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[新型コロナFactCheck] 「ノーベル賞受賞者の本庶教授が中国の人造ウイルス説に言及」との虚偽情報がインドで拡散

[新型コロナFactCheck] 「ノーベル賞受賞者の本庶教授が中国の人造ウイルス説に言及」との虚偽情報がインドで拡散

ノーベル賞医学・生理学賞を受賞した京都大学特別教授の本庶佑氏が、「新型コロナは中国の研究所で人為的に作られた」と語ったとの偽情報がインドで拡散していたことが判明した。京都大学も声明を発表した。(安藤未希)

チェック対象
日本の生理学・医学教授である本庶佑教授は、新型コロナウイルスは自然のものではないと言い、今日メディアの前でセンセーションを巻き起こした
・・・「私のこれまでのすべての知識と研究に基づいて、私はこの新型コロナのウイルスは100%自然なものではないと自信を持って言えます。これはコウモリ由来のものではありません。中国が製造したのです」・・・「私は中国武漢の研究所で4年間働いたことがあります」・・・

(Facebook、2020年4月24日投稿)
結論
【虚偽】本庶特別教授は新型コロナウイルスについて中国が造ったものだという発言をした事実はない。所属する京都大学、本庶教授の双方が否定した。本庶教授が中国・武漢の研究所に在籍した事実もない。

検証

インドのファクトチェック団体BOOMによると、本庶教授の発言はネット上で「かなり拡散している。英語だけでなくヒンドゥー語などインドの様々な言葉に訳されて広がっている」とのことだ。その一つは、Facebook上、本庶教授のウィキペディアのリンクとともに投稿された文章だ。

Facebookで拡散した情報

出回っている問題の情報は「日本の生理学・医学教授である本庶佑教授は、新型コロナウイルスは自然のものではないと言い、今日メディアの前でセンセーションを巻き起こした」との書き出しで始まっている。そして、「これ(新型コロナのウイルス)は自然のものではありません。それは製造されたもので、ウイルスは完全に人工的なものです」と書かれている。

更に自身が武漢研究所で4年間働いていたと記した上で、「私はその研究室のスタッフ全員のことを十分に知っています。このコロナの事故の後、私は彼ら全員に電話をかけました。しかし、彼ら全員の電話はこの3カ月の間につながらなくなりました。それはすべての研究所の研究員が亡くなったということです」とまで書いている。

そして、「私のこれまでのすべての知識と研究に基づいて、私はこの新型コロナのウイルスは100%自然なものではないと自信を持って言えます。これはコウモリ由来のものではありません。中国が製造したのです」と強調している。

更に、「もし私が今日言っていることが今、もしくは私の死後に誤りであることが判明したら、(日本)政府は私のノーベル賞を取り下げることができます。しかし中国は嘘をついており、この真実はいつか皆さんに明らかにされるでしょう」と結ばれている。

しかし、本庶教授の経歴情報を確認したところ、武漢研究所で4年間働いていた事実はない。

本庶教授は自身のホームページで「新型コロナウイルス緊急提言」としてPCR検査を増やすべきだといった考えに言及しているが、どこにも、新型コロナのウイルスが中国の研究所で人為的につくられたといった記述はない。

インドのBOOMから情報提供を受け、FIJが、本庶教授が副院長を務める京都大学高等研究所に問い合わせたところ、「それはフェイクニュース。事実ではありません。今、京都大学でホームページ上で正式に否定する準備をしている」と話し、情報を全面的に否定した。本庶教授が過去に武漢の研究所に在籍していた事実はないと明確に否定した。

京都大学はその後、本庶教授の「新型コロナのパンデミックによって、この様な悲痛と経済的損失、そして、かつてない苦しみを世界が味わっている中で、私と大学の名前が、誤った非難と誤った情報の拡散に使われたことに、困惑しています」とのコメントを英文で掲載し、あらためて無責任な情報の拡散を非難した。

Statement from Tasuku Honjo on COVID-19

In the wake of the pain, economic loss, and unprecedented global suffering caused by the COVID-19 pandemic, I am greatly saddened that my name and that of Kyoto University have been used to spread false accusations and misinformation.
This is a time for all of us, especially those of us devoting our careers to the forefronts of scientific research, to work together to fight this common enemy. We cannot delay one moment in this effort to save the lives of our fellow humans. At this stage, when all of our energies are needed to treat the ill, prevent the further spread of sorrow, and plan for a new beginning, the broadcasting of unsubstantiated claims regarding the origins of the disease is dangerously distracting.
This University devotes itself to furthering the wellbeing of humanity based on a principal of harmonious coexistence with the natural environment. It is my enduring pleasure and honor to support this aim to my fullest. Let us keep our eyes on the highest goals attainable by our species.

(訳)COVID-19に関する本庶佑教授のコメント

 新型コロナのパンデミックによって、この様な悲痛と経済的損失、そして、かつてない苦しみを世界が味わっている中で、私と大学の名前が、誤った非難と誤った情報の拡散に使われたことに、困惑しています。
 今は、特に科学研究の最前線に自分のキャリアを捧げる私たち全員が、この共通の敵と戦うために協力するときです。私たちは、仲間の命を救うための努力を、一瞬たりとも遅らせることはできません。病気の治療、悲しみのさらなる拡大の防止、新しいことを開始するための計画を立てるために私たちのすべてのエネルギーが必要とされるこの段階で、病気の原因に関する根拠のない主張の拡散は危険な混乱を招きます。
 この(京都)大学は、自然環境との調和のとれた共生の原則に基づいて、人類の幸福を促進することに専念しています。この目標を十分にサポートすることは、私の永続的な喜びであり名誉なことです。私たちが達成可能な一番高い目標に目を向け続けましょう。」
京都大学英語版サイト (2020年4年27日掲載)

FIJの調査を受け、インドのファクトチェック団体BOOMも、その情報が虚偽であり、本庶教授はそのような発言をしていないとのファクトチェック記事を配信した。

結論

インドでこの情報が拡散する背景は不明だが、いずれにせよ、本庶教授の研究者としての見識を傷つける極めて悪質な虚偽の情報と判定した。

※この記事は、INFACTがメディアパートナーとして加盟しているFIJのプロジェクトの一環で作成しました。

(冒頭写真は、インドで拡散したとみられる本庶教授に関する偽情報(一部加工済)=BOOMサイトより)

INFACTはファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)のメディアパートナーに加盟しています。この記事は、INFACTのファクトチェック基本方針、およびFIJのレーティング基準に基づいて作成しました。FIJ編集委員会でガイドラインを満たすと判断されると、こちらのページにも掲載されます
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