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「ドイツのクリニック所長がコロナワクチンの危険性を訴え自殺」は根拠不明 【FactCheck】

「ドイツのクリニック所長がコロナワクチンの危険性を訴え自殺」は根拠不明 【FactCheck】

ドイツのある病院院長が自殺とみられる状況で亡くなったというニュースに関し、彼が新型コロナウイルスワクチンの危険性を訴える内容の遺書を残していたとする投稿がTwitter上で拡散された。しかし、この主張は何らかの報道等に基づくわけではなく、関係者も遺書の存在を確認していない。(大船怜)

チェック対象

ドイツのケムニッツにあるクリニックの診療所長が自殺。 彼は、致死性の高いcovid-19ワクチンを住民に投与していること、それが実際には実験であり生物兵器であること、予防接種が無害は嘘であることを遺書に記していました。 自殺することが訴える唯一の方法と命を絶ち、遺書の公開を求めています。
(Twitter一般ユーザー、2021年11月13日投稿)

結論

【根拠不明】関係者はいずれも遺書の存在を確認していないとしており、情報の裏付けは無い。

チェック対象の投稿スクリーンショット

このツイートは本稿執筆時現在約2000RTを獲得している。

「遺書」についての報道は無し

チェック対象の投稿では、ドイツ・ケムニッツ市にある最大級の病院の院長だったThomas Jendges氏の死去を伝える独紙「Bild」の記事とFacebookのコメントと思われるスクリーンショット(冒頭画像)が添付されている。後者の画像では、「警察筋によれば彼は遺書を残しており、新型コロナウイルスワクチンは無害であると嘘をつき大衆への接種を進めたこと、ワクチンは実は生物兵器を媒介するためのものだったことが告白されている」などとする内容の新聞記事風の文章がドイツ語で記されている。

Bild紙の記事では、状況からJendges氏は自殺と見られるという記述はあるが、遺書については存在するか否かも含めて全く書かれていない。ドイツ国内の他の報道やケムニッツ市の発表でも、遺書については述べられていない(参照:SWR(南西ドイツ放送)TAG24市発表等)。この新聞記事風の文章は何らかのメディア報道を引用したわけではなく、創作されたものであるようだ。

関係者も否定

この主張に関してはDPA(ドイツ通信社)AFP通信ロイター通信などがファクトチェック記事を作成している。

これらのメディアの取材に対し、地元警察やケムニッツ市の広報は、これまでに遺書の存在は確認されていないと回答している。

また、Jendges氏は今年8月、新型コロナウイルス対策のワクチン接種センターの設置について述べた病院のプレスリリースの中で、「ワクチンは感染と重症化のリスクを抑える」とこれを歓迎する内容のコメントを残している。

結論

「遺書」の実在を示す具体的な根拠は無く、主張は「根拠不明」である。

  • 4エンマ大王 「虚偽」
  • 3エンマ大王 「誤り」
  • 2エンマ大王 「ミスリード」「不正確」「根拠不明」
  • 1エンマ大王 「ほぼ正確」

InFactはファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)のメディアパートナーに加盟しています。この記事は、InFactのファクトチェック基本方針、およびFIJのレーティング基準に基づいて作成しました。

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