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[新型コロナFactCheck] LINEの調査で「日本の感染者は公表の10倍以上」 中国で誤情報拡散

[新型コロナFactCheck] LINEの調査で「日本の感染者は公表の10倍以上」 中国で誤情報拡散

中国で、LINEが厚労省と行った新型コロナウイルスに関するアンケート調査結果から日本の感染者数は公表数の10倍以上がいるとの情報が拡散した。しかし、首都圏の結果を東京都と比べた上で、そのパーセンテージを日本全体にあてはめるなど、極めて強引な結論の導き方をしており、この情報は誤りだ。(池雅蓉)

チェック対象
日本の厚生労働省とLINEが連携し、3月27日から30日の期間、東京と隣の地域のLINEの利用者に調査をした。調査によると、東京約6万の回答者のうち、7.1%の人は少なくも一つの新型コロナウイルスの症状が出た。・・・(中略)・・・調査によると、日本に感染が疑われる人は公表の10倍以上かもしれない
(Weibo、2020年4月1日投稿)
結論
【誤り】これはLINEが単独で行った調査で、調査結果は、単に新型コロナウイルスの兆候の可能性を示す症状をもった人の数を示しただけのもので、感染者数とはならない。首都圏の結果を東京都と比べた上で、そのパーセンテージを日本全体にあてはめるなど、極めて強引な結論の導き方をしている。

検証

この情報は中国のミニブログ「微博」(ウェイボ)で、1万人以上のフォロワーをもつアカウントから発信され、拡散した(投稿は現在削除されている)。

Weibo(微博、2020年4月1日投稿、現在は削除)のスクリーンショット

(訳) 日本東京の状況は制御不能で、数多くの感染が疑われる人がまだ検査していない。日本の厚生労働省とLINEが連携し、3月27日から30日の期間、東京と隣の地域のLINEの利用者に調査をした。調査によると、東京約6万の回答者のうち、7.1%の人は少なくも一つの新型コロナウイルスの症状が出た。その中に、高熱やひどい咳など症状もある。
 報道によると、高熱や咳などいずれの症状があることは、感染とは言えない。しかしこの割合によると、感染が疑われる数は4500人に達し得る。東京都によって公表された443人より多い。調査によると、日本に感染が疑われる人は公表の10倍以上かもしれない。しかも、調査数が非常に少ないアンケートなので、本当の感染者数はニューヨークと同じくらい、最大数十万いるかもしれない。

まず、今年3月27日から30日までに実施したLINEの調査を確認する。LINEの発表(3月31日)によると、この調査は3月27日から30日まで、首都圏の東京都、神奈川県、埼玉県、千葉県に居住する「LINEリサーチ」のモニターを対象に「新型コロナの状況把握アンケート」を実施したものだ。

LINEはこの調査結果とともに、今後厚労省と連携してアンケートを実施することも発表した。つまり、3月27日から30日までに実施したのは、あくまでもLINEだけで行った調査だ。LINEと厚労省の共同調査は、3月31日から実施された(第1回「新型コロナ対策のための全国調査」)。

今回の調査結果によると、6万3483名の回答者のうち、7.1%の人が、「37.5度以上の発熱」「喉の痛み」「強いだるさ」「咳がひどい」「息苦しい」「下痢がある」「味・においがしない」などの体調不良にチェックを入れたという。

しかし、体調不良の症状があることは、必ずしも新型コロナの症状とは言えない。例えば、日本プライマリ・ケア連合学会がまとめた新型コロナウイルスの初期診療手引きでも、普通の風邪、インフルエンザ、急性胃腸炎でも発熱、下痢、呼吸器症状などの症状が出るとしている。

つまり、6万3483名の回答者のうち7.1%の人が新型コロナの兆候の可能性を示す際の症状にチェックを入れたとしても、この症状がすなわち新型コロナの感染が疑われるとまで言うことはできない。

この時点(3月30日)での東京の公表感染者数は443人だったが、そもそもLINEの調査対象は東京都に限らず首都圏の3県も含まれている。このため、首都圏と東京都の数値を比較して、実際の感染者は公表者の10倍以上と推測し、これを日本全体にあてはめるというのは、極めて強引な結論の導き方である。これによって、日本の感染者数は公表数の10倍以上がいるとは言えない。

結論

LINEが単独で行った調査であり、厚労省と連携して行った公的な調査ではない。その上で、調査結果は、単に新型コロナウイルスの兆候の可能性を示す症状をもった人の数が示しただけのもので、それをもって新型コロナの感染が疑われる人とすべきではなく、まして、感染者数とはならない。また首都圏の結果を東京都と比べた上で、そのパーセンテージを日本全体にあてはめるなど、極めて強引な結論の導き方をしており、この情報は誤りだ。

※この記事の調査には、FIJのリサーチャーであるユウセンブン氏が協力した。

(冒頭写真は、編集部撮影)

INFACTはファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)のメディアパートナーに加盟しています。この記事は、INFACTのファクトチェック基本方針、およびFIJのレーティング基準に基づいて作成しました。FIJ編集委員会でガイドラインを満たすと判断されると、こちらのページにも掲載されます
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