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《週刊》ネット上の情報検証まとめ(Vol.17/2020.1.29)

《週刊》ネット上の情報検証まとめ(Vol.17/2020.1.29)

インターネット上で話題になった“要注意”情報を、週1回まとめてお届けします。紹介するのは、他のメディアなど第三者が調査・検証したものも含みます。(大船怜ネット上の情報検証まとめ管理人)


(1)「関空へ入国した武漢人観光客が病院から逃げた」

日付
1/23
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
2万RT
内容
中国・武漢を中心に感染が拡大している新型肺炎に関連して、中国語の投稿の訳として、「中国から関西空港へ入国した中国武漢人観光客から咳と熱を検知し、病院へ搬送したものの検査前に逃げた。理由はUSJと京都へ遊びに行きたいから。新型肺炎感染者の可能性が高いので、大阪に住む人ご注意を。」などとする投稿。(削除済み)
【検証】根拠不明の噂で担当当局も否定

投稿は中国のSNS「微博(weibo)」の書き込みを和訳したもの。他にも漫画家の孫向文氏の「逃走した中国人は武漢発の便で大阪着、京都とユニバーサルスタジオジャパンに行く予定です」などとする投稿(約1.1万RT)や、「Share News Japan」「はちま起稿」「オレ的ゲーム速報@刃」といった大手まとめサイトによる記事化(いずれも既に内容を修正)で、「感染疑い患者が逃走」の情報は広く拡散された。

しかし、厚労省管轄の関西空港検疫所や、大阪府医療対策課の担当者はこれを全面的に否定(BuzzFeed毎日新聞など)。大阪府知事の吉村洋文氏もTwitterで「この情報はデマです。」と明言した。関空を運営する関西エアポートも、公式サイトで「このような事実はございません(関西空港検疫所に確認)。」と発表した。

仮に日本の関係当局の説明を信用しないとしても、そもそも元の書き込みは情報源の不明な噂レベルのもので、信用に値する根拠は示されていない。

ちなみに、新型肺炎に関して中国のネット上では、北京西安阜陽などの病院でも患者が逃走したという同じような噂が拡散し、病院や当局が否定する事態になっている。日本での噂と関連性は不明だ。


(2)「コロナウイルスの致死率は15%」

日付
1/26
発信者
孫向文(漫画家)
媒体
Twitter
拡散数
Twitterで約1.2万RT
内容
中国語ユーザーの投稿を引用して「【速報】中国と香港の最新発表、コロナウイルスの致死率は15% 感染率83% に更新した。このデータでは 人類史上最凶のウイルスです。」などと投稿したツイート
引用
【検証】分母は入院患者のみ

孫向文氏が引用した中国語ユーザーの情報源は、台湾メディア「自由時報」の「中港最新研究:武漢肺炎致死率15% 傳染率83%」と題した記事。新型肺炎を引き起こすコロナウイルスの感染患者について「四十一人中有六人死亡,即死亡率為十五%。」(筆者訳:41人中6人が死亡しているので、死亡率は15%になる)などと報じた。

しかし、この「15%」は、前提条件に注意が必要な数字だ。記事の元となったのは、国際的に権威ある医学誌「The Lancet」に24日掲載された、中国と香港の合同チームによる論文データ(要旨)。これには研究対象となった41人のうち6人(15%)が死亡したということは確かに記されている。しかし、この41人は新型コロナウイルスに感染していると1月2日までに診断された入院患者(admitted hospital patients)であり、既に重い症状を発症している患者と推定される。自由時報の記事や、孫氏らの引用でこのような前提は説明されていなかった。

この論文の内容については、医師の忽那賢志氏の解説が詳しいので参照のこと(ただし、本稿執筆時点では記事中の参考論文の記載に誤りがある。正しい論文のリンクは前述の通りこちら)。

重症患者を分母に取れば致死率が高くなるのは当然で、致死率と言って普通に想像する「感染者全体のうちの死者の率」を知る参考にはしにくい。感染症の流行初期段階では軽症患者の存在を把握することは難しく、感染しても症状が現れない潜伏期間の問題もあるため、致死率などの正確なデータはすぐには出ないのが通常だ。今回の新型肺炎についてWHO(世界保健機関)は致死率を3%程度と目下推定している

