インファクト

調査報道とファクトチェックで新しいジャーナリズムを創造します

【Fact Check】「夫婦別姓を認めないのも1票の格差も「合憲」とした裁判官は「深山卓也」「林道晴」「岡村和美」「長嶺安政」の4人だ。」というツイートは不正確

【Fact Check】「夫婦別姓を認めないのも1票の格差も「合憲」とした裁判官は「深山卓也」「林道晴」「岡村和美」「長嶺安政」の4人だ。」というツイートは不正確

衆議院選挙と同日に行われた最高裁判事の国民審査(第25回国民審査)に際して、影響力の有るツイートが4名の裁判官の名前を挙げて夫婦別姓を認めないことと1票の格差を合憲と判断したとして拡散したが、そのうちの1人は1票の格差を合憲した際には最高裁判事ではなかった。(小島遥花、友長光明、田島輔)

チェック対象 

「衆院選の投票と同時に行なわれる「最高裁の裁判官の国民審査」は、クビにしたいと思う裁判官の名前の上にバツを付けるという簡単な投票だ。ちなみに、夫婦別姓を認めないのも1票の格差も「合憲」とした「安倍晋三と同じ思想」の裁判官は「深山卓也」「林道晴」「岡村和美」「長嶺安政」の4人だ。」

https://twitter.com/kikko_no_blog/status/1453356390483824641
(Twitter、2021年10月27日投稿)

結論 不正確

2019年参院選の「1票の格差」についての裁判での判決時には、長嶺安政判事は最高裁判所判事には就任していなかった。

キッコのツイートは18万人超のフォロワーを持つ影響力の強い発信として知られており、このツイートは2021年11月17日現在4815いいね、2278リツイートを獲得している。

1票の格差が合憲とされた判例

2021年度の国民審査対象の最高裁判所裁判官が関係している、1票の格差が合憲とされた判例が過去に2例あった。1例目は、審査対象2名の深山卓也判事と三浦守判事が合憲と判断した2018年の判決で、2017年度の衆院選での1票の格差が合憲とされた事例だ。

(参照: https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/202/088202_hanrei.pdf, 最高裁判例 平成30(行ツ)109  選挙無効請求事件 平成30年12月19日 最高裁判所大法廷 判決 棄却  東京高等裁判所)

2例目は、審査対象6名の深山卓也判事、林道晴判事、岡村和美判事の3名が合憲、草野耕一判事は条件付き合憲、三浦守判事が違憲状態、宇賀克也判事が違憲と判断した2020年の判決で、2019年参院選での1票の格差が合憲とされた事例だ。

(参照: https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/842/089842_hanrei.pdf, 最高裁判例 令和2(行ツ)78      選挙無効請求事件 令和2年11月18日  最高裁判所大法廷 判決 棄却  東京高等裁判所)

1票の格差が合憲と判断した裁判官

ツイート内に記されている4名の判事が、1票の格差が合憲とした事例を見ていく。

2018年、2020年、両方の判決で合憲と判断した裁判官は深山卓也判事のみで、2020年の判決で合憲と判断した裁判官は深山卓也判事を含める、林道晴判事、岡和美判事の3人である。また、草野耕一判事が条件付き合憲と判断した。

(参照: https://www3.nhk.or.jp/news/special/kokuminshinsa/2021/, 最高裁判所裁判官 国民審査 NHK)

長嶺安政判事が、最高裁判所判事に就任した時期は2021年2月8日であり、1票の格差を争点とした裁判には関わっていない。

(参照: https://www.courts.go.jp/saikosai/about/saibankan/nagamine/index.html,最高裁判所の裁判官(長嶺安政))

夫婦別姓を認めないことを合憲と判断した裁判官

一方で、ツイート内の夫婦別姓を認めないことを合憲とした判事は深山卓也判事、林道晴判事、岡村和美判事、長嶺安政判事の4名だという主張は正確である。

第25回国民審査対象の裁判官が関わった夫婦別姓に関する判例は、2021年の夫婦が別姓を名乗ることを認めない民法と戸籍法の規定は合憲とされた事例である。

この判決で合憲と判断した7名の裁判官の中には深山卓也判事、林道晴判事、岡村和美判事、長嶺安政判事の4人が含まれており、そのうち深山卓也判事、岡村和美判事、長嶺安政の3名は補足意見を付した。

(参照:https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/412/090412_hanrei.pdf 最高裁判例 令和2(ク)第102号 p1-2、https://www3.nhk.or.jp/news/special/kokuminshinsa/2021/ , 最高裁判所裁判官 国民審査 NHK)

最高裁判所裁判官15人中残りの4名は決定後に就任している。

(参照:https://www.pref.osaka.lg.jp/attach/42044/00409380/kokuminsinsa.pdf 大阪府選挙管理委員会 第25回最高裁判所裁判官国民審査 審査対象裁判官公報)

この指摘をキッコのツイートを通じて伝えている。回答があり次第、掲載する。

結論

ツイートの「夫婦別姓」を認めないことを合憲とした裁判官は深山卓也判事、林道晴判事、岡村和美判事、長嶺安政判事の4名だという点は正確であった。一方で、1票の格差を合憲と判断したとして挙げられている4名の裁判官のうち深山卓也判事、林道晴判事、岡村和美判事の3名は正しいが、長嶺安政判事は、まだこの時点で最高裁判所判事に就任していない。よって、このツイートは不正確だと判断した。

〈参考文献一覧〉

https://www3.nhk.or.jp/news/special/kokuminshinsa/2021/, 最高裁判所裁判官 国民審査 NHK

(参照2021-11-17)

https://www.courts.go.jp/app/files/hanrei_jp/202/088202_hanrei.pdf, 最高裁判例 平成30(行ツ)109  選挙無効請求事件 平成30年12月19日 最高裁判所大法廷 判決 棄却  東京高等裁判所

(参照2021-11-17)

エンマ大王によるレーティングは2エンマ

エンマ大王のレーティングでは2エンマとなる。

InFactではファクトチェックをエンマ大王の数で示している。以下がその基準だ。

  • 4エンマ大王 「虚偽」
  • 3エンマ大王 「誤り」
  • 2エンマ大王 「ミスリード」「不正確」「根拠不明」
  • 1エンマ大王 「ほぼ正確」

InFactはファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)のメディアパートナーに加盟しています。この記事は、InFactのファクトチェック基本方針、およびFIJのレーティング基準に基づいて作成しました。

Return Top