
高市首相の「台湾有事」発言をきっかけに冷え込んだ日中関係は改善の兆しが見えない。今後、経済にも影響が出ることが予想されており、関西経済連合会の松本正義会長が「虚心 坦懐
に話し合って落としどころを見つけてほしい」と釘をさすなど経済界からも高市政権に対応を求める声が出ている。
この発言は去年の衆議院予算委員会で高市首相が発した言葉だが、それは民主党政権で外相を務めた岡田克也議員の質問に対するものだった。こうした中で、この問題は質問者である岡田議員が執拗に問いただした点に責任が有るかのような発信が行われている。高市首相がそうした主張をしたためだ。これについて衆院選でInFactと連携する琉球新報がファクトチェックしているのでInFactにも掲載する。(画像は2025年11月7日の衆議院予算委員会で岡田議員の質問に答える高市首相)
| ■検証言説:高市早苗首相の党首討論での発言 (「台湾有事」が存立危機事態になり得るとした国会答弁について)なぜそういう答弁をしたかということなんですが、(中略)私も具体的なことに言及したいとは思いませんでしたけれども、事予算委員会でございます。ですから、政府のこれまでの答弁をただもう一度もう一度と繰り返すだけでは、場合によってはこれは予算委員会を止められてしまう可能性もあるということで、やはり国会議員の皆様は全国民の代表でございます。具体的な事例を挙げて