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【参院選25FactCheck】”自民党、公約である現金給付のために税金を増やす”は誤り

【参院選25FactCheck】”自民党、公約である現金給付のために税金を増やす”は誤り

自民党公約の現金給付について、給付金のために税金を増やすとの投稿がXで拡散されている。この言説をファクトチェックした。

対象言説

「(自民党は)給付金のために税金を増やすそうです。」(X2025年6月25日投稿)

結論

自民党は、物価高対策として国民1人当たり2万円の現金給付を来月行われる参院選の公約に掲げているが、給付金の財源として税金を増やすとは発表していない。複数の自民党幹部が、税金を増やすのではなく、増加した税収分(税の上振れ分)で対応すると発言している。このため、「給付金のために税金を増やす」という言説は事実とは言えない。

ファクトチェックの詳細

この投稿は2025年6月29日時点で14.5万回表示され、2400回以上リポストされている。投稿には6月14日の共同通信の記事「給付財源「税収増」で対応―自民幹事長、赤字国債否定」が添えられて、「給付金のために税金を増やすそうです」というコメントとなっている。

先ず、該当の投稿で引用された記事を確認した。この記事では、自民党の森山裕幹事長が物価高対策としての一律2万円の給付について示した方針が取り上げられている。記事によると、「自民の森山裕幹事長は14日、鹿児島市での党会合で、首相が表明した国民1人当たり一律2万円の給付に関し、2024年度の税収の上振れ分を財源に充てる方針を示した」とある。 

次に、給付案の財源に関する自民党の方針を調べた。6月14日にテレ東BIZは、給付金の財源について自民党の森山幹事長が説明する会見を報じている。これは鹿児島市内で開かれた党の会合で、この中で自民党の森山裕幹事長は以下のように発言した。

「予算としては3兆円半ばになると思いますが、これは税収の増が見込まれますので、その範囲で対応ができると思っています」


国民1人当たり2万円の給付の財源について税収増で対応する考えを示したものだ。これは「税収の上振れ」として、7月2日の党首討論などでも議論となっている。この「税収の上振れ」がどのくらいあるかについては、新聞が自民党の試算を報じている。

「財務省は例年、前年度の決算見通しを7月上旬に発表する。政府は、2024年度の一般会計税収が予想より上振れすることを見込んでおり、これを給付の財源に充てる。参院選後に補正予算案を編成し、年内にも給付したい考えだ。」(朝日新聞 2025年06月12日朝刊「自公、1人2万円給付案 参院選公約、非課税世帯さらに2万円」) 

「自民党の小野寺政調会長は14日、福島県本宮市で開かれた会合で、参院選公約に盛り込む国民1人2万円の現金給付を巡り、2万円を上乗せする子どもの対象年齢を「18歳以下」とする方針を明らかにした。財源に関し「4兆から5兆円くらい、堅く見積もっても税収の上振れがあるだろう」との見通しも示した。」(読売新聞 2025年6月15日朝刊「上乗せ給付「18歳以下」 小野寺政調会長 対象年齢明らかに」) 

これらの記事から、政府・自民党は次のように考えていると見られる。

・具体的に何の収入が増えたかは不明だが、2024年度一般会計税収で予想外に増えた分を財源に充てる。

・4兆円から5兆円の財源があるだろうと見積もる。

総務省統計局の人口推計によると、2025年1月1日時点での総人口は約1億2355万2千人である。 単純計算で、 国民全員に一律2万円給付するならば、総額は約2兆4710億4000万となる。子ども、非課税世帯に追加給付する案や、手数料を含むと、増額はさらに増加する見込みである。最終的にいくらになるか現時点では明らかではないが、自民党は税収の「上振れ分」で給付金を賄うのだとしており、増税という話は出ていない。

(岩岡幸菜,岡田菜緒,丸石菜月)

編集長追記

InFactは検証の対象となる投稿及びその発信者を非難したり否定したりするようなファクトチェックはしていません。拡散する情報の内容を確認し、明らかになった事実を付け加え共有することを目的としてファクトチェックをおこなっています。

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