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「除草剤のせいで鹿が腫瘍だらけ」は誤情報 米ファクトチェック団体が検証

「除草剤のせいで鹿が腫瘍だらけ」は誤情報 米ファクトチェック団体が検証

アメリカのモンサント社が開発し、広く流通している除草剤が散布された草木を食べたことで、鹿が体全体、腫れ物だらけになったとする言説とその証拠とされる写真がツイッターなどで出回っているが、これは誤りだ。(立岩陽一郎)

チェック対象
モンサント社のラウンドアップが散布された草木を食べて腫瘍だらけになった鹿。
この農薬は普通にホームセンターとかに売ってます。

(Twitter、2020年7月19日投稿)
結論
【誤り】 この腫れ物は、米国各地で生息するオジロジカの群れで見られる「繊維腫」で、様々な虫に刺されることによるウイルス感染などが原因だと、ミシシッピ州当局の報告書や、野生生物学者が指摘している。

7月19日ごろツイッターに、全身に腫れ物ができている鹿の写真とともに、「モンサント社のラウンドアップが散布された草木を食べて腫瘍だらけになった鹿。 この農薬は普通にホームセンターとかに売ってます」と書かれた投稿があり、7月末日現在でリツイート1300以上、 いいね1500と拡散している。ラウンドアップとは除草剤のことだ。

フェイスブックでも、2017年10月、日本人医師とみられる人物がこの写真とともに「モンサントのラウンドアップが散布された草木を食べて腫瘍だらけになった鹿 結構居るらしい」とのコメントを投稿し、シェア数が13万を超えた(現在、フェイスブックにより「虚偽の情報」との警告表示が出ている)。

2017年10月にフェイスブックで拡散した鹿の写真。現在は警告フラグが表示され、ファクトチェック記事が掲載されている。

結論を言うと、これは誤情報だ。既にアメリカのファクトチェック団体ポリティファクト(PolitiFact)検証し誤り(False)と判定している。以下、ポリティファクトの許可を得て、記事全文を掲載する。

ポリティファクトの検証記事

拡散した写真の腫れ物に覆われた鹿はモンサント社の除草剤によって引き起こされたものではない原文、2019年5月8日掲載

大きな腫れ物に覆われたオジロジカの不穏な写真が、ソーシャルメディア上で再び話題になっている。写真の上のテキストには、「鹿はモンサント社のラウンドアップ(除草剤)を散布された植物を食べて腫瘍まみれになった。よくあることのようだ」と書かれている。その投稿には、虚偽のニュースや誤報に対抗するためのフェイスブックの取り組みの一環としてフラグが立てられている。

それらの毛のない突起は、「皮膚線維腫」(Cutaneous fibromas)と呼ばれ、一般的に「鹿イボ」(deer warts)と呼ばれるもので、アメリカの州の大部分の鹿の群れで発見されている。ミシシッピー州で野生生物などを管轄する部門の報告書によると、このイボは各地で生息するオジロジカの群れで見られるという。

しかし、このようなイボは「モンサント社の除草剤」や他の除草剤が原因ではない。このイボは、様々な虫に刺されることで感染すると考えられるウイルス感染によって発生する。また、傷ついた皮膚に直接触れることでもウイルスが感染することがある。ウイルスが皮膚に入ると、イボは約7週間以内に形成され始めることがわかっている。

この病気はまた、一時的なものであり、研究者が言うには、ほとんどの鹿でわずか約2ヶ月ほどで退行し始める。

ニューヨーク州環境保全局の野生生物学者ケビン・ハインズ(Kevin Hynes)氏は、ポリティファクトの電子メールでの取材に対して、写真の突起物は、実際には、繊維腫であると語った。

「繊維腫はニューヨークの鹿ではかなり一般的であり、虫に刺されることによって、または直接接触によって広がったウイルスによって引き起こされ、ウイルスは人間やペットに感染しません」とハインズは返答した。

「線維腫は通常、若い鹿に見られ、通常は痕も残らず治まって消えてしまう。繊維腫は、それが目を覆ったり、(この写真のように)非常に大きく、多数の場合、二次的に細菌に感染する場合にのみ、鹿に問題を生じさせる」

彼らの外観はグロテスクかもしれないが、USDA国立野生生物研究センター(the USDA National Wildlife Research Center)による2011年の報告書によると、繊維腫は通常、鹿にとって有害ではない。しかし、報告書によると、腫れ物の負荷が大きい鹿は、「腫れ物が視覚、呼吸、食物摂取、運動を阻害するため、疲労と無力化に苦しむ可能性がある」という。研究者によると、稀に線維腫は細菌感染を引き起こす可能性があるという。

この写真の最初の投稿を検索したが、決定的なものは見つからなかった。しかし、ファクトチェックサイトの「TruthOrFiction」は、2017年10月、狩猟者のためのフェイスブックページがこうした腫れ物について伝えているとしている。

いつが最初の投稿かに関わらず、この写真は一般的に鹿イボとして知られている状態と一致する腫れ物を持つ鹿を示している。このような傷が除草剤によって引き起こされるという主張は真実ではない。よってポリティファクトは、この情報を「誤り」と評価した。

この記事に書かれているように、TruthOrFictionという団体も2018年10月にファクトチェックを行い、事実でない(Not True)と判定している。AFP通信も2019年5月この写真の鹿はモンサント社の除草剤が散布された植物を食べたことで腫れ物に覆われたのではないというファクトチェック記事を発表した。

拡散した鹿の写真は2017年10月12日に「Your Wild Ohio – Hunter」というフェイスブックページにアップされたものと同一だが、この写真の説明文には「モンサント社の除草剤」への言及は一切なかった。日本のフェイスブックでこの写真が「モンサント社の除草剤」への言及とともに拡散したのは、その翌日のことだった。

結論

ポリティファクトなどの検証記事やそこに引用されたミシシッピ州当局の報告書などから、この写真がモンサント社の除草剤が散布された草木を食べた鹿だとする情報は「誤り」と判定した。

(この記事にはFIJの串田百花リサーチャーが協力している。)

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