
れいわ新選組の山本太郎代表は日本記者クラブ主催の党首討論会「コロナの時には112兆円もの国債発行をしたが、25年は29兆円。過去最高の倒産をマークしているのに」と発言している。本当にそうなのかファクトチェックした。
対象言説
れいわ新選組・山本太郎代表
「ちなみになんですけど、コロナの時には112兆円もの国債発行、閣議決定してますよ。一方で25年はいくらでしたかって。29兆ですよ。過去最高の倒産をマークしてるのに国民殺す気ですかって、中小企業殺す気ですかって。今やらないでどうするんですかって話です」
−日本記者クラブ主催「党首討論会」での発言(2025年7月2日)
結論
コロナ対策が始まった2020年度の国債新規発行額は、補正予算を含めて約112兆円。2025年度の国債新規発行額は、当初予算ベースで約28.6兆円。コロナ対策は補正予算を含んだ数字だという点に留意が必要だが、山本代表の発言は正しい。
一方、倒産件数については最多だったのは1984年、山本代表が指摘している去年は過去最多ではない。
ファクトチェックの詳細
国債発行額
まず、山本氏がコロナ対策で112兆円の国債を発行したのに、2025年の国債発行が29兆円にとどまっているという趣旨の発言について検証する。
財務省では、国債の発行について資料を公開している(『国債管理政策』)。それによると、2020(令和2)年度の国債新規発行額は、予算ベースでは補正予算を含めて112兆5539億円だった(参考)。他方、2025(令和7)年度の国債新規発行額は当初予算ベースで28兆6471億円となっている(参考)。
山本氏が言及した国債発行額は、予算ベースでみると正しいが、20年度の112兆円は3回編成された補正予算を含むのに対し、25年度の29兆円は補正予算が組まれておらず、当初予算だけの金額であり、両者を単純比較することはできない。20年度はコロナ対策1年目で緊急事態宣言により経済活動が大幅に制限された年だったことも考慮する必要がある。
予算ベースの国債新規発行額の推移をグラフにしたものが次の図である(データは財務省『国債等関係諸資料』参照)。山本氏の発言は、20年度の青と赤のグラフ合計(112兆円)と25年度の青のグラフ(29兆円)を比較したものである。当初予算ベースで見るなら、20年度の青のグラフ(32.5兆円)が比較対象になるはずである。

なお、上のデータとグラフは予算ベースの発行額であり、実績ベースの発行額はそれより少なくなっている(参考)。
2020年度 (予算)112兆5539億円 (実績)108兆5539億円
2021年度(予算)65兆6550億円 (実績)57兆6550億円
2022年度(予算)62兆4789億円 (実績)50兆4789億円
2023年度(予算)44兆4980億円 (実績)34兆9980億円
倒産件数
次に、山本氏が「過去最高の倒産をマークしている」と述べた点について見ていく。
東京商工リサーチでは、1952年からの倒産件数と負債総額を公表している(『倒産件数・負債総額推移』)。それによると、倒産件数が最も多かったのは1984年の20841件(2024年は10006件)、負債総額の最多は2000年の23兆8850億3500万円(2024年は2兆3435億3800万円)となっている。
帝国データバンクでも同様のデータを公開している(「倒産集計」)。年別のグラフで見ると、倒産件数は1984年に2万件超、負債総額は2000年に21兆8390億円余りだったことがわかり、数値はやや異なるが、最多の年は東京商工リサーチと同じだった。今世紀の2001年以後に限って見ても、リーマン・ショック翌年の2009年が倒産件数の最多で、2008年が負債総額の最多となっている。
倒産件数、負債総額ともに2021年以後、増加傾向にあることは確かだが(帝国データバンク倒産集計 2025年上半期報)、どのデータをみても直近の2024年や2025年上半期が「過去最多の倒産」になっているとは言えない。
このファクトチェック結果について7月17日にれいわ新選組にHPを通じて問い合わせを行ったが、現段階で回答は得ていない。今後、回答が得られた段階で記事に反映させる。
(田中善之)
編集長追記
InFactでは、検証の対象となる言説を非難するようなファクトチェックはしておりません。情報の内容を確認し、明らかになった事実を付け加え、共有することを目的としてファクトチェックをおこなっています。