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【政治と金の研究②】菅総理の不可解なパーティー 

【政治と金の研究②】菅総理の不可解なパーティー 

政権発足から1か月が経った菅義偉総理。その政治資金の流れを見ると、不可解なパーティーの存在が浮かび上がる。それは高級ホテルで格安で開かれるパーティーだ。普通の人が開催するのは「不可能」なパーティーだという。大臣規範には「国民の誤解を招きかねないような」パーティーの自粛が決められているが。(立岩陽一郎)

前回から「横浜政経懇話会」という菅総理の資金管理団体についてその内容を見ている。注目したのは開催するパーティーでの利益率だった。一度のパーティーで約8割から9割の収益を得ていた。1000万円近い収入を出すパーティーがなぜ100万円に満たない金額で開けるのか?しかも、実施場所は高級ホテルだ。

実はその詳しい状況が書かれた報告書もある。既に公表対象となってはいないが、公益財団法人「政治資金センター」のデータベースにデータが残っている。それによると、この「横浜政経懇話会」は2011年と2012年に700人規模のパーティーをそれぞれ1度開いている。

それをまとめたのが以下だ。

2011年と2012年の政治資金パーティー(報告書から作成)

2011年の横浜政経懇話会の報告書よると、11月10日にザ・キャピトルホテル東急で開かれていて、参加者705人で1506万円の収入を得ている。このパーティーの費用は162万円余り。

2012年の横浜政経懇話会の報告書によると、10月10日にANAインターコンチネンタルホテルで開催し769人が出席し、1780万円を得ている。経費は171万4753円となっている。

ここで注目したいのは経費だ。ホテルにいくら払っているかだ。報告書によると、2011年は142万929円となっている。2012年は146万2013円。

2011年、2012年ともに、パーティーの1人当たりの経費は2000円ほどとなる。会場となったホテルに問い合わせたところ、どちらも、「お客様の個人情報にあたるので、そうしたパーティーが開かれたかどうかもホテルとしてはお答えできません」との回答だった。

そこで都内の複数のホテルに立食パーティーを行う際にいくらかかるかを尋ねてみた。するとホテル側は、「部屋の装飾や食事にも寄る」としながらも、「1人あたり1万円を切ることは無理です」という答えが返ってきた。「1人あたり2000円で可能ですか?」と問うと、「それは不可能です」と言われた。

実は、そう回答したホテルには、この団体がパーティーを開いているホテルも含まれている。

なぜそのようなことが起きているのか?次の2つの可能性を指摘することができる。1つはホテル側が収支を度外視して特別待遇をした。もう1つは収支報告書に事実と異なる記載をした。

この点について横浜政経懇話会に9月25日に問い合わせたところ、「ファクスで質問を送って欲しい」と言われたのでファクスを送り、受領について電話で確認した。しかし10月22日現在、インファクトに対して返答は無い。

しかしインファクトの情報を日刊ゲンダイが更に取材をした結果、事務所が取材に応じ、参加者として記載した人数は「対価の支払いをした者の数であり、参加者人数ではない」と答えたという。政治資金センター代表の阪口徳雄弁護士は「パーティー収入の利益率が高いのは出席をしないのに多数のパーティー券を購入している企業等があるからだと、私たちは見ている。その上でだが、資金管理団体等の政治団体のパーティーに参加しないことについて、お互いが了解している企業、団体の購入は、政治資金規正法で禁止されている寄付に該当する疑いがある」と語っている。阪口代表の指摘が正鵠を射ている可能性も有る。

このパーティーを知るメディア関係者から「食事は出ておらず『立食』ではなかった」との情報も寄せられた。それも含めて、団体には取材に応じて頂きたい。

2013年以降、この団体のパーティーの参加者数は報告書に記載されなくなる。これについて総務省に尋ねると、「1000万円以上の収入が有る場合は別表で人数を記載しなければいけなくなるるが、1000万円未満であれば別表は必要有りません」と説明した。つまり1000万円未満の収入に抑えれば参加者数を明示する必要は無くなるということだ。

なぜ2013年以降は1000万円未満になったのか?前述のメディア関係者によると、これは大臣規範に従ったものだという。2001年に閣議決定された「国務大臣、副大臣及び大臣政務官規範」が、「政治資金の調達を目的とするパーティーで、国民の疑惑を招きかねないような大規模なものの開催は自粛する」としていることを指している。

しかし前回明らかにしたように、一度の収入は1000万円未満で揃えているが、複数回開催することで年に数千万円の収入を得ているのがこの団体の実態だ。

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