
外国人への生活保護に対する国民民主党の玉木雄一郎代表の発言をめぐってその真偽が取り沙汰されている。対象の発言についてファクトチェックした。
対象言説
「外国人は生活保護の対象となりませんが、昭和29年の局長通知によって「当分の間」支給されることになり、それが現在まで続いています。通知が出された当時の在留外国人数は人口の0.6%程度でしたが、現在は2%を超え3倍以上に増えています。法的な位置付けを明確にすべきです。」
この発言は女性自身の問い合わせに対する玉木代表の返答の一部に含まれていた発言だ。
結論
生活保護の対象に外国人は含まれないという指摘は正しい。しかし、「当分の間、生活に困窮する外国人に対しては一般国民に対する生活保護の決定実施の取扱に準じて左の手続により必要と認める保護を行う」とした「昭和29年の局長通知」については、その後に新しい通知が出されており、昭和29年の局長通知が「現在まで続いています」とは必ずしも言えない。
ファクトチェックの詳細
玉木代表は女性自身で、次のように述べている。
「外国人は生活保護の対象となりませんが、昭和29年の局長通知によって「当分の間」支給されることになり、それが現在まで続いています。通知が出された当時の在留外国人数は人口の0.6%程度でしたが、現在は2%を超え3倍以上に増えています。法的な位置付けを明確にすべきです。」
この発言中「外国人は生活保護の対象となりません」「昭和29年の局長通知によって「当分の間」支給されることになり、それが現在まで続いています」に関し以下に分けて調べた。
①外国人は生活保護の対象か。
②1954(昭和29)年の局長通知は現在も続いているのか。
まず①生活保護の対象については、生活保護法を調べた。生活保護法では対象を次のように定めている。
「第一条 この法律は、日本国憲法第二十五条に規定する理念に基き、国が生活に困窮するすべての国民に対し、その困窮の程度に応じ、必要な保護を行い、その最低限度の生活を保障するとともに、その自立を助長することを目的とする。」
このように対象を「国民」としている。そのため「外国人は生活保護の対象となりません」という発言は正しいと言える。
次に②1954(昭和29)年の局長通知について調べた。玉木氏の発言によると、「昭和29年の局長通知によって「当分の間」支給されることになり、それが現在まで続いています」ということだ。
発言通り1954年に、「生活に困窮する外国人に対する生活保護の措置について」という通知が厚生省から出されていた。その中で次のように述べられている。
「一 生活保護法(以下単に「法」という。)第1条により、外国人は法の適用対象とならないのであるが、当分の間、生活に困窮する外国人に対しては一般国民に対する生活保護の決定実施の取扱に準じて左の手続により必要と認める保護を行うこと。」
本来、生活保護法は日本国民を対象とした法律である。しかし、この通知によって、人道的な観点から、生活に困窮する外国人にも、当分の間国民に準じて生活保護を適用するという方針が示されている。玉木氏の発言の通りと言える。
ただ、更に調べると2011年に厚生労働省から新たに通知が出されていたことがわかった。
2011年(平成23年)7月5日、各都道府県・指定都市・中核市民生主管部(局)長宛ての「外国人への生活保護の実施について」(社援保発0705第1号)という通知だ。
この通知の重要なポイントは、生活保護の対象となる外国人の在留資格をより厳格に解釈し、その確認を徹底するよう求めた点にある。具体的には以下の内容が含まれている。
・対象者の明確化: 生活保護法は日本国民を対象としているが、人道上の観点から、活動に制限がなく、日本での永住・定住が認められている外国人に限り、適用するものである
・入国目的の確認: 生活保護の申請があった際は、その外国人の入国目的や日本での活動状況を十分に聴取し、厳格に確認する
・「生活の拠点」の確認: 日本に「生活の拠点」があるとは言えない場合は、安易に保護の対象としない
・扶養義務者への確認強化: 国内外を問わず、扶養義務者からの援助の可能性について、より丁寧に調査・確認を行う
この通知は、既存の法律や過去の通知の趣旨を再徹底し、現場での運用を厳格化するよう求めたものと言える。つまり、1954(昭和29)年の通知は事実だがその後に厳格な対応を求めた別の通知が出ており、必ずしも玉木代表の発言の通りとは言えない。
(岩岡幸菜,岡田菜緒,丸石菜月)
編集長追記
このファクトチェックについてInFactは国民民主党に7月14日の10時半にメールで質問を送り、その旨を本部に電話で伝えていますが、7月16日現在、まだ回答は得られていません。回答が得られ次第、記事に反映させます。
InFactのファクトチェックは発信者を否定したり批判したりするものではなく、発信された内容について事実関係を確認して公表するものです。選挙期間中であっても、政党の代表、候補者の発言に事実と異なる点があれば党派にこだわらず公表することにしています。