インファクト

 調査報道とファクトチェックで新しいジャーナリズムを創造します

[新型コロナFactCheck] 「在日米国大使館『近いうちに日本は医療崩壊』と警告」は不正確

[新型コロナFactCheck] 「在日米国大使館『近いうちに日本は医療崩壊』と警告」は不正確

在日米国大使館が「日本から脱出するように」「近いうちに日本の医療は崩壊する」と警告したとするツイートが拡散している。しかし、発表された内容を確認したしたところ、「近いうちに日本の医療が崩壊する」とまで断定的なことは言っていなかった。(田島輔)

チェック対象
これは本当にマズいです!
アメリカ大使館が、国内の米国人は日本から脱出するように警告しています。
・米国民は日本から帰れなくなる前に早急に脱出せよ
・日本政府はなるべく検査をしない方針であり、統計は正しくない
・近いうちに日本の医療は崩壊する

(Twitter、2020年4月4日投稿)
結論
【不正確】 在日米国大使館の注意喚起「ヘルスアラート」(4月3日)は、現在の日本の医療制度に信頼を置いているが、今後の数週間でどの程度機能するのか予測困難で、感染者増加によって米国市民が日本の医療を受けられなくなる可能性を示唆しているが、「日本の医療は崩壊する」とまで断定はしていない。

検証

在日米国大使館が4月3日の「ヘルスアラート」で「近いうちに日本の医療は崩壊する」などと発表したという情報が拡散している。匿名アカウント(6.1万のフォロワーをもち、YouTubeでも国会チャンネルを開設)から投稿され、リツイートは8700件以上、1.3万件以上のいいね!が付いている。

ただ、「近いうちに日本の医療は崩壊する」という部分は、米国大使館の発表を正確に訳したものではなく、誇張されている。「日本の医療制度の受入能力」という項目で、次のように書かれていた。

Our diplomatic mission is in touch with the U.S. Centers for Disease Control and Prevention in Atlanta and continues to carefully monitor the capacity of Japan’s health care system in Tokyo as well as other locations including Osaka, Nagoya, Fukuoka, Sapporo, and Naha. While we have confidence in Japan’s health care system today, we believe a significant increase in COVID-19 cases makes it difficult to predict how the system will be functioning in the coming weeks. In the event of a spike in cases, U.S. citizens with pre-existing medical conditions may not be able to receive the medical care they have grown accustomed to in Japan prior to the COVID-19 pandemic.

仮訳:
私たち外交使節団は、アトランタの米国疾病予防管理センターと連絡を取り、東京だけでなく、大阪、名古屋、福岡、札幌、那覇その他の都市における日本の医療制度の受入能力を注意深く監視し続けています。私たちは、現在の日本の医療制度に信頼を置いているものの、COVID-19の感染が増加していることは、今後の数週間で、日本の医療制度がどの程度機能するのか予測することを困難にしています。COVID-19の感染増加が発生した場合、既往症のある米国市民は、COVID-19のパンデミック以前に、日本で受けていた医療を受けられない可能性があります。
仮訳全文。原文はHealth Alert – U.S. Embassy Tokyo (April 3, 2020)

これは、今後数週間で、コロナウィルスに感染した人が増加した場合、日本の医療制度が従前どおりに機能するか予測困難であり、「感染者増加によって米国市民が日本の医療を受けられなくなる可能性」に言及したものだが、「近いうちに日本の医療は崩壊する」とまで断定したものではない。ツイッター投稿は、米国大使館が、日本の医療崩壊を断定したかのように、必要以上に不安を煽る内容であって、実際の内容との乖離が大きい。

なお、在日米国大使館は、4月6日7日8日10日にもヘルスアラートを出しているが、日本の医療の受入能力や医療崩壊に言及した記述はない。

「米国民は早急に脱出せよ」「日本政府の統計は正しくない」は、類似の表現あり

ところで、「米国民は日本から帰れなくなる前に早急に脱出せよ」という発表内容はあったか。これに該当しそうな記述は、次のようになっている。

If U.S. citizens wish to return to the United States, they should make arrangements to do so now. U.S. citizens who live in the United States but are currently in Japan should arrange for immediate return to the United States, unless they are prepared to remain abroad for an indefinite period.

仮訳:
米国市民が米国への帰国を希望する場合、すぐに帰国の手配をして下さい。米国在住で、現在日本に滞在している米国市民は、無期限に海外に留まる準備ができてない限り、米国への即時帰国を手配して下さい。
仮訳全文。原文はHealth Alert – U.S. Embassy Tokyo (April 3, 2020)

帰国予定のない米国人以外に即時帰国を呼びかけており、実質的に帰国命令といえる。国際線の減少を警鐘している記述もある。したがって、「米国民は日本から帰れなくなる前に早急に脱出せよ」という要約は、趣旨として大きく間違ってはいない。

また、「日本政府はなるべく検査をしない方針であり、統計は正しくない」との警告に該当しそうな部分は、次のように書かれている。

As compared to the number of positive cases and hospitalizations in the United States and Europe, the number of reported COVID-19 cases in Japan remains relatively low. The Japanese Government’s decision to not test broadly makes it difficult to accurately assess the COVID-19 prevalence rate.

米国とヨーロッパの陽性症例と入院患者数と比較して、日本で報告されたCOVID-19の症例数は、比較的、低くなっています。広範な検査を行わないという日本政府の決定は、COVID-19の有病率を正確に評価することを困難にしています。
ー原文はHealth Alert – U.S. Embassy Tokyo (April 3, 2020)

この部分は「日本政府が広く検査を行っていない」ことによって、日本の症例数が実態を正確に表していないことを示唆していると考えられる。そのような意味で、在日米大使館が「統計は正しくない」と言ったという解釈も、間違いとは言えない。

ただ、厳密に言えば、日本政府(厚生労働省)は、検査人数や陽性確定人数を発表しているが、「有病率」(COVID-19 prevalence rate)は発表していない。在日米国大使館も「有病率を正確に評価することを困難」と言っているが、「有病率の統計が正しくない」と言っているわけではないので、注意が必要である。

在日米国大使館が4月3日発表した「ヘルスアラート」の仮訳全文はこちら

結論

在日米国大使館が注意喚起で「米国民は日本から帰れなくなる前に早急に脱出せよ」「日本政府はなるべく検査をしない方針であり、統計は正しくない」と発表したというのは間違いとまでは言えない。だが、「近いうちに日本の医療は崩壊する」と断定的に述べておらず、過剰な意訳によって誤解を与える可能性があるため、「不正確」と判定した。

(冒頭写真は、東京の在日米国大使館。Wikimedia Commonsより)

INFACTはファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)のメディアパートナーに加盟しています。この記事は、INFACTのファクトチェック基本方針、およびFIJのレーティング基準に基づいて作成しました。FIJ編集委員会でガイドラインを満たすと判断されると、こちらのページにも掲載されます
Return Top