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[新型コロナFactCheck] 「大阪で感染した看護師による大規模な院内感染」との誤情報、中国で拡散

[新型コロナFactCheck] 「大阪で感染した看護師による大規模な院内感染」との誤情報、中国で拡散

大阪の病院で感染した看護師が病院の指示で働かされたために、2日間で120人が感染する大規模院内感染が起こったとの情報が、日本の報道を引用する形で中国で拡散した。しかし、これは報道を誤って伝えたものだった。(池雅蓉)

チェック対象
新型コロナへの感染が確認された看護師は勤務に呼び出された。それによって、大阪生野区の病院では二日間に120人以上の大規模感染が起こった。
(Weibo、2020年4月24日投稿)
結論
【誤り】大阪府の資料によると、「120人」はこの女性看護師の勤務先の病院の累計感染者数で(4月22日現在)、この看護師が感染させた人数ではない。この看護師が勤務したことで感染を広がったとする根拠もない。

検証

この情報は「微博」(Weibo)で35万フォロワーを持っている「西日本」が中国で拡散させており、いいね数は1059回に達した(6月12日時点)。

この投稿はテレビ朝日のニュース(4月23日)を根拠としており、まずそのニュースの内容を確認した。それによると、次のように報じている。

大阪市生野区のなみはやリハビリテーション病院では、4月22日までに医療従事者や患者ら合わせて122人の感染が確認されています。大阪市保健所によりますと、女性看護師がPCR検査で陽性と判明した後もこの病院が20日から翌日朝まで勤務を続けさせていたことが分かりました。

ニュースによれば、この病院の感染者は22日までに122人いたことになる。また、PCR検査で陽性と判明した女性看護師が20日からの21日の朝まで勤務していたことになる。だが、女性看護師による大規模感染が起こったとは報じられていない。

大阪府の資料によると、PCR検査で陽性と判明した女性看護師が勤務させられていた「なみはやリハビリテーション病院」における感染者数は、累計120人だった(4月22日現在)。この病院では19日に9人、20日に41人、21日に23人、新たな感染者が見つかっており、大規模感染が発生したといえるが、「2日間で120人」の感染者が見つかったわけではない。また、陽性と判明した看護師から感染が広がった可能性も否定できないが、定かではない。

結論

この投稿で引用されたテレビ朝日のニュースには、この病院は女性看護師による大規模感染が起こったことは触れていなかった。この病院では多くの感染者が見つかったが、陽性と判明した看護師から感染が広がったのかどうは不明で、「2日間で120人以上の大規模感染が起こった」という事実もないため、対象言説を「誤り」と判定した。

※INFACTは、FIJの新型コロナのファクトチェック国際協力プロジェクトに参加している。このプロジェクトは日本財団などの支援を得て、各国のファクトチェック団体と協力して、海外の拡散した新型コロナに関する情報の検証も行っている。この記事の調査には、FIJのリサーチャーである龍偉氏が協力した。

(冒頭写真は、中国版ミニブログ微博(weibo)より)

レーティング基準

INFACTはファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)のメディアパートナーに加盟しています。この記事は、INFACTのファクトチェック基本方針、およびFIJのレーティング基準に基づいて作成しました。FIJ編集委員会でガイドラインを満たすと判断されると、こちらのページにも掲載されます
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