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【Fact Check】小麦価格の即時引き下げは可能なのか?立憲民主党の泉代表の発言を検証

【Fact Check】小麦価格の即時引き下げは可能なのか?立憲民主党の泉代表の発言を検証

立憲民主党の泉健太代表が、高騰する小麦価格の引き下げを行わない岸田政権を批判し、「立憲民主党が訴えるように、即時、引き下げを行うべきだと思います」と発言した。小麦の価格改定時期は毎年4月と10月と決まっているとされるが、泉代表の言う通り小麦価格の即時引き下げは可能なのだろうか、検証した。(友長光明、神山翔太郎、田島輔)

チェック対象

「小麦対策、改めてやっているかのように言ってるんですが、4月に17%上げたものをただ据え置いているだけであります。立憲民主党が訴えるように、即時引き下げを行うべきだと思います。」
(日本記者クラブ主催の党首討論会での泉代表の発言(参照、29:06~))

結論

【結論:正確】
小麦の価格は基本的に4月と10月に改定されることになっている。しかし、価格改定の法的根拠となる「主要食料の需給及び価格の安定に関する法律」42条は、価格の上限は定めているものの、改定時期を限定していない。よって、任意のタイミングで引き下げやそれに準ずる対策を取ることは可能だ。

小麦輸入の仕組み

泉代表の小麦価格引き下げに関しての発言は、6月21日に開催された日本記者クラブ主催の党首討論会でなされたものだ。これに対して、価格の安定から小麦の価格は4月と10月の年2回となっており、泉代表の発言には無理が有るとの指摘も有る。そこで、このファクトチェックでは、小麦価格の即時引き下げが他の時期でも可能なのか検証した。

まず、小麦輸入の仕組みを確認しておこう。小麦は9割を輸入に依存していることから、輸入の遅滞や質の低下によって問題が生じないよう、政府が一括して輸入し(参照)、輸入価格に管理費用などの一定額を上乗せして、製粉企業などに売却することになっている(参照)。

そして、国際相場の価格変動の影響を緩和するため、価格改定は年2回(4月と10月)、直近6ケ月間の平均買付価格をベースに算定されているとのことだ。

農林水産省のHPで確認したところ、泉代表の発言どおり、今年4月に輸入小麦の価格は対前期比で17.3%の値上げされていた(参照)。

6月18日に株式会社ドワンゴが主催した「参院選2022 ネット党首討論」では、泉代表から小麦の価格対策が実施されていないとの指摘を受け、公明党の山口那津男代表は「小麦などは4月の売渡価格を固定しましたから、据え置かれます。次は10月でありますから、状況変化を見ながら、ええ、思い切った対応を取りたいと思います。」と回答している(参照、5:36~)。

そのため、与党内の認識でも、小麦の価格改定は年2回(4月と10月)であることが明確なようだ。そうすると、やはり、泉代表が主張するような、小麦価格の即時引き下げは出来ないのだろうか。

価格の即時引き下げは可能か?

そこで、小麦価格の即時引き下げが可能か検証するため、輸入小麦の売り渡しについて定めた「主要食料の需給及び価格の安定に関する法律」を確認した。


すると、政府が小麦を「随意契約」で民間企業に売却すること(42条2項)や価格の上限は定められていた(42条3項)ものの、価格の決定時期に関する定めはなかった(参照)。

そこで、農林水産省貿易業務課に対し小麦の売渡価格の決定時期について問い合わせたところ、以下の回答を得た。

輸入小麦の政府売渡価格は、基本的な改定ルールとして、平成19年度以降、4月期及び10月期の年2回の改定を行っています。しかし、これ以外の時期に価格改定を行うことは制度上可能です。

やはり、4月と10月以外の時期に随時価格改定を行うことは可能であり、泉代表の発言通り、制度上は小麦の売渡価格を即時に引き下げることは可能とのことだった。

前述のとおり、山口代表の認識では小麦価格の改定は年2回(4月と10月)であるようだが、即時に価格を引き下げることが可能である以上、「価格を据え置いているだけ」という泉代表の指摘は間違いではない。

結論

検証の結果、泉代表が主張するとおり、小麦の政府売渡価格を即時に引き下げることは可能だ。このため、泉代表の発言には根拠が有り、全体の発言を「正確」と判定する。

(冒頭画像:日本記者クラブ主催の党首討論会(6月21日)で発言する泉代表)

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