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【参院選FactCheck】岸田首相の発言「今年の春闘の賃上げ率2.08%は、過去20年で2番目に高い」は、ほぼ正確

【参院選FactCheck】岸田首相の発言「今年の春闘の賃上げ率2.08%は、過去20年で2番目に高い」は、ほぼ正確

岸田首相が、「今年の春闘の賃上げ率2.08%は過去20年間で2番目に高い」旨を発言した。この発言をファクトチェックしたところ、連合が発表している賃上げ率を前提とすると、確かに2022年春闘の賃上げ率は過去20年間で2番目に高かった。(佐藤翠、田島輔)

チェック対象

結果として、今年の春闘においてもええと2.08%、これは20年、この20年間において2番目に高い給与の引き上げの数字を示しています。(日本記者クラブ主催の党首討論会での岸田首相の発言(参照、1:32:49~))

結論

【結論:ほぼ正確】確認したところ、岸田首相が言及した賃上げ率「2.08%」は、連合が発表した賃上げ率「2.09%」を間違えたものと考えられる。連合の資料によれば、賃上げ率「2.09%」は過去20年で2番目に高い数字であり、岸田首相の発言はほぼ正確だった。

「賃上げ率2.08%」の根拠

岸田首相の発言は6月21日に開催された日本記者クラブ主催の党首討論会において行われた。この中で岸田首相は、賃上げに関する具体的施策についての質問を受けて、「賃上げ税制、公共調達や補助金においても、賃上げを優先した企業を優遇する、あるいは公共価格の引き上げたり、あるいは価格転嫁の促進、こうした政策をまあ用意して、賃上げを誘導していく。そしてそれを民間に広げていく。​​結果として、今年の春闘においても2.08%、これはこの20年間において2番目に高い給与の引き上げの数字を示しています」と回答した。

これについて疑問の声が上がったのでファクトチェックした。前年の給与に対する賃上げ率「2.08%」は、過去20年間で2番目に高い給与の引き上げ率と言えるのだろうか?

まず、岸田首相が言及した「賃上げ率2.08%」の根拠を確認しよう。
「賃上げ率」については、経団連や連合が異なる集計方法で発表しており、2022年の賃上げ率についても複数の数値が存在している。
経団連の発表では、2022年春闘の賃上げ率の平均は2.27%(参照)となっていた(調査対象は、原則として従業員500人以上の主要21業種大手252社)。
他方で、連合の最新の発表(参照)では、賃上げ率の平均は2.09%となっている(調査対象は、平均賃金方式で回答を引き出した4331組合)。
岸田総理が言及した「賃上げ率2.08」の根拠は不明であったが、おそらく、この連合が発表した賃上げ率「2.09%」の言い間違い又は記憶間違いではないだろうか。

過去20年間の賃上げ率

そこで、連合の発表した過去の「賃上げ率」を確認したところ、以下のとおり、確かに2022年春闘の賃上げ率2.09%は、過去20年間で2番目の高さだった(ただし、2022年の集計は6月3日時点の集計結果であり、他の年は6月末の最終集計結果を反映しているため、2022年6月末時点の集計結果によって結果は変わりうる。)。

連合のプレスリリースより(参照

春闘での賃上げ率に関する2003年からの推移を確認すると、最も賃上げ率が高いのは2015年の2.20%、その次が2022年の2.09%だ(3番目は、2014年・2018年・2019年の2.07%)。

結論

検証したところ、岸田首相が言及した賃上げ率「2.08%」は、実際には連合発表の賃上げ率「2.09%」と考えられ、数字に若干の間違いがあると考えられる。
しかし、連合の発表によれば、賃上げ率「2.09%」は過去20年間で2番目の高さであり、岸田首相の発言の根幹には誤りはなく、発言は「ほぼ正確」であった。

(冒頭画像:日本記者クラブ主催の党首討論会(6月21日)で発言する岸田文雄首相)

InFactはファクトチェック・イニシアティブ(FIJ)のメディアパートナーに加盟しています。この記事は、InFactのファクトチェック基本方針、およびFIJのレーティング基準に基づいて作成しました。

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