また、「感染率83%」も限られた人数内でのデータにすぎず、一般化には適さない。詳細はBuzzFeedの記事を参照のこと(ただし、この記事の中のMERSやSARSの「致死率」も重症患者に偏った計算であり、単純比較はできないことに注意)。


(3)「悠仁さまが異世界転生ラノベご執筆」

日付
1/22
発信者
菊ノ紋ニュース
媒体
Web記事
拡散数
Twitterで4万RT
内容
「悠仁さま『異世界転生ラノベ』ご執筆! 主人公はもちろん『ご本人』でチート生活か」と題し、「秋篠宮家関係者」の話として「意外かもしれませんが悠仁さまは異世界転生もののライトノベルの大ファンで、それを原作にしたアニメなどを熱心に鑑賞されています。作品を鑑賞するだけでは満足せず、ご自身でも小説の設定資料集を熱心に作られています。」などとする記事。
【検証】疑わしい記事ばかりのサイトの未確認情報

記事は、スクリーンショット画像を添付した投稿がTwitterで約4万RTされるなど大きな反響を呼んでいる。

しかし、この「菊ノ紋ニュース」以外のメディアからは同様の情報は全く伝えられていない。記事の内容は匿名の「関係者」とされる人物らの伝聞だけで、上記の「秋篠宮家関係者」の証言として紀子さまが「『佳子は下品なダンスが趣味だし、眞子は悪趣味な男が趣味だし、一体うちの子供たちはどーなってるの!?』と叫んでおられました…。」とするなど一見して疑わしい記述が多数目に付く。これらの「関係者」が実在するかどうかも含めて、記事内容の信憑性を確認できる手掛かりは全くと言っていいほど示されていない。

「菊ノ紋ニュース」には他にも「紀子さまは毎朝ネットの週刊誌記事のコメントをチェックしながらハンカチを噛んで周囲に当たり散らし、庭でシャドーボクシングをして気を紛らわせている」などの荒唐無稽な内容の記事が並ぶ。いずれも「関係者」の証言とされるものの真実味に乏しく、全くの創作・虚偽と区別できない。


(4)「唐田えりかのInstagramに縦読み(画像)」

日付
1/22
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
1000RT
内容
俳優の東出昌大さんとの不倫問題が報じられた俳優の唐田えりかさんを思わせるInstagramのスクリーンショット風の画像とともに、「縦読み発見した。」とする投稿。
引用
【検証】画像は創作

ハフポストが検証している。唐田さんのInstagramアカウント(既に削除)は実際には「erika_karata」だが、上掲の画像では1字違いの「erika_karate」になっている。「erika_karate」のアカウントは以前から別の海外ユーザーが取得しているが、どちらのアカウントにも類似の投稿の形跡は存在しておらず、画像はコラージュ等で創作されたものと考えられる。

また画像では最後の1行が唐突に不自然な文で終わっているが、これは「縦読みの暗号を作ろうとしたが上手くいかず途中で諦めた」というネット上の定番のネタの形式で、不倫を隠していた人物の書いた文章としては考え難い。

投稿者は「あちらこちらにきちんとフェイクまぜてんのにな」など、画像が本物でないことを認める発言もしている(削除済み)。


(5)「大学図書館が『ムー』愛読者の学長の怒りに触れる」

日付
1/23
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
1.3万RT
内容
「国際信州学院大学附属図書館」を名乗るアカウントの、『月刊ムー』を含むいくつかの雑誌を購読中止するという投稿に続く、「『ムー』愛読者である学長の怒りに触れ、予算増額と共にすべての雑誌継続が出来ることになりました。」などとする投稿。
【検証】架空の大学名を冠したネタアカウント

投稿にはこれを実際に起きた出来事と誤認する反応も多く見られたが、そもそも「国際信州学院大学」とは実在しない大学だ。Twitter上にはこの「大学」の施設やサークルを名乗る多数のアカウントが存在し、偽の「公式サイト」も作られるなどかなり手が込んでいるが、元々は大手匿名掲示板「5ちゃんねる」で作られたジョーク(ネタ)の一環である(J-CASTの記事を参照)。

過去には「国際信州学院大学の教職員に50人分の予約を無断キャンセルされた」とする架空のうどん屋の投稿が大きな反響を呼ぶなど、同「大学」の名は時たま話題になっている(産経新聞の記事を参照)。

(過去の回をまとめて見たい方はこちらから。次回は、2020年2月5日の予定です)

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