テレビ朝日の情報番組「モーニングショー」で東京都のPCR検査について誤った報道をしてコメンテーターが謝罪したことは記憶に新しいが、相変わらず東京都のPCR検査数については誤った情報が拡散している。5月19日と20日の検査数がそれぞれ数十件と少なかったことを指摘したものもそのうちの一つだ。(立岩陽一郎)
チェック対象 東京のPCR検査数を知ってびっくりした。5月19日は、たったの48人。翌日の20日の検査数は52人。いまだにこんな少ない検査数しかしてない。もう好きな限り隠蔽すれば良い。・・・ (Twitter、2020年5月24日投稿) |
結論 【誤り】東京都健康安全研究センターによる検査数だけだとその通りだが、東京都の委託によるPCRセンターなどでの検査を含めると「5月19日が975人、20日が712人」である。 |
検証
このツイートは、3万人を超えるフォロワーを持っているデザイナーと見られる人物が5月24日に発信したもので、6400件以上リツイートされ、9400件のいいね!がついた。
このツイートで書かれている「もう好きなように隠蔽すれば良い」は、緊急事態宣言の解除を急ぎたい東京都が、検査数を減らすことにより意図的に陽性者数、つまり感染者数を抑えているという疑念を示したものだろう。実際、この翌日の5月25日に、最後まで残っていた東京都、千葉県、神奈川県、北海道の1都道3県で緊急事態が解除されている。
確かに、東京都新型コロナウイルス感染症対策サイトによると、東京都健康安全研究センターによる検査数は、ツイートに書かれている通り、5月19日は48人、20日は52人となっている。
しかし、都内でPCR検査が行われているのは東京都健康安全研究センターだけではない。民間委託の形で行われている「PCRセンター」でも検査が行われている。加えて、都の委託ではない完全に民間医療機関での保険を適用しての検査も行われている。それらは上記のデータには含まれていない。
それら全てを合算した都内全体のPCR検査実施人数は、新型コロナウイルス感染症対策サイトの「モニタリング指標(6)PCR検査の陽性率」の「テーブルを表示」をクリックすると、見ることができる。それによると、検査実施人数は5月19日が975人、20日が712人となっている。
ところで、東京都はなぜ、新型コロナウイルス感染症対策サイトにおいて誤解を招きかねない記載をしているのだろうか。これについて東京都福祉保健局感染症対策課に問い合わせたところ、担当者は、「当初、検査は東京都健康安全研究センターのみでしか行なっていなかったので、当時のものをそのまま使用している」と答えたが、そういう対応は改めた方が良いかもしれない。
結論
以上のとおり、「5月19日は48人、20日は52人」は東京都健康安全研究センターの検査数だけであり、都の委託によるPCRセンターなどでの検査を含めると「5月19日が975人、20日が712人」である。よって、ツイートの内容は「誤り」である。
※INFACTは、FIJの新型コロナのファクトチェック国際協力プロジェクトに参加している。このプロジェクトは日本財団などの支援を得て、各国のファクトチェック団体と協力して、海外の拡散した新型コロナに関する情報の検証も行っている。この記事の調査には、FIJのリサーチャーである八木風香氏が協力した。
(冒頭写真は、対象言説のツイッター投稿のスクリーンショット)