
ノーベル賞を受賞した京都大学の本庶佑教授が、新型コロナは中国・武漢の研究所で人為的に造られたなどと語ったとされる誤った情報が世界で流れたのは2020年。既に本庶教授、京都大学が否定しているが、そのフェイクニュースが再び拡散している。(立岩陽一郎)
チェック対象
本庶佑教授が「新型コロナは中国の武漢の研究所で人為的に造られた」と語ったかのように報じた農業環境新聞(2022年1月15日)の記事とそれを拡散させるツイート
(Twitter、2022年2月3日投稿)
結論 誤り
既に2020年4月にInFactが京都大学を通じて本庶教授に確認。フェイクニュースであることが確認されている。
ツイートは2月3日時点で1.2万件の「いいね」、6000件以上のリツイートを得ており、拡散している。また、このツイートをリツイートしたものも拡散を続けている。
この言説は2020年4月にインドで流され、それが世界に拡散した。インドでファクトチェックを行うメディアからの一報を受けInFactで京都大学に確認し、大学を通じて本庶教授が否定した。本庶教授が武漢の研究所で勤務をした事実も無かった。京都大学の担当者は「フェイクニュースだ」と憤った。
その後、京都大学の公式webサイトに本庶教授の「新型コロナのパンデミックによって、この様な悲痛と経済的損失、そして、かつてない苦しみを世界が味わっている中で、私と大学の名前が、誤った非難と誤った情報の拡散に使われたことに、困惑しています」とのコメントが日本語と英語で掲載されている。
詳しくは当時のInFactの記事を確認して欲しい。
このツイートの発信者と、ツイートの元になった環境農業新聞に対して、InFactでなぜ事実の確認もせずに誤った情報を流したのか問い合わせを行った。その後2月15日に成瀬一夫編集主幹からメールを受け取ったので以下に加筆する。
「 ご指摘のとおりでございます。本庶教授の新型コロナのウイルスが中国の武漢の研究所で人為的に造られた等々はフェイクニュースでありました。誠に申し訳けないと思っております。掲載されたTwitterに訂正、お詫びを書いて投稿したのですがどうも掲載されません。やりかたが悪いのかと悩んでいたところです。京都大学のホーム頁で偽りである旨、書かれており、確認をせずに書いたこと深く反省しております。本庶教授に大変ご迷惑をおかけし、関係者にもお詫びを申し上げます。新聞で訂正・お詫びを申し上げることしております。
環境農業新聞社 編集主幹 成瀬一夫」
誤りは誰にでもある。大事なことはそれを認めて訂正することだ。
ファクトチェックは発信された事実を検証する取り組みで、発信者を非難するものではない。
3エンマ大王(誤り)
InFactはファクトチェックをエンマ大王の数でも表記している。今回の判定の「誤り」は3エンマ大王になる。

エンマ大王のレーティングは以下の通り。
- 4エンマ大王 「虚偽」
- 3エンマ大王 「誤り」
- 2エンマ大王 「ミスリード」「不正確」「根拠不明」
- 1エンマ大王 「ほぼ正確」
InFactはファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)のメディアパートナーに加盟しています。この記事は、InFactのファクトチェック基本方針、およびFIJのレーティング基準に基づいて作成しました。