
共産党の田村委員長が「選挙ドットコム」のYouTube番組に出演した際、れいわ新選組と共産党との違いを問われ、”れいわ新選組は大企業への増税はやらない立場”と発言した。それは本当なのかファクトチェックした。
対象言説
2025年6月2日の「選挙ドットコム」の YouTubeチャンネルに共産党の田村智子委員長が出演し、共産党とれいわ新選組の違いを問われて、「れいわさんは大企業であっても増税はやらないっていう立場なんですよ。増税はやったらだめで、国債だと」と語った。
この発言の中の、”れいわ新選組は大企業への増税をせず、国債発行で対処する”を対象言説とした。
田村委員長の発言は上リンク動画の17分ごろから
結論
れいわ新選組は、公式HPなどで明確に「富裕層や大企業への課税」を政策として掲げており、「大企業であっても増税はやらない」という田村委員長の発言は誤りと言える。
ファクトチェックの詳細
れいわ新撰組の公式ホームページの基本政策「1,経済・産業」の6 行目に「富裕層や大企業への課税を主張する」と書かれている。また「1-2 税政」の3項目に「大企業優遇となっている、現行の複雑な税制や租税特別措置を整理する」、 7 項目に「タックスヘイブンを利用した日本の大企業の租税回避を規制し、公平で公正な負担を求める」と書かれている。
マニフェストでは、消費税減税という同党の政策を実現させるための財源として「一つには、税金は大金持ち・大企業から取れ。あるところから回収する、ということで税収を確保するやり方。」と書いている。

公式HP「基本政策」の「1-1 財政・金融政策」では『新規国債の発行も財源のひとつです』と述べている。そのため、国債発行で財源を確保するという意味では田村委員長の認識は間違っていないが、大企業への増税は否定していない。
(赤間栄彦,柴田和樹/大東文化大学社会学部・野嶋ゼミファクトチェックチーム)
編集長追記
このファクトチェック結果についてInFactは7月16日午前6時40分頃に日本共産党宛にメールで質問を送っています。これについて選挙後の7月29日に回答を頂きました。以下がその全文になります。「InFact立岩様」とは編集長のことです。
InFact 立岩様ご依頼の件について、ご回答差し上げます。
ご指摘にある6月2日の選挙ドットコムチャンネルでの田村委員長の発言ですが、引用されている、「れいわさんは大企業であっても増税はやらないっていうた立場なんですよ。増税をやったらだめで、国債だと」という発言は消費税減税の財源として大企業や富裕層に応分の負担を求めるのか、それともれいわ新選組のように国債を財源とするのか、というやり取りの中でのものです。注目していただきたいのは、この発言の直前に、田村委員長は、「ここでれいわさんは大企業であっても・・・」と、後に続く内容について、消費税減税の財源について限定した言い方をしている点です。
れいわ新選組が法人税の累進税化や金融所得の総合課税を主張されていることは承知しておりますが、ここで議論している消費税減税の財源について、これまで、れいわ新選組が国債発行によって賄うと主張してきたことは、まぎれもない事実です。いくつか例をお示しします。〇2025年2月17日 衆議院 予算委員会 高井議員
「消費税を廃止して、財源を国債発行で賄って、そして政府支出、財政出動を増やす。積極財政こそが、今の日本にも、そして将来の日本にもベストだと思います」((第217国会 衆議院 予算委員会 第11号 令和7年2月17日)
〇2025年3月4日の衆議院予算委員会で櫛淵議員
「今こそ、公債発行に基づく積極財政で、消費税廃止と季節ごとの一律十万円給付、社会保険料の減免などを行う」(第217回国会 衆議院 予算委員会 第19号 令和7年3月4日)、
〇2025年3月4日の衆議院本会議で櫛渕議員
「不況で国民が苦しんでいるときには減税や財政出動をする、景気が過熱したときに増税や支出を抑制する、これが当たり前の経済政策です。」(第217回国会 衆議院 本会議 第7号 令和7年3月4日)
〇2025年5月17日 衆議院 予算委員会 高井議員
「総理、いいかげん、財源示せの大合唱、財源捻出の競い合いみたいな罰ゲームはやめませんか。堂々と国債発行して、今、目の前で苦しんでいる人々を救うべきではありませんか。」
第217回国会 衆議院 予算委員会 第22号 令和7年5月12日)なお、れいわ新選組はこの田村委員長の発言から20日ほど後の6月23日に参議院選挙政策・マニュフェストを発表し、その中で消費税減税の財源について、国債発行と合わせて、「税金は大金持ち・大企業から取れ」と言われていることも承知しています。
しかし、法人税率の引き上げや富裕層への所得税の累進の強化、金融所得への課税の強化はあげていますが、政策やマニュフェストのどこを見ても、消費税廃止の「26兆円」に見合う財源をどこからいくら確保するのか、具体的な提案は一切ありません。これでは国民に責任を持った財源提案とは到底言えません。
この政策発表後の6月30日の「YouTube|産経ニュース」で山本太郎代表は、「これは(法人税の累進税化や金融所得の総合課税などは)財源としてたくさん集めたいからということではなくて、社会にお金が増えすぎた、それを間引かないと、悪いインフレになってしまう可能性があるから、お金の調整手段として必要だという認識です。一方で、消費税をやめます。26兆円必要ですねって、話になった場合にまずなにをやりますかとなったときに、じゃあ、分かりました。大金持ちから取りますから、みなさん、それを準備しますので、お待ちくださいねって、何年かかるんですか。国民死にますよ。だからそんなことは待ってられない。両輪でやらなくてはいけない税制改革をやりながら、その片方で国債発行して、すぐにでも消費税をやめるっていうことを、やらなくてはいけない。というのが私たちの考え方です。」「消費税をやめます。まずは国債発行で。」(2025年6月30日 産経ニュース 【ノー編集・参院選】共産からの消費税批判「しんぶん赤旗」で訂正を れいわ新選組・山本太郎代表)と発言しています。
この山本氏の発言からわかることは、れいわ新選組は確かに富裕層や大企業への課税を掲げて「両輪」といっていますが、本気で消費税の財源として大企業への課税をするということではなく、政策として二つ持っているということに留まります。
さらに重要なことは、いくら参議院政策・マニュフェストで「財源のひとつ」と書いていても、党代表の山本氏が大企業や富裕層への増税を財源ではなく、インフレ対策などの調整手段だと明確に述べている点です。その上、これらの増税について、消費税減税の際に「そんなことは待ってられない」とも述べています。
これらの山本氏の発言は、消費税減税の財源としてれいわ新選組が「大企業であっても増税はやらない」とした田村委員長の指摘を十分に裏付けるものです。以上から、日本共産党の田村委員長の「選挙ドットコム」での発言について「事実とは言えないという結論」は誤りであると指摘せざるをえません。
日本共産党中央委員会 質問回答係
この回答を踏まえて編集部及び大東文化大学・野嶋ゼミと検討した結果、記事を修正する必要は無いとの結論になりましたことも併せてお伝えさせて頂きます。
InFactのファクトチェックは発信者を批判したり否定したりするものではありません。発信された内容について党派を問わず事実か否かを確認して、その結果を共有させて頂くものです。