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【FactCheck】旧民主党の「『事業仕分け』で、国立天文台の予算が削られた」は「不正確」

【FactCheck】旧民主党の「『事業仕分け』で、国立天文台の予算が削られた」は「不正確」

国立天文台のプロジェクトを応援するツイートをした立憲民主党の原口一博議員に対し、「事業仕分けで、国立天文台の予算を削ったのはどなたでしたっけ?」と非難するツイートが拡散した。原口議員が所属した当時の民主党政権が「事業仕分け」で国立天文台をはじめとする予算の削減を行ったと主張する言説はインターネット上に多数存在する。しかし、これは不正確だ。(佐藤翠)。

チェック対象

対象言説
事業仕分けで、国立天文台の予算削ったのはどなたでしたっけ?
(Twiter、2022年5月14日投稿)

結論 不正確

【不正確】国立天文台の事業で使われる運営交付金が、「事業仕分け」で「縮減」と判定されたのは事実。しかし、「事業仕分け」の判定に法的拘束力はなく、最終的に国立天文台の予算が削られることはなかった。

そもそも事業仕分けとは

「事業仕分け」とは、国の予算や制度に加え、地方公共団体や民間の役割を見直すため、2009年から2012年まで内閣府に設置された行政刷新会議によって、当時の民主党政権下で実施されたものだ。
公開の場において、外部の視点も入れながら、それぞれの事業ごとに要否等を議論し判定するものであり、透明性を確保しつつ、予算を見直すことができる有効な方法とされていた(参照)。

ただし、「事業仕分け」では事業の予算について「縮減」や「廃止」といった評価を下すものの、その評価に法的拘束力はない(参照)。
そのため、「事業仕分け」で予算の「縮減」と判断されたとしても必ずしも予算が削減されるわけではなく、あくまで内閣が提出した予算案を基に、国会の議決によって予算は成立する。

国立天文台の予算は「縮減」判定となったが….

2009年11月に実施された「事業仕分け」の資料を確認したところ、すばる望遠鏡の運営といった国立天文台が実施するプロジェクトの経費を含む国立大学運営費交付金が、「事業仕分け」で「縮減」と判定されたことは事実だった(参照)。
国立天文台としても、予算削減のおそれがあることを憂慮する発表をしている(参照)。ツイートの投稿者が引用する画像はこのときの記事だ。

ただし、前述の通り、この「事業仕分け」には法的拘束力は無い。では、「事業仕分け」での評価に基づいて、実際に国立天文台のプロジェクト経費が削減されたことはあったのだろうか。文部科学省の宇宙開発利用課の担当者へ問い合わせたところ、以下の回答だった。

国立天文台の事業を含む、国立大学法人の運営交付金は、「事業仕分け」で「縮減」の判定は受けました。
ただ、「事業仕分け」の判定は国立大学法人の運営費交付金全体に対するものであり、国立天文台の事業個別に対するものではありません。
また、最終的に国立大学法人の運営費交付金の予算が削減されることもありませんでした。

「事業仕分け」で「縮減」の判定を受けたものは、「国立大学法人の運営費交付金全体」であり、投稿にあるような「国立天文台の事業個別に対するもの」ではなかった。そして重要な点だが、最終的に国立天文台の予算が削減されることはなかったとのことだ。

「事業仕分け」における科学予算に対する「縮減」の提言に対し、著名な科学者が抗議をするなど、予算削減の判定について多くの批判が報じられていた(参照)。そのため、多くの人が、「事業仕分け」によって実際に予算が削減されたとの印象をもっているかもしれない。

国立天文台以外の予算についても、当時の民主党政権が「事業仕分け」によって様々な予算を削減した旨の言説はインターネット上で数多く存在している。しかし、これも正確には、「事業仕分け」で予算縮減の判定を行ったことは有ったということで、それが必ずしも実際の予算の削減を意味するわけではない。その点に注意が必要だ。

結論

「事業仕分け」では国立天文台を含む国立大学法人の運営交付金が「縮減」の評価を受けたことは事実であるものの、実際には国立天文台の予算は削減されていない。
投稿者のツイートはあたかも、「事業仕分け」で民主党政権が国立天文台の予算を削減したかの印象を与えるが、実際に予算が削減された事実は存在せず、ツイートの内容は「不正確」だ。

問題のツイートは「不正確」であり、InFactが使用するエンマ大王を使った表示では2エンマ大王に相当する。

エンマ大王のレーティングは以下の通り。

  • 4エンマ大王 「虚偽」
  • 3エンマ大王 「誤り」
  • 2エンマ大王 「ミスリード」「不正確」「根拠不明」
  • 1エンマ大王 「ほぼ正確」

InFactはファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)のメディアパートナーに加盟しています。この記事は、InFactのファクトチェック基本方針、およびFIJのレーティング基準に基づいて作成しました。

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