
東京選挙区の参政党公認候補、さや氏が「外国人労働者は日本人の賃金の7割程度で働いていて、日本人も合わせられるので30年間賃金が上がらない」「(中国製)太陽光パネルにチップのようなものが埋め込まれ、(中国に)情報が抜かれている」と発言している。これらの発言に根拠があるのか、ファクトチェックした。(この記事は8bitNewsのニュース動画を記事化したものです)
対象言説
参政党・東京選挙区公認候補のさや氏が7月3日、JR大塚駅前で次のように演説した。
大塚もそうだと思うんですけれども、外国人の方がたくさん増えてますね。 もう日本全国、技能実習生が解禁されて、どんどんどんどん外国人の労働者が増えました。岸田内閣では80万人さらに増やすと、そういう宣言も行われました。/でもね、外国人の方、日本人の賃金の約7割程度で働いてると言われているんですね。そう、そうなんです。奴隷的な労働を外国人の方に請け負わせてる。でもそのツケは必ず日本人に回ってくるんです。なぜならば、その外国人の方の賃金に日本人の賃金も合わせられてしまうんです。/だから日本人の賃金はこの30年間ずっと上がっていない。今、賃上げしろ、賃上げしろ、賃上げしろと政府が要請をしています。お願いをしています。みんな経済状況が改善してない中で、無理やり賃金を上げている。/そして太陽光パネル。太陽光パネルはほとんど9割が中国から輸入したものだと言われています。それを、皆さんおかしいと思いませんか?日本人が作った太陽光パネルではない。中国に依存する形で、こういう形でエネルギー政策を進めていっていいんでしょうか?/その上、ロイターでも報じられてますが、太陽光パネルの中にいろんなチップのようなものが組み込まれていることもあったそうです。それによって情報が抜かれたり、いろんな危険な分子が入っていたり、その上、太陽光パネルは水をかけても消火できないんです。消防隊の方が水をかけると感電死してしまうんです。だから消火活動を行うにしても大変な労力が必要になります。
この演説について次の4点を検証した。
①「外国人労働者は日本人の賃金の7割程度で働いている」
②「外国人労働者の賃金に日本人も合わせられるので30年間賃金が上がらない」
③「ロイターの報道によると、中国製太陽光パネルの中にチップのようなものが組み込まれ、情報が抜かれたり、危険な分子が入っている」
④「太陽光パネルは水をかけても消火できない。消防隊員が水をかけると感電死する」
結論
①は、日本人と外国人の平均賃金を比較すると「外国人は日本人の7割程度」は正しい。
②は、外国人の賃金のために日本人賃金が上がらないという因果関係は明確ではない。
③は、通信機器が発見されたというロイターの報道はあったが、「情報が抜かれている」とまでは断定していない。
④は、太陽光パネルの消火活動で感電するリスクがあると指摘している資料がある。
ファクトチェックの詳細
①「外国人労働者は日本人の賃金の7割程度で働いている」について
厚生労働省の統計調査によると、日本人の労働者の平均賃金は31万8300円、外国人労働者の平均賃金は23万2600円。平均賃金を比較すると、外国人は日本人の73%となる。よって、この発言は正しいと言える。
②「外国人労働者の賃金に日本人も合わせられるので30年間賃金が上がらない」について
日本総研のレビューに、次のような指摘がなされている。
- マクロの労働受給と賃金上昇率の関係から外国人労働者の急増によって2017年の所定内級給与上昇率は0.2ポイント程度抑制されたと試算される
- 生産性の改善の面から賃金上昇にプラスに作用する面も期待できる
- 外国人労働者の増加による賃金の伸び抑制の影響度はこの先希薄化していく公算が大きい
(第5章 下田裕介氏「外国人雇用の増加による賃金への影響」より)
0.2ポイント程度抑制が試算される一方で、生産性改善から賃金上昇に作用する面も期待できると指摘されており、外国人労働者の低賃金と日本人の賃金が上がらないこととの因果関係は不明ではないかと考えられる。
③「ロイターの報道によると、中国製太陽光パネルの中にチップのようなものが組み込まれ、情報が抜かれたり、危険な分子が入っている」について
これについては、指摘されているとおりロイター通信の報道がある。それによると、アメリカの電力インフラに使われる中国製インバーターやバッテリーに製品仕様にない通信機器が発見され、ファイアーウォールをすり抜ける潜在的リスクが指摘されている。この装置により遠隔で電力インフラを操作・破壊できる可能性があり、広域停電や機能停止など深刻な影響を及ぼす懸念がある。だが、中国政府は安全保障の過度な一般化と反論はしている、という内容だ(ロイター通信 2025年5月15日「中国の太陽光発電インバータで不正な通信機器が発見される」)。
太陽光パネルなどに使われているインバーターと呼ばれる電力変換装置とバッテリーから通信機器が発見されたというのがロイターの報道内容だ。遠隔操作で機能停止するリスクや懸念が示されているが、この記事をもって「情報が抜かれている」と断定する根拠にはできない。
(※InFact編集部注 ロイター通信は、匿名の米国専門家らから得た情報に基づいて報道しており、記事には「不正デバイスの存在はこれまで報告されておらず、米国政府はこれらの発見を公に認めていない。コメントを求められた米国エネルギー省(DOE)は、新興技術に関連するリスクを継続的に評価しており、メーカーが機能を開示し文書化することに大きな課題があると述べた」とも書かれている。)
④「太陽光パネルは水をかけても消火できない。消防隊員が水をかけると感電死する」について
これについて調べると、消防庁消防大学研究センターの資料が見つかった。この資料には、太陽光発電システムの火災時に、棒状放水(ノズルから水を棒状に勢いよく放射)を通じて感電することはあり、致命傷にならずとも感電のショックで屋根からの落下などの可能性はある。しかし、太陽光発電全般に言える構造的なリスクであり、どの国の製品であるかに依存しない、という趣旨の記載がある。
この資料によれば、太陽光パネルの消火活動によって直接的に「感電死」のリスクがあるとまでは言っていないが、感電が起きて負傷するリスクがあることは否定できない。
以上は8BitNewsによるファクトチェックだ。解説動画もご覧いただきたい。
(8bitNews 堀潤, 構二葵)
(動画フルバージョンはこちら)
InFact編集長追記
堀潤氏が主宰する動画ニュースサイト「8bitNews」が、2025年参議院議員選挙の候補者の街頭演説等を取材し、ファクトチェックするシリーズを始めました。インファクトは、より多くの人に参議院選のファクトチェックの結果を届けていく観点から、8bitNewsと連携し、動画コンテンツを文章化して掲載します。今後も、8bitNewsのファクトチェックを掲載していく予定です。
InFactのファクトチェックは発言者を批判したり否定したりするものではなく、発言の内容について事実関係や発言の根拠を確認して社会と共有するものです。