インファクト

調査報道とファクトチェックで新しいジャーナリズムを創造します

《週刊》ネット上の情報検証まとめ(Vol.34/2020.5.27)

《週刊》ネット上の情報検証まとめ(Vol.34/2020.5.27)

インターネット上で話題になった“要注意”情報を、週1回まとめてお届けします。紹介するのは、他のメディアなど第三者が調査・検証したものも含みます。(大船怜ネット上の情報検証まとめ管理人)


(1)「フジロックフェスティバルが中止発表」

日付
5/22
発信者
日本経済新聞(電子版)
媒体
Webサイト
拡散数
不明
内容
「フジロックも中止 フェスなき夏、音楽ビジネスの修正不可避」と題し、新型コロナウイルス感染拡大の影響により、今年8月開催予定のフジロックフェスティバルの中止が発表されたとする記事。(キャッシュ
【検証】日経が誤掲載を謝罪

日経新聞は元の記事を削除した上で、同日中に「フジロックフェスティバルが今年の開催中止を発表したと記述していましたが、中止は発表されていませんでした」と訂正した。記事内で中止を発表した日付が「●日」と伏せ字になっており、未完成の予定原稿を誤って掲載したものとみられる。

現時点で、フジロックの公式サイトやSNSでは開催中止という言及はない。

なお、削除前の記事にコメントが掲載されていた音楽評論家の鹿野淳氏は、自身のTwitterにて「そもそも自分が取材のオファーを受けた趣旨とは異なる背骨の記事だったので、当初のオファーに適切な記事を要求したところ、それが急遽作られ、掲載されました」と投稿。23日掲載のインタビュー記事を紹介している。

(※6/6追記)6月5日、フジロックフェスティバルの今年の開催中止(来年への延期)が実際に公式サイトで発表された。日経記事の内容が現実化した形だが、記事の書かれた5月22日時点で開催に関する発表が無かったことには変わりがない。


(2)「コロナ禍の偏向報道で父の店が潰れた」

日付
5/22
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
2.6万RT
内容
「コロナ禍のマスコミの偏向報道で父の店が潰れました。」などとして、投稿者の父親の店を取材した地元テレビ局が実際以上に店や商店街の不振を誇張して放送したとする内容の一連の投稿。
【検証】震災関連の別の投稿と酷似

この投稿は、今年1月に別のTwitterアカウントから投稿された一連のツイート(削除済み。投稿まとめ)と文面・内容が酷似している。1月の投稿は東日本大震災被災地の商店街に関するもので、下表のように両者には明らかな類似が見て取れる(いずれも前半部分のみ抜粋、ハイライトは一致している部分)。

1月の投稿 5月の投稿
【拡散希望】マスコミの切り取り・捏造・偏向報道について。父は東北の田舎の商工会で理事をしていました。東日本大震災に見舞われ、津波の被害はなかったものの客足は遠のき、どうにか活気を戻そうとあの手この手で頑張っていました。そんな中、東京のテレビ局から取材の依頼がありました。(続く)取材内容は「商店街の活力について」とだけ聞かされていました。窓口だった父は、震災後の苦労話、そしてどうやったらまた商店街ににぎわいが戻るか、商工会や自治体を交えての取り組みを数時間にわたって説明しました。父の乾物屋、それから常連のお客さんにもインタビューをしてもらいました。私も見学させてもらいました。 コロナ禍のマスコミの偏向報道で父の店が潰れました。父は昔ながらの商店街でお店をやっていました。新型コロナのせいで営業時間は短くせざるをえなくなり、客足は遠のきました。商店街の理事でもあった父が活気を戻そうとあの手この手で頑張ってるとき、地元のテレビ局から取材の依頼がありました。取材内容は「商店街の取り組み」とだけ聞かされていました。窓口だった父は緊急事態宣言後の苦労話、解除後にどうやったらまた商店街ににぎわいが戻るか、商工会や自治体を交えての現在の取り組みを数時間かけて説明しました。店や常連のお客さんにもインタビューをしてもらいました。私も見学しました

以下、この後に続く部分も両者は酷似しており、5月の投稿は1月の震災関連の投稿を下敷きに改変したものと考えて間違い無いだろう。1月の投稿内容が事実かどうかは不明だが、5月の「コロナ禍」の方は創作である可能性が非常に高いと言える。

(※5/30追記)28日頃、「コロナ禍」の投稿は全て削除され(キャッシュ)、アカウント名も宣伝目的と思われるものに変更された。両アカウント名が同じユーザーのものであることはユーザーIDの記録によって確認できる。


(3)「トルコに生息する黒バラ(画像)」

日付
5/19
発信者
一般ユーザー
媒体
Twitter
拡散数
1.9万RT
内容
「トルコのハルフェティ南東部にのみに生息するバラ。 絶滅が危惧されている希少な花だそうです。」などとする画像付きの投稿。
引用

※アカウント名等モザイク処理は筆者による

【検証】着色または加工画像の疑い

上掲の4枚の画像はいずれも出典や撮影場所など詳細が不明で、実在するバラであることを裏付ける証拠は無い。色水を吸わせてバラを人工的に着色する技術が存在するほか、画像がデジタル加工されている可能性もある。

トルコのハルフェティという街で「黒いバラ」と呼ばれる品種が栽培されているのは事実。ネット上には着色・加工が疑われる画像が大量に出回っているため信憑性の高い情報を得ることは容易ではないが、トルコ農林省によるWebテレビ局「Tarım TV」がその栽培の様子を紹介している(動画12)。動画に映るバラはかなり暗い色であるものの、やや赤みも見え、上掲の画像のような完全な漆黒ではない。また、花弁の様子も画像とはやや異なって見える。

またこの「黒いバラ」はあくまで栽培品種であることを考えると、「ハルフェティ南東部にのみに生息」「絶滅が危惧されている」といった記述は適切とは言えない。

ネット上に大量に存在する一連の「トルコの黒いバラ」の画像について、詳細は、筆者が2016年に個人ブログで執筆した検証記事も参照のこと。


その他

FIJ(ファクトチェック・イニシアティブ)では新型コロナウイルスに関する情報の検証結果などをまとめた特設サイトを開設。国内外の真偽に疑義のある情報を紹介し、随時更新している。

また過去のまとめでも、新型コロナウイルス関連の様々な誤情報についても検証を紹介している。

 

(過去の回をまとめて見たい方はこちらから。次回は、2020年6月3日の予定です)

 

※この記事の調査には、FIJのリサーチャーである八木風香氏が協力した。

Return Top