インファクト

調査報道とファクトチェックで新しいジャーナリズムを創造します

《週刊》ネット上の情報検証まとめ(Vol.27/2020.4.8)

《週刊》ネット上の情報検証まとめ(Vol.27/2020.4.8)

インターネット上で話題になった“要注意”情報を、週1回まとめてお届けします。紹介するのは、他のメディアなど第三者が調査・検証したものも含みます。(大船怜ネット上の情報検証まとめ管理人)


新型コロナウイルス関連特集

新型コロナウイルス(新型肺炎)に関連する“要注意”情報のうち、主要なものを簡潔に紹介します。(順不同)

1.「感染者3割が外国人」

→未確認数でほとんどは日本人

厚労省サイト上の資料で、PCR検査陽性者数などに「日本国籍の者○○名(これ以外に国籍確認中の者がいる)」という表記があったため、この「国籍確認中」を全て外国籍とする誤解が生じていた。

実際にはこれは自治体発表のデータで特に国籍が記載されていないものを表すのであって、BuzzFeedの取材に対し厚労省担当者は「確認中の方のほとんどが日本人であると推測されます」と回答している。

4月2日の資料以降、厚労省は「うち日本国籍の者1286人、外国籍の者29人(他は国籍確認中)」のように国籍の情報をより詳しく表示するようになった。


2.「国民へ配布のマスクは山口県の企業が受注」

→県からの発注

山口県内の企業が製造を受注したと報じられた布製マスクは、県内の子供向けに山口県が発注したものであり、政府が決定した全世帯へ2枚ずつの布製マスク配布とは関係ない。


3.「緊急事態宣言 最短3週間は外出禁止」

→あくまで自粛要請

現行法による緊急事態宣言で行えるのは、海外のような罰則付きの外出禁止措置・都市封鎖の類ではなく、あくまで罰則なしの外出自粛要請である。


4.「○○で感染者」

→多数の誤情報が名指しで拡散

各地で感染が広まるにつれ、具体的に店名などを名指しして「店員が感染」「感染者が訪れた」などの誤った噂が広がるケースが相次いでいる。


5.「1982年の本が予言」

→現実と異なる描写も 「2020年」は別の本

「1982年出版」の本の中で、2020年に世界で肺炎が流行すること、その発端は武漢であることが予言されているという噂が拡散された。

この本は正しくは1981年出版だが、「武漢」とある部分は当初「ゴーリキー」(現ニジニ・ノヴゴロド)と書かれていて、元はウイルスはソ連の生物兵器だという設定だった。1989年の再版時に冷戦終結を受け設定が中国に変更されたようである。作中のウイルスは致死率100%・潜伏期間4時間など、現実の新型コロナウイルスの特徴と異なる部分が多い。

「2020年に肺炎流行」は別の作者による2008年の本の記述。出版の数年前にはSARS(重症急性呼吸器症候群)が世界で流行しており、この本はこうした実在の感染症に着想を得た可能性がある。

つまり、拡散された噂は、それぞれ別の本が部分的に現実と合致したのを組み合わせ、あたかも1つの本で様々な予言が的中したかのように見せかけているに過ぎない。


6.「フロリダの中国人マスク買い占めの強制捜査(動画)」

→別の騒動と混同か

動画はフロリダ州ではなくニューヨーク州のブルックリン。報道されている捜査を受けた人物は氏名がヨーロッパ系のため、恐らく中国人ではない。

フロリダ州では先日、中国人女性がマスクを大量購入する様子を自ら撮影・動画投稿し、多くの批判を受ける騒動があった。上述の誤情報はこの件との混同により生まれた可能性がある。


7.「墨東病院が機能停止」

→数時間後に受け入れ再開

都立墨東病院(東京都墨田区)が一時ERと救急の受け入れを制限していたのは事実だが、数時間後には再開。過去の状況であることが伝わらないまま拡散された情報が「機能停止」「医療崩壊」といった誤解を生んだ。


8.「加藤茶のTwitterアカウント」

→なりすまし

新型コロナウイルスが原因で亡くなった志村けんさんを追悼するようなツイートを投稿し、2万人以上のフォロワーがいたアカウントだが、加藤さん本人のものではないと所属事務所も否定している。


9.「与謝野晶子はスペイン風邪で子供をなくした」

→感染のみで亡くなっていない

「 スペイン風邪で子供をなくした与謝野晶子。まるで今を見ているような文章を残している。」といった投稿が拡散。与謝野晶子は子供の1人がスペイン風邪に感染したことを書き残しているが、亡くなってはいない。


その他

FIJ(ファクトチェック・イニシアティブ)では新型コロナウイルスに関する情報の検証結果などをまとめた特設サイトを開設。国内外の真偽に疑義のある情報を紹介し、随時更新している。

また過去のまとめでは、新型肺炎関連の様々な誤情報についても検証を紹介している。

 

(過去の回をまとめて見たい方はこちらから。次回は、2020年4月15日の予定です)

Return Top