の数はホテルによって異なるというが、2名で対応しているケースなどがあるという。ただし、ホテルは医療施設ではないため、日中常駐している医師が療養ホテルで診療行為をするわけではないという。では、患者の容体が変化した場合は、「医師が連携している医療機関に電話で連絡し、そこで対応することになります。夜間は看護師が対応をします」と回答した。

東京都の説明では、現在受け入れが決まった5つのいずれのホテルでも同様の対応になっているとのことだ。

厚労省のマニュアルで医師は「オンコール体制」、看護師は「日中常駐」

また、先ほどの厚労省のマニュアルによると、「医師はオンコール体制を確保し、看護師等からの相談等に対応する」となっている。

この「オンコール体制」とは、医療従事者が患者の急変時や、救急搬送時に勤務時間外であっても呼ばれればいつでも対応できるように待機する状態を指す。東京都のように、療養ホテルに医師が常駐している必要は必ずしもないということだ。岡田教授の発言はこのマニュアルに基づいてなされたものかもしれない。

だが、このマニュアルには、看護師・保健師が日中常駐して、毎日1回、軽症者等から内線電話で聞き取りする体制をとることについても、明記されている。この点に、岡田教授の発言は触れていない。

新型コロナウイルス感染症の軽症者等に係る宿泊療養のための宿泊施設確保業務マニュアル(第1版)15ページより一部抜粋

では、実際に全国の療養ホテルの対応はどうなっているのか?厚生労働省で療養施設に関することに対応している「宿泊施設確保チーム」に問い合わせた。すると、担当者は、「多くの都道府県において、日中は医師が施設内に滞在していると聞いています。昼はホテルにいて、夜はオンコールということです」と答えた。

ただし、全ての自治体が宿泊所に医師を滞在させているわけではなく、都道府県の詳しい状況については公表していないと説明した。

結論

東京都をはじめとする多くの都道府県において、日中は療養施設内に医師が常駐している。ただし、必ずしも常駐しなくてよいことになっており、医療施設ではないので、その医師が様態の急変した感染者の診療にあたるというわけではない。

それゆえ、岡田教授の発言にある、「療養なんですね、医療じゃないんですね」との指摘は誤りとは言えない。ただし、「お医者様がいるわけではないので。急変すればすぐつくようになっていると思うんですけれども、そこも多少改善は必要かなと思います」という発言は、東京都のように医師がホテルに日中常駐する対応をとっている自治体もあり、少なくとも看護師が日中常駐している体制がとられているという事実に触れていない。そのため、実際の状況よりも不十分な体制になっているとの印象を与えるものとなっており、ミスリードだ。

※この記事の調査には、FIJのリサーチャー、藤代はづき氏が協力した。

(冒頭写真は、テレビ朝日「モーニングショー」に出演した岡田晴恵氏。筆者撮影)

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