日本政府は台湾にアストラゼネカ社製のワクチン124万回分を送った。なぜ日本で使用を躊躇している形のアストラゼネカのワクチンを送るのか？といった疑問の声が出る中で、「台湾で認可・承認されているワクチンはアストラゼネカ製のみ」との情報が拡散した。しかしこれは誤りだ。台湾でもモデルナ社製のワクチンが認可されており、発信者は既に訂正している。（池雅蓉/立岩陽一郎）
【誤り】 台湾ではモデルナ社製のワクチンも認可を受けている。発信者も訂正済。
最近になって新型コロナの感染者が急増している台湾への支援として、日本政府は6月４日にアストラゼネカ社製のワクチン124万回分を送った。これは日本が同社から購入したワクチンの一部だ。
このアストラゼネカ社製のワクチンをめぐっては、日本で承認されているものの、ヨーロッパで血栓による死亡例が伝えられるなどして副反応に懸念が有ることから現在も使用スケジュールが決まっていない。そうした状況にあるワクチンを台湾に出すことが国会で問題視されるなどした。
対象とした情報は、そうした中で、政府の対応を擁護する形で自民党所属の県議会議員が発信したものだ。
台湾のファクトチェック団体が確認
これについてInFactは、台湾でファクトチェックに取り組むTFC＝台湾ファクトチェックセンターに調査を依頼したところ、6月7日にTFC編集長の陳慧敏さんから回答が来た。
「現時点で食薬署（台湾政府の認証機関）の許可を得ているワクチンはアストラゼネカとモデルナのワクチンです。台湾の状況は厳しいので、ファイザーやジョンソ・エンド・ンジョンソンのワクチンが特別案件として審査されれば、時間はかからないと予想できます」。
つまり、アストラゼネカ社と並んでモデルナ社のワクチンは承認を得ているということだ。下の画像を見て欲しい。
これは台湾政府の発表を撮影した画像だ。実は台湾内でも、政府を批判する形で、台湾で「アストラゼネカとモデルナも許可されていない」との報道が出ていたという。画像は、それに対する台湾政府の公式発表で、次の様に書いてある。
「 アストラゼネカとモデルナは技術に関する資料を提供し、食薬署／中央指揮センターの審査と専門家会議の議論を通じた。CDCの許可を得て、特別案件として輸入した」。
食薬署とはアメリカのFDAにあたるワクチンを承認する台湾の政府機関だ。画像はTFCの回答の正しさを裏付けている。
発信者は既に訂正済
つまり、「台湾で認可・承認されてるのはアストラゼネカ製のみです」は誤りだ。発信した議員にその点を確認すると、「既に訂正しています」との回答が有った。確認すると、発信した日のうちに、「台湾ではアストラゼネカ以外にも、モデルナが承認されていましたので、訂正します」とリツイートしていることがわかった。
この記事は事実関係の確認を目的としたファクトチェック記事であり、訂正が有った事実を踏まえて調査結果を公表する。記事は発信者を批判するものではなく、あくまで確認された事実の公表に努めるものだ。誤った情報だと分かった段階で、速やかに訂正する姿勢は評価されるべきとも考える。一方で、最初の誤ったツイートの拡散が多いことから、公表すべきと判断した。
また、この記事は、台湾にアストラゼネカ社製のワクチンを供給した日本政府の取り組みを批判するものでもない。台湾政府はワクチンが台湾に到着した6月4日に、「日本も新型コロナで深刻な状況にもかかわらず、台湾に迅速な支援を決め、心から感謝する。貴重な友人だ」との声明を発表している。
結論 誤り 台湾ではアストラゼネカ社製に加えてモデルナ社製も認可されている。発信者も既に訂正済。
（冒頭写真：台湾政府の発表の画像）
