インファクト

調査報道とファクトチェックで新しいジャーナリズムを創造します

【FactCheck】裏金問題「収支報告を訂正」報道はミスリード

【FactCheck】裏金問題「収支報告を訂正」報道はミスリード

安倍派、二階派が派閥の政治資金パーティーで得た収入をキックバックして所属議員が裏金としていた問題で報道各社は両派が政治資金収支報告書を訂正したことを報じている。しかしこの「訂正」は、訂正と言える内容ではなく、単なる再提出に過ぎない。各社の報道は誤報に近いミスリードだ。

対象言説 「自民 安倍派 おととしまでの3年間の収支報告書を訂正」「二階派が収支報告書を訂正」などとした主要メディア各社の報道。

結論 【ミスリード】

InFactはレーティングをエンマ大王で示している。
問題の報道は「ミスリード」であり、これは2エンマ大王となる。

エンマ大王のレーティングは以下の通り。

  • 4エンマ大王 「虚偽」
  • 3エンマ大王 「誤り」
  • 2エンマ大王 「ミスリード」「不正確」「根拠不明」
  • 1エンマ大王 「ほぼ正確」

InFactはファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)のメディアパートナーに加盟しています。この記事は、InFactのファクトチェック基本方針、およびFIJのレーティング基準に基づいて作成しました。

ファクトチェックの詳細

安倍派、二階派の政治資金パーティーを巡ってキックバックが行われ裏金が作られていた一連の問題で、新聞、テレビなどの主要メディアが両派閥が政治資金収支報告書の訂正を行ったと報じている。

安倍派については、NHKが「自民党の派閥の政治資金パーティーをめぐる問題で、最大派閥の安倍派「清和政策研究会」が、おととしまでの3年間に記載していないパーティー収入が4億3500万円余りあったなどして、31日、政治資金収支報告書を訂正しました。さらに、記載されていなかった議員や元議員側への派閥からの寄付、4億2700万円余りも書き加えられました。」と報じ、二階派については読売新聞が「自民党派閥の政治資金規正法違反事件を巡り、同党二階派は18 日付で、2020 ~22年分の政治資金収支報告書の訂正を総務省に届け出た。3年間のパーティー収入のうち約1億3614万円分の記載漏れがあったほか、20年時点での繰越額を7362万円増額した。収入総額の記載漏れは、計2億1370万円。」と報じており、各主要メディアは概ね同様の報道を行っている。

その報道からは、いろいろ問題が有るものの、取り敢えず安倍派も二階派も問題を認識して襟を正したかのように受け止められるだろう。では、その訂正の中身を見てみたい。

安倍派(清和政策研究会)は1月31日に収支報告書の「訂正」を提出し公表された。問題となった政治資金パーティーの収入は2022年は9480万円だった。そして「対価の支払いをした者の数」、つまり購入者は3200人。1人2万円が単価だから、本来は購入者は4740人でなければならないことは過去の記事でも伝えているし、政治資金パーティーが開かれたホテルは立食で2000人が定員だという点も伝えたが、ここではそれを問題にしない。

問題は「訂正」の部分だ。収入は1億円増えて1億9762万円になっている。1つのパーティーで1億円の収入が裏金になっていたという事実に驚く。それを複数年で計算したのが各社の報道だ。そういう「訂正」が行われたという各社の報道だが、注目すべきはそこではない。パーティー券の購入者数だ。ところが、それが「不明」となっている。ここが「不明」では、政治資金パーティーでは、パーティーの実態を示したことにはならない。

因みに、収入を単価で割ると、9881人になる。1万人近い人が購入したことになる。ところで前述の通り、パーティー会場は立食で2000人が定員という規模だ。つまり安倍派は定員の5倍のパーティー券を販売していたということになる。それは出席しないことを前提にしたパーティー券の販売だったことを物語っており、これは実体としては寄付金集め以外のなにものでもない。もしこれが企業・団体による購入であれば、これは政治資金規正法が禁じている企業・団体献金であることは言うまでも無い。

安倍派の「訂正」がとても訂正とは言えないことを書いてきたが、二階派(志帥会)の「訂正」を見ると、更に驚かされる。上が「訂正」前で、下が「訂正」されたとする収支報告書だ。

パーティー収入は2363万8692円増えている。問題はここでも「対価の支払いをした者の数」、購入者数だ。これは「訂正」前もその後も7538人だ。それは2300万円余りのパーティー券が売られたもののその全ての購入者がパーティーには出席しなかったということなのかもしれない。そうであれば、これは単なる寄付だ。この増え方から見て個人が購入したとは思えず、違法な企業・団体献金が2300万円余にのぼったということを自ら明らかにした内容ということなのかもしれない。それこそInFactが過去のファクトチェック記事で報じた内容でもあり、繰り返しになるが、これは違法な行為だ。

因みに、訂正とは、誤りを正しく直すことだ。つまり、安倍派も二階派も、今回の「訂正」は、誤りを正した内容とは言えず、単なる再提出でしかない。これを「訂正した」と報じることは誤報に近い。その「訂正」を受理して公表する総務省も問題だが、こうした事実に触れずに「訂正」と報じる各メディアの責任は更に重い。ファクトチェックの判定としてはミスリードだが、この報道によって一連の「裏金問題」に派閥として区切りをつけたいという両派閥の意図を汲んだ形になっている点を考えると誤報に近い影響を社会に与えていることを各社とも自覚して欲しい。

(立岩陽一郎)

Return Top