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[新型コロナFactCheck] 「日本で売られているMade in Taiwan表記マスクは中国製の偽物」は本当か?

[新型コロナFactCheck] 「日本で売られているMade in Taiwan表記マスクは中国製の偽物」は本当か?

「Made In Taiwan」と書かれた台湾製のマスクが一部で販売されていることについて、「中国製の偽物だ」との情報が拡散している。台湾製の医療用マスクは輸出、販売規制がかかっているのが理由だが、必ずしも中国製だと断定できる根拠はない。(池雅蓉)

チェック対象
Made In Taiwanのマークをつけるマスクを見つけたったら絶対に買わないてください!中国から何の認証もないの偽物です! 現時点、台湾製のマスクは全て寄付品です、6月末まで輸出制限があって、自由に販売できません。偽物を買わないで使用しないでください!
(Twitter、2020年4月20日投稿)
結論
【根拠不明】今回販売されたマスクは輸出禁止となる前に買ったもの、または輸出禁止前に日本に持ち運ばれたマスクの可能性もあり、台湾製のマスクではないことは証明できない。また、動画に掲載された「中国深圳」の証明書は電気製品のものであり、マスクの証明書ではないから、中国で製造された根拠にならない。

検証

最近、認定証付きの台湾製のマスクが販売されたとの情報が、日本に住む台湾人とみられる人物からFacebook(在日台湾人コミュニティのグループ)で、中国語で発信された。それに対して、「台湾製のマスクは6月末まで輸出制限があり、現時点で販売されるマスク中国製の偽物だ」と指摘する情報(動画あり)が日本語でツイッターに投稿された。2.7万以上リツイートされるなど拡散している。

Facebook投稿
Twitterで拡散した投稿のスクリーンショット

どちらが事実なのか? まず、Facebookの投稿内容(原文は中国語)を確認する。

「台製醫用口罩(有鋼印) 一盒有50個 $400一盒 有需要賴(ID) 量不多先到先得」

(訳)台湾製医療用マスク(刻印がある)一箱は50枚ある。数が多くないので、一箱400ニュー台湾ドルで、必要な人はラインで連絡(ID付き)、数が多くないので、早いもの勝ち

投稿写真のマスクの外観から見ると、確かに台湾政府が管理している医療用マスクと一致するが、果たして台湾製のマスクかどうかは判断しにくい。

Facebook投稿された写真のスクリーンショット
台湾政府が管理・販売しているマスク(筆者撮影)

日本の経済産業省にあたる台湾の経済部によると、台湾製の医療用マスクは今年1月下旬から輸出禁止となり、禁止期間が2回延長されて6月までマスクの製造と販売は政府が管理している。つまり、自由に製造・販売できるわけではない(メディカルマスク、N95マスクとも「医療用マスク」と呼ばれるが、一般市民に販売するマスクはメディカルマスクのみ)。

台北駐日経済文化代表処(2020年4月24日)

このため、台湾では、一般の市民は健康保険証を持って本人確認をした上でしかマスクを購入することはできない。4月28日時点では、1人あたり2週間に大人9枚、子ども10枚と決められている。以前は、1人あたり1週間に2枚だった時期もある。つまり、現時点の台湾では、台湾製の医療用マスクを何箱も大量購入することはできない(台湾の医療用マスクは指定の封筒に入れて販売される)。

だが、台湾の財政部関務署(日本の税関に相当する部署)によると、輸出禁止期間内の現在も、1人あたり250枚(5箱)の台湾製の医療用マスクを海外に持って行くことは可能だ。つまり、制限がかかる前に購入されたマスクが日本に持ち込まれて販売されている可能性も否定できない。

台湾(中華民国)政府・財政部関務署の通関規定

(訳)
Q8:海外に行く時、輸出禁止のマスクを持っていけますか?数量の規制はありますか?申告する必要はありますか?
A:2020年1月24日から2020年4月30日まで、海外に行く時に、最大250枚のマスク(例えば、1箱50枚入、最大5箱)しか持っていけません。税関に申告書を提出する必要はありません。

他方、ツイッターの動画には、Facebookの投稿にあったのと同じ証明書を取り上げて、メーカーの名前と会社の所在地が中国の「Shenzhen」(訳:深圳)と書いてあることを根拠に「中国製」だと指摘している。しかし、よくこの証明書の証明項目をよく読むと、「Electromagnetic Compatibility」(電磁両立性)と書かれている。

電磁両立性とは、機器が電磁的妨害や電磁的な干渉を受けないように、または受けても正常に動かす耐性のことである(EMC対策・ノイズ対策の総合情報サイト参照)。つまり、この証明書は、電気、電子製品のものであり、マスクの証明書ではない。従って、この証明書をもって、マスクが中国製と言うのには無理がある。

なお、今回の日本に拡散されたツイッターは、台湾でも話題になった。複数の台湾メディアがこのツイッターを引用し、「中国製の偽物が日本で販売されている」と報道した。日本でもその奮闘ぶりが報じられている台湾の中央感染症指揮センターの陳時中氏が4月23日の記者会見で、記者から質問を受け、「(他の国に)寄付を行っているが、販売していない」と強調する騒ぎになった。実際、台湾は4月21日、日本に対してマスク200万枚を寄付している。

結論

台湾製の医療用マスクは今年6月まで輸出禁止となっているが、輸出禁止となる前に買ったもの、または輸出禁止前に購入して日本に持ち運ばれたマスクの可能性もある。中国の「深圳」と書いてある証明書はマスクの証明書ではない。したがって、ツイッター投稿が主張するように、「Made in Taiwan」のマスクが中国製の偽物だと断定できる根拠はないので「根拠不明」と判定した。

※この記事の調査には、FIJのリサーチャーである武藤珠代氏が協力した。

(冒頭写真は、台湾の医療用マスク。指定の封筒に入れて販売される。筆者撮影)

INFACTはファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)のメディアパートナーに加盟しています。この記事は、INFACTのファクトチェック基本方針、およびFIJのレーティング基準に基づいて作成しました。FIJ編集委員会でガイドラインを満たすと判断されると、こちらのページにも掲載されます
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