8月の女性の自殺者数が男性の3倍に上ったと指摘した情報がツイッターで拡散したが、正確ではない。実際は男性の自殺者数が女性を大きく上回っている。(楊井人文)
(2020年8月の自殺者について)総数は246人だけど、男性60人、女性186人。女性に何があったのか、男性の3倍の人が命を断っている
(2020年9月11日、Twitter投稿)
【不正確】 2020年8月の自殺者(速報値)は、男性1199人(前年同月比60人増)、女性は651人(同186人増)だった。女性の自殺者が増えたのは事実だが、自殺者総数としては男性が上回っている。
落語家の立川談四楼氏が8月の自殺者数について言及したこのツイッター投稿は、7000回以上リツイートされ拡散した。8月は女性の自殺者数が男性の3倍になったかのような内容になっている。
しかし、警察庁のウェブサイトに掲載されている「令和2年の月別自殺者数について(8月末の暫定値)」によると、8月中に発見された自殺者のうち、男性は1203人、女性は651人。総数としては、男性が上回っている。
暫定値より前に発表された8月の速報値でも、男性1199人、女性650人であった。これを昨年8月の自殺者数(男性1139人、女性464人)と比較すると、男性は60人増、女性は186人増となっている。この増加数は、立川談四楼氏が言及したものと一致しており、このデータを誤って「総数」と捉えた可能性がある。
今年の男性自殺者は大幅減、女性はやや増加
新型コロナウイルスの感染が拡大した今年上半期の自殺者総数は前年を下回っている。2020年1月~8月の自殺者数を2019年の同時期と比較すると、以下のようになる。この8ヶ月間の合計で見た場合、男性は719人減に対し、女性は30人増となっており、原因は定かでないが、留意は必要だ。
景気動向と自殺者数は相関関係があるとの指摘がある。新型コロナウイルス感染症の影響で失業者数も増加している。悩みがある場合の相談窓口は自殺総合対策センターに記載されている。
結論
8月の自殺者数(速報値ベース)は前年同月比の増加数で見た場合、女性は男性の約3倍であったが、総数で見た場合は男性が女性を大きく上回っている。よって、対象言説は「不正確」と判定した。
(この記事は、InFactインターンの吉岡稔理氏、戸村臨氏の協力も得て作成しました。)