インファクト

調査報道とファクトチェックで新しいジャーナリズムを創造します

【コロナの時代】その時、中国当局は何を発表していたのか①最初の発表は2019年の大晦日だった

【コロナの時代】その時、中国当局は何を発表していたのか①最初の発表は2019年の大晦日だった

新型コロナが中国の武漢で最初に発生したことは既に広く知られている。アメリカのトランプ大統領はそれを印象付けるために「武漢ウイルス」などと呼ぶこともある。またこの大統領の発言などから、当初、中国が問題を隠蔽していたという印象も強い。実際にはどうだったのか?何が発せられ、何が発せられなかったのか。インファクトは公表された中国の記録から、その内容に迫る。先ずは2020年1月の第一週までの動きについて伝える。(池雅蓉/立岩陽一郎  写真:武漢市衛生健康委員会のサイトから)

それは2019年の大晦日の日だった。12月31日に、 武漢市衛生健康委員会 が最初の発表を行っている。

華南海鮮城(海鮮卸売市場) と関連している『原因不明ウイルス性肺炎』の病例が多くの医療機関で報告されている。現在、27件の症例が確認されており、そのうち7件は重症で、残りは安定してコントロール可能な症例、2件は近いうちに退院できるように改善している。人から人に伝染する現象は確認されていない」。

更に、その「原因不明ウイルス性肺炎」の症状についても発表されている。

症例の臨床症状は発熱が中心で、呼吸困難が数例あり、胸部X線検査では両肺に浸潤病巣が認められた。現在、すべての症例を隔離して治療にあたっており、濃厚接触の追跡と医学的観察が行われており、華南海鮮市場の衛生調査と衛生的処理が行われている

アメリカのトランプ大統領の発言などもあり中国政府がこの新型コロナの発生を隠していたとの印象は強い。確かに、この発表からは27件の症例がいつの段階で把握されていたものかはこの発表からは判然としない。しかし、2019年暮れに「原因不明ウイルス性肺炎」の存在が発表され、その症状まで発表されていたという点は事実として記録しておきたい。この段階では、「人から人に伝染する現象は確認されていない」と発表されていたことも記録しておく必要が有るだろう。

年が明けた2020年1月3日に再び、武漢市衛生健康委員会が発表している。

 『原因不明ウイルス性肺炎』と診断されたのは重症例11例を含む44例であり、残りの患者の容態は安定している。 現在、すべての症例は武漢の医療施設で隔離治療中であり、121名の濃厚接触者については、並行して医療観察のための追跡が行われている」。

事実の羅列ではあるが、それ故の緊張感を感じる気もする。そして更に次の様に発表が続いている。

調査の結果、一部の患者は武漢市の華南海鮮城(海鮮卸売市場)の経営者であることが判明した。 現在までの予備調査では、人から人への感染の明確な証拠はなく、医療従事者への感染も確認されていない」。 

同時に、「原因不明ウイルス性肺炎」の分析も進められていることがわかる。

病原体の分析(核酸検査、ウイルス分離培養を含む)、原因の究明が進んでいる。インフルエンザ、鳥インフルエンザ、アデノウイルス感染症などの一般的な呼吸器疾患ではないと考えられる」。

その二日後の1月5日の発表を見てみる。

『原因不明ウイルス性肺炎』と診断された患者は59人で、そのうち重症患者7人を含む。残りの患者の容態は安定している。現在、すべての患者が武漢の医療機関で隔離治療を受けており、死亡者は出ていない」。 

ここで最初の患者の発症日が明示されている。

感染者59名のうち、最も早い発症は2019年12月12日、最も遅い発症は2019年12月29日だった」。

発表はその時その時の状況を簡潔に記しているといった内容だが、ある程度の情報が公表されていたことがわかる。勿論、この段階では世界はまだ中国・武漢市での発表に注目してはいない。

(つづく)

インファクトはFIJ新型コロナ国際ファクトチェック・プロジェクトに参加しており、この記事の作成にはFIJの龍偉、謝幸儒の両リサーチャーが関わっています。

Return Top