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【参院選25FactCheck】参政党候補者 ”海外勢の土地取得を政府が推進” は本当?

【参院選25FactCheck】参政党候補者 ”海外勢の土地取得を政府が推進” は本当?

千葉選挙区の参政党公認候補、なかやめぐ氏が、参議院選挙公示日の街頭演説で「海外勢力から土地等が買い荒らされ、日本政府は止めるどころか推進している」「国どうしの取り決めで(外国人が)起訴されない」などの発言があった。これらの発言に根拠があるのか、ファクトチェックした。(この記事は8bitNewsのニュース動画を記事化したものです)

対象言説

参政党・千葉選挙区公認候補のなかやめぐ氏が7月3日、JR千葉駅前で次のように演説した。

「日本人が税金が高くて苦しんでいるのに海外にお金を渡したり外国からの留学生に渡航費や学費を援助したり日本人の学生が奨学金で30代や40代まで借金を背負って過ごしているんです。自国の国民が苦しんでいるのに海外の海外の方たちに援助するのってどうしてなんだろう。日本政府っていう名前がついているからきっと日本人のために政治を行ってくれていると私は思っていたんです。だけど違ったんですよ。

日本政府っていう名前の中に帰化した外国人が何人か入っているということも知りました。帰化というのは外国の方がしかるべき手続きをしたら日本人として認められるということです。何の目的があってそんなことをするんだろう。私たち平和主義の日本人からは想像ができないことをしていたんですよ。日本で得た技術や知識を自国に持ち帰って自分たちの国の利益にしようとしていることを知りました。

私たち日本には「スパイ防止法」という法律がありません。海外にはあるんですけども日本にはないんですよ。スパイなんて聞くと映画の話かなって思いますよね。それが私たち日本人の平和ボケと言われるところなんです。だけど私もそうでした。そんな怖い話しないでって思うかもしれませんが、私たちが自分たちの生活とか目の前の仕事、娯楽、そういうことに意識を奪われているうちに、海外勢力から資源とか情報、土地あらゆるものが買い荒らされているということを知りました。そして今の政府はこういうことを歯止めをかけるどころか推進しているんですよ。知っていましたか?

私は普段子育てで忙しくしていたので、この参政党を知るまでは全く知らなかったんです。選択的夫婦別姓と言われているものもそうです。私は一人の主婦の立場として夫婦が別姓だろうが同姓であろうが大した問題じゃないでしょってその時は思いました。ですが、表面だけ見たら大した問題じゃなさそうなことの裏に戸籍をなくそうとしているのではないか、帰化した人が戸籍をたどれないようにしているんではないか、その先にこの日本を乗っ取ろうとしているんじゃないかな、そう思います。

現に外国の方が増えましたよね。外国の方は優しくていい方も多いです。だけど現に日本の警察の言うことが聞けなかったり、文化の違いでトラブルが起きていたり、日本の標識が読めずに交通事故を起こしている、こういうこともたくさん起きているんですね。そして国と国との取り決めがあるから逮捕されずに不起訴、そして同じことを繰り返す、こういうこともたくさん起こっているんです。想像してみてください。皆さんの大事なお子さんやお孫さんが外国の方の事件や事故に巻き込まれても、不起訴でした、分かりましたって終われますか。私たちはそういう日常生活過ごしていたらなかなか知り得ない情報を発信している政党、参政党と申します。」

このうち、次の3点を検証した。

①「海外勢力から資源や情報、土地が買い荒らされ、日本政府は推進している」

②「選択的夫婦別姓は帰化した人の戸籍を辿れないようにして日本を乗っ取るため」

③「国と国の取り決めで外国人は不起訴となり、同じ犯罪を繰り返す」

結論

①は、海外資本が森林等を取得する事例は確認されているが、近年、安全保障上の重要な土地の利用を規制する法律が施行されている。

②は、3党が提出した選択的夫婦別姓の法案にそうした主張の根拠はない。

③は、在日米軍関係者については不起訴率が高いというデータがあるが、在日外国人一般の不起訴率は日本人とほぼ同じだ。

ファクトチェックの詳細

①「海外勢力から資源や情報、土地が買い荒らされ、日本政府は推進している」について

林野庁は、外国資本による森林取得の件数は、平成18(2006)年から令和5(2023)年までに累計358件、2,868haとの調査結果を公表している(20247月公表。※)。

一方、2021年6月には「重要土地利用規制法」が成立している(2022年全面施行)。これにより、自衛隊や海上保安庁、原発、空港などの周辺や国境の離島など、安全保障の観点から「注視区域」「特別注視区域」に指定し、国が命じる利用制限命令に従わない場合は刑事罰が課せられるようになっている(内閣府ホームページ)。

こうした法規制があることからすれば、日本政府が外国資本による土地取得を推進しているとまでは言えない。

※編集部注 8bitNewsでは2022年発表データを引用したが、最新版に更新した。メディアでは通称「重要土地利用規制法」と呼ぶことが多いが、正式名称は「重要施設周辺及び国境離島等における土地等の利用状況の調査及び利用の規制等に関する法律」(政府の略称は「重要土地等調査法」)という。この法律で森林等は対象外であるが、自治体では水源地域の土地取引を把握するための水源地域保全条例が各地で制定されている

②「選択的夫婦別姓は帰化した人の戸籍を辿れないようにして日本を乗っ取るため」について

今年の通常国会では立憲民主党、国民民主党、日本維新の会が選択的夫婦別姓の法案を提出した(採決されず)。それぞれの案を確認してみる。

立憲民主党の案は、「別氏夫婦及び子についても同一の戸籍とします、別氏の夫婦の戸籍については婚姻の際、結婚する時に子供が称すべき氏として定めた氏を称するものを筆頭者等とする等により、戸籍がバラバラになる。個人単位の戸籍になるとか、戸籍制度が壊れるという懸念は当たりません」と説明されている(立憲民主党サイト)。

国民民主党の案は、「現行の戸籍制度を維持した 上で婚姻前の姓を婚姻後もそのまま使い続けることができるようにし、夫婦が別姓を選ぶ場合には婚姻時に筆頭戸籍者を決め、子供は筆頭戸籍者の姓に統一する」「家族関係を登録、公証する現行の戸籍制度を維持しつつ選択的夫婦別姓を導入する」と説明されている(国民民主党サイト)。

日本維新の会の案は、「結婚で姓を変えた人が社会生活で不利益を受けることを防ぐため戸籍法を改正し、希望する人が結婚前の旧姓を通称として戸籍に記載できるようにする」と説明されている(日本維新の会サイト)。維新の案は民法を変えずに戸籍法のみ改正し、旧姓の通称を届け出するためのもので同一戸籍、同一氏の原則は保持するという内容だ。

この3つの改正案を見る限り、帰化した人の戸籍がたどれなくなるとか戸籍制度を壊して日本を乗っ取るというような主張には根拠があるとは言えない。

※編集部注 外国人が日本に帰化し日本国籍を取得した場合は、戸籍に登録され、帰化日や国籍などが記載される(戸籍法102条の2)。なお、選択的夫婦別姓と戸籍制度の関係については、既出FactCheck】夫婦別姓を認めると戸籍制度が破壊されるのか?(2025.1.19も参照してほしい。

③「国と国の取り決めで外国人は不起訴となり、同じ犯罪を繰り返す」について

候補者はどこの国との取り決めなのか明言しておらず、何を念頭に述べたのかは定かでない。

外国人が不起訴になる要因となる取り決めとして、在日米軍関係者が公務執行中に起こした犯罪の裁判権について取り決めた日米地位協定が考えられる。

法務省の統計によれば、2001年〜2019年の起訴率の平均は日本人が43.7%、米軍関係者が17.8%というデータがある(科研費報告書・表2より)。だが、米軍関係者が日本で再犯を繰り返しているという情報は確認できない。

※編集部注 2023年における在日外国人被疑事件の起訴率は41.6%、日本人を含む全体の起訴率は39.6%となっている(令和6年犯罪白書、4-9-3-3)。このデータからは、外国人が日本人より不起訴になりやすい(起訴されにくい)ということはない。

 (8bitNews 構二葵)

InFact編集長追記

このファクトチェック結果について7月10日参政党にメールを送り、その旨を電話で伝えて説明を求めています。7月14日までに回答を求めましたが現在のところ回答は得られていません。回答が来次第、原稿に反映させる予定です。

堀潤氏が主宰する動画ニュースサイト「8bitNews」が、2025年参議院議員選挙の候補者の街頭演説等を取材し、ファクトチェックするシリーズを始めました。インファクトは、より多くの人に参議院選のファクトチェックの結果を届けていく観点から、8bitNewsと連携し、動画コンテンツを文章化して掲載しています。今回はその2回目です(1回目はこちら)。

InFactのファクトチェックは発言者を批判したり否定したりするものではなく、発言の内容について事実関係や発言の根拠を確認して社会と共有するものです。

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