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《週刊》ネット上の情報検証まとめ(Vol.52/2020.9.30)

《週刊》ネット上の情報検証まとめ(Vol.52/2020.9.30)

インターネット上で話題になった“要注意”情報を、週1回まとめてお届けします。紹介するのは、他のメディアなど第三者が調査・検証したものも含みます。(大船怜ネット上の情報検証まとめ管理人)


(1)「8月の自殺者総数 女性が男性の3倍」

日付
9/11
発信者
立川談四楼(落語家)
媒体
Twitter
拡散数
7100RT
内容
8月の自殺者数が公表されたね。対前年同月比で15.3%増だってさ。コロナ禍が関わっているのは明らかだよね。総数は246人だけど、気になるのは男性60人、女性186人という数字で、女性に何があったのか、男性の3倍の人が命を断っているのだ。」などとする投稿
【検証】総数ではなく増加数

8月の全国の自殺者数は、速報値で男性1199人、女性650人。これは昨年同月と比べ男性60人、女性186人、計246人増加している。立川氏が「総数」として挙げたのは増加数の誤りで、実際の総数は依然男性の方が2倍近く多い。

詳細はインファクト別稿の検証記事を参照。


(2)「民主政権下で宮澤元首相の内閣合同葬儀」

日付
9/25
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
2000RT
内容
スクリーンショット画像とともに、「#中曽根の葬式に税金出すな というタグがありますが、民主党政権下でも内閣と合同の葬儀が行われています。」などとする投稿。
引用
【検証】民主政権下は参院議長の参院葬

引用されたスクリーンショットはWikipediaの「国葬」の項目の投稿当時の版。「2011年(平成23年)8月28日」「宮澤喜一」と書かれているが、これはWikipediaの記述の誤りであり、その後の版では正しい「2007年(平成19年)」に修正されている。当時は自民党政権(第1次安倍内閣)で、内閣と自民党による合同葬儀が行われた。

民主党政権の2011年、野田内閣の時に実際行われたのは、西岡武夫元参院議長(在職中に死去)の参議院葬。

宮澤元首相の合同葬儀、西岡元議長の参議院葬ともに、名目上「国葬」ではないが、葬儀の費用は国費から賄われている。詳細はBuzzFeedによる検証記事を参照。


(3)「来年度から中学校の体育授業に取り入れられる銃剣道」

日付
9/25
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
2400RT
内容
愛知民報記事のスクリーンショット画像とともに、「来年度から中学校の体育授業に取り入られる銃剣道。」などとする投稿。
引用
【検証】以前から銃剣道は選択可能

この愛知民報記事は2017年7月のもので、同年3月に改訂が告示され、2021年度に全面実施予定の中学校の新学習指導要領での「銃剣道」の扱いについて批判的に論じている。

記事で述べられているように、この改定では、保健体育の「武道」で選択できる種目の例として新たに「銃剣道」が加えられた。しかし、「武道」で銃剣道を選択すること自体はこれ以前から認められており、改訂はこれを改めて明記したに過ぎないため、「来年度から取り入れられる」という言い方は正しくない。

この改定については2017年当時も、朝日新聞などで銃剣道が新たに選択可能になったという誤解を与えるような報道がされていた。詳細は、当時の日本報道検証機構の検証記事(アーカイブ、全文は同楊井人文代表(現・インファクト共同編集長)によるYahoo!ニュース個人)や、J-CAST記事を参照。


(4)「韓国に日本が捨てた税金一覧(画像)」

日付
9/24
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
4200RT
内容
「永久保存版!韓国というドブに日本が捨てた税金一覧!」と題し、名目・日付・金額を列挙した画像。
引用
【検証】有償融資で既に全額返済

列挙された項目の内容は、公開されている「円借款案件」のリストとほぼ一致。円借款とは政府開発援助(ODA)の一環で、途上国に対し低金利で開発資金を貸し付ける有償の融資である。BuzzFeedの取材に答えた外務省によれば、韓国の円借款返済は2015年に既に完了しているため、「ドブに捨てた」という表現は正しくない。

また、拡散された画像には、同じ項目が30件近く重複している部分がある、金額が2桁大きく記されているといったミスもあった。「現在の価値に換算すると総額は53兆円規模になる。」という記述に関しても、実際の合計金額は6000億円程度で、物価変動を考慮したとしてもその90倍になるとは考えられない。詳細はBuzzFeedによる検証記事を参照。


その他

FIJ(ファクトチェック・イニシアティブ)では新型コロナウイルスに関する情報の検証結果などをまとめた特設サイトを開設。国内外の真偽に疑義のある情報を紹介し、随時更新している。

また過去のまとめでも、新型コロナウイルス関連の様々な誤情報についても検証を紹介している。

 

(過去の回をまとめて見たい方はこちらから。次回は、2020年10月7日の予定です)

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