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【FactCheck】パーティー収入は違法な企業献金ではないのか?

【FactCheck】パーティー収入は違法な企業献金ではないのか?

安倍派の政治資金パーティーの収入がキックバックされて政治家の裏金になっていた疑いがもたれている事件は、東京地検特捜部が政治家個人を対象とした強制捜査に乗り出したことで捜査の行方ばかりが注目される。InFactは事の発端となった政治資金パーティーにこだわりたい。

InFactは、このパーティー収入が実際には違法な企業献金の疑いが濃厚でそれ自体が問題だと指摘したが、岸田首相は1月4日の記者会見でパーティーそのものには問題無いとする認識を示した。そこで今回は、異なる観点から政治資金パーティーをファクトチェックする。

対象言説 「政治資金パーティーの収入は違法な企業献金ではない。」

結論 【ミスリード】

InFactはレーティングをエンマ大王で示している。
これは2エンマ大王となる。

エンマ大王のレーティングは以下の通り。

  • 4エンマ大王 「虚偽」
  • 3エンマ大王 「誤り」
  • 2エンマ大王 「ミスリード」「不正確」「根拠不明」
  • 1エンマ大王 「ほぼ正確」

InFactはファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)のメディアパートナーに加盟しています。この記事は、InFactのファクトチェック基本方針、およびFIJのレーティング基準に基づいて作成しました。

ファクトチェックの詳細

InFactは「政治資金パーティー収入を得ること自体は問題無い」という趣旨の政治ジャーナリストなどの発言をファクトチェックし、それがミスリードだとの結果を出した。これは、多くの企業が1枚2万円のパーティー券を購入し、実際にはパーティーに参加していない可能性が極めて高いことから、パーティー参加費として払っておらず企業による献金であたると判定したものだ。そして、安倍派「清和政策研究会」にしろ二階派「志帥会」にしろ、政治資金規正法で企業団体献金が認められていないことから、違法な企業献金を受けていたもので、パーティー収入を得ること自体が問題であると指摘した。

企業が参加しないことを前提にパーティー券を購入していることは、パーティーの参加者数や20万円を超える企業の購入状態からほぼ間違いないが、今回は、敢えて企業が購入分の人を参加させたと仮定しよう。それなら問題は無いのか?

「清和政策研究会」の政治資金収支報告書(以下、収支報告書)によると、2022年のパーティー収入は9480万円だ。

収支報告書にはパーティー開催の経費も記載されている。それを見てみよう。以下がその記載だ。

それによると、経費は会場使用料や案内状の印刷代など合計で2591万9320円。つまり、このパーティーの利益率は72.7%になる。1枚2万円だから1枚売れることで1万4000円超の利益が得られることになる。そもそも政治資金パーティーは政治資金集めのために行われるので、これは仕方がないと考えるかもしれない。個人が購入していれば、それは寄付として理解することも可能だ。しかし企業が購入している場合、ここに違法性が生じる。この団体は企業献金を受けてはいけないからだ。

政治資金規正法では、政治資金パーティーについて「対価を徴収して行われる催物」と規定している。つまり、パーティーの対価ということになるが、主催者側に利益が7割超も残る状況で「対価」と言えるのか疑問が生じる。

収支報告書には20万円を超えるパーティー券の購入企業と団体が記載されている。それによると企業17社、24団体から合計2218万円が支払われている。仮にこの企業、団体が購入分の人を出していたとしても、清和政策研究会には経費を差し引いた1612万円余が利益として入る計算だ。因みに、清和政策研究会は企業のみならず団体献金も受けてはいけない。

実は自民党の有力議員の政治資金パーティーでは7割どころではなく、利益率が8割から9割という政治家もいる。例えば2017年の菅義偉前首相が代表を務める横浜政経懇話会の政治資金パーティーを収支報告書の記載から計算すると、その年に開催された5回のパーティーの利益率はそれぞれ88.9%(4月10日)、90.2%(6月19日)、81.0%(9月21日)、85.3%(12月11日)、87.3%%(12月21日)となっている。何れも利益率は80%以上であり、普通の商売では「暴利」と評される利益率だと言って良いだろう。

つまり、仮に企業がパーティー券を購入した分の人を参加させていたとしても(そう考えるのは極めて困難だが)、企業が購入した形のパーティー収入は企業献金にあたる疑いが強いということになる。

因みに、自民党で幹事長も務めた石原伸晃氏が読売テレビの番組で、 「パーティーという名前を使っていますが、寄付行為です。パーティーして遊んでいるわけでは決してないんです。だから利益率が高ければ高いほど、寄付をした側から言うと有効に使ってもらえると考えられると思います」と語っている。石原氏はパーティーという名称の寄付だと指摘することで政治資金パーティーを正当化しているものだ。それは個人がパーティー券を購入して参加していれば問題無い。しかし、購入者が企業の場合、それが「パーティーという名前を使っていますが、寄付行為」である以上、政治資金規正法が禁じる企業献金にあたることは言うまでもない。

整理しよう。支持者個人がパーティー券を購入して参加した場合は、それがどれだけの利益を出そうと個人による寄付となるので問題は無い。しかし、説明した通り、企業がパーティー券を購入した場合は企業による寄付という色彩が極めて強くなる。よって、企業が参加する政治資金パーティーである以上、「パーティー収入は違法な企業献金ではない」とは言えず、その指摘はミスリードと判定せざるを得ない。



岸田首相は1月4日の首相会見で政治資金パーティーについて、「例えばパーティーの収支についても、党として監査を行うことですとか、あるいは現金から原則振込へ移行するべきであるとか、こうした具体的な取組は考えられるというふうに思います。」と述べ、引き続き政治資金パーティーを続ける方向で議論を進める考えを示している。

(立岩陽一郎)

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