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【コロナの時代】[Factcheck] 立憲・小西洋之議員「ワクチンが余った時の対応の指針を今ごろ」は不正確 指針は以前から存在

【コロナの時代】[Factcheck] 立憲・小西洋之議員「ワクチンが余った時の対応の指針を今ごろ」は不正確 指針は以前から存在

急な予約キャンセルなどで余ったワクチンの扱いについて議論が進む中、ワクチン担当の河野太郎大臣が公表した通達文書に対して、立憲民主党の小西洋之議員が「ワクチンが余った時の対応の指針を今ごろ出すことがおかしい」とツイートで批判した。しかし、このツイートは不正確だ。(大船怜)(※6月18日更新あり)

チェック対象
(※引用注:河野太郎ワクチン担当相のツイートに対し)ワクチンが余った時の対応の指針を今ごろ出すことがおかしい。 このようなものは何ヶ月も前に出しておくべきものだ。 何をやっているのか。 そんなことも分からないのだろうか。
(小西洋之氏Twitter、2021年5月25日投稿
結論
【不正確】 余剰ワクチンに関する指針は、一部内容が異なる部分もあるが、3月の時点で存在している。

河野ワクチン担当大臣は5月25日、「新型コロナワクチンの余剰が発生した場合の取り扱いについて」と題する厚労省から各自治体への文書(同日付け)を画像で投稿。予約キャンセル等による余剰ワクチンについて「廃棄することなく、効率的に接種を行うこと」とし、その対象者は接種券を持たない人も含め「柔軟な対応を検討し、判断すること」とする指針を示した。同文書は厚労省HP上でも公開されている

ツイートはこれに対して小西参議院議員が行ったもので、「今ごろ出すことがおかしい」「このようなものは何ヶ月も前に出しておくべきものだ」などと批判する内容となっている。

余剰ワクチンの指針は3月から

そこでInFactで調べてみると、ワクチンに余剰が発生した場合の対応の指針は、この時初めて示されたものではなかった。

「新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する手引き」と題するワクチン接種についての自治体向けの指針(以下、「手引き」とする)は、その内容を改定しながら2020年12月から複数回にわたって示されている。余剰ワクチンに関する記載が始まったのは2021年3月12日の第2.1版からで、これは小西議員が批判した投稿の2か月半ほど前のことだ。

(16)ワクチンの余剰が発生した場合
 新型コロナワクチンの接種予約がキャンセルされた等の理由で余剰となったワクチンについては、可能な限り無駄なく接種を行っていただく必要があることから、別の者に対して接種することができるような方法について、各自治体において検討を行う。
 例えば、市町村のコールセンターや医療機関で予約を受ける際に、予約日以外で来訪可能な日にちをあらかじめ聴取しておき、キャンセルが出たタイミングで、電話等で来訪を呼びかける等の対応が考えられる。なお、キャンセルの生じた枠で接種を受けられるのは、接種券の送付を受けた対象者とする。それでもなお、ワクチンの余剰が生じる場合には、自治体において検討いただきたい。

新型コロナウイルス感染症に係る予防接種の実施に関する手引き(2.1版)」より

また、4月13日の河野大臣の記者会見では以下のような発言があり、上記「手引き」の内容が具体的に説明されている。

それから、昨日、高齢者の接種の中で、余ったワクチンが若干ではありますが廃棄されることがあったようでございます。余ったワクチンが廃棄されないようにということはお願いしてまいりまして、できれば接種券を持っている高齢者がいれば打っていただき、接種券がなくても年齢的に対象になる方がいれば打っていただき、高齢者がいらっしゃらなければそれ以外の方という、できればそういう順番で対応していただきたいと思っております。他市・他県の方でも一向に構いません。全く制約はございませんので、ワクチンが破棄されないように現場対応でしっかりと打っていただきたいとお願いをしたいと思います。また、接種券がなくて打った場合には、しっかりと記録をしておいていただきたいと思います。

河野内閣府特命担当大臣記者会見要旨 令和3年4月13日」より

「全く制約はございませんので、ワクチンが破棄されないように現場対応でしっかりと打っていただきたいとお願いをしたいと思います」と述べている。河野大臣が示した5月25日付の文書は、この発言の内容を盛り込んだ形だ。

「手引き」では、余剰ワクチンも接種券を持つ人が優先とする前述の説明が変更され、5月31日付の第3版から「接種券を保有していない者についても対象とする」「市町村において余剰となったワクチンを接種する対象者(職種等)を決定し、あらかじめ住民に対して明らかにする」などの記述が追加されている。

小西氏の反論

小西議員のツイートに対しては、余剰時の対応は既に公表されており今回の通知はこれを「更に具体化するもの」だとの指摘が行われている。これに対して小西議員は、接種券についての条件の変化を挙げ、「具体化などではなく『撤回、上書き』いうべきものだ」(原文ママ)と反論している

確かに、余剰ワクチンの接種を受けるのに接種券を持っている人が優先されるかどうかの指針が、3月と5月で変化しているのは事実だ。しかしながら、小西議員が最初に述べた「ワクチンが余った時の対応の指針」自体は、内容の詳細に違いがあるものの既に出ており、「今頃出すことがおかしい」という指摘は適切ではない。

なお、InFactでは小西氏事務所へ書面で見解を求めたが、6月12日の期限内に回答は無かった。

結論

余剰ワクチンに関する指針は小西氏のツイートの約2か月半前には存在していた。接種券に関する記述など、内容はツイート時点と一部異なる所もあったが、「ワクチンが余った時の対応の指針」自体が「今ごろ」出てきたわけではない。ツイートは少なくとも部分的な誤りが含まれており、「不正確」と判定する。

(冒頭画像:愛知県内のワクチン接種会場。InFact撮影)

※6月18日追記:本稿公開当初、4月の河野大臣発言について「上記『手引き』で『接種券の送付を受けた対象者』とされていた余剰ワクチン接種の対象がさらに広げられている。」とする記述がありましたが、これは誤りでした。3月の「手引き」2.1版では、余剰ワクチン接種は原則接種券を持つ人が優先されているものの、「それでもなお、ワクチンの余剰が生じる場合には、自治体において検討いただきたい。」とあるように、券を持たない人への接種も既に認められていると解釈できます。河野大臣の発言は、この点を更に具体的に説明したものとなっています。関連する記述と共に修正し、ここにお詫びいたします。

InFactはファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)のメディアパートナーに加盟しています。この記事は、InFactのファクトチェック基本方針、およびFIJのレーティング基準に基づいて作成しました。

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