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【Fact Check】政治資金収支報告書は全てオンラインで確認できる?

【Fact Check】政治資金収支報告書は全てオンラインで確認できる?

自民党・安倍派(清和政策研究会)などの政治資金パーティーをめぐる事件で、政治資金収支報告書の存在がクローズアップされている。この報告書について、オンラインで全て確認することができるとの指摘がテレビ番組で識者からなされることがあるが、これは誤りだ。

対象言説 「政治資金収支報告書は全てオンラインで確認できる」

結論 【誤り】

InFactはレーティングをエンマ大王で示している。
問題のツイートは「誤り」であり、これは3エンマ大王となる。

エンマ大王のレーティングは以下の通り。

  • 4エンマ大王 「虚偽」
  • 3エンマ大王 「誤り」
  • 2エンマ大王 「ミスリード」「不正確」「根拠不明」
  • 1エンマ大王 「ほぼ正確」

InFactはファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)のメディアパートナーに加盟しています。この記事は、InFactのファクトチェック基本方針、およびFIJのレーティング基準に基づいて作成しました。

ファクトチェックの詳細

東京地検特捜部が政治資金規正法違反の疑いで自民党の安倍派「清和政策研究会」、二階派「志帥会」に対して強制捜査に乗り出したことで、にわかに政治資金収支報告書(以下、収支報告書)の存在が注目を浴びている。この収支報告書について、テレビ番組で識者から「全てオンラインで確認できる」という趣旨の指摘がなされることが有る。それは本当なのか、ファクトチェックする。

総務省のHPで政治資金収支報告書を確認すると、次のようなページが出る。

この中の「定期公表」で、政治資金についてのまとめられた内容が公開されている。それを開けると、「政党本部」「政党支部」「政治資金団体」「国会議員関係政治団体」「その他の政治団体」などと書かれ、その下で各団体の名称から収支報告書の内容を確認することができる。対象言説は、こうした状況を指してのものと考えられる。

しかしその「定期公表」は「令和3年11月26日公表分」が最も古いことがわかる。これは政治資金規正法で公表の期間を3年と定めているからだ。公表だけではない。政治団体が会計帳簿、明細書、領収書及び振込明細書を保管する期間も公表から3年間としている。つまり、3年を過ぎた収支報告書を確認することはできない。

加えて、収支報告書の提出先は総務省だけではない。総務省に届け出がなされるのは、2つの都道府県以上の区域で活動する政治団体や政党支部で、所在地のある都道府県内でのみ活動する政治団体の収支報告書はそれぞれの都道府県の選挙管理委員会に届けられ、それぞれで別々に公表される仕組みとなっている。

近年、多くの都道府県でオンライン化が進んできているが、現在でも一部の県でオンライン化が実施されていない。新潟県は概要と要旨のみをオンラインで公表しているが、個別の政治団体の収支報告書はオンラインでは確認することはできない。確認する場合は、情報開示請求をするか県庁に行く必要がある。

オンライン化の流れはここ数年各都道府県で進められたもので、新潟県も今後、収支報告書の詳細についてもオンライン化を進める方針とされる。しかし、何れにしても、確認できるのは3年以内のものでしかない。 よって、「政治資金収支報告書は全てオンラインで確認できる」は誤りだ

(立岩陽一郎)

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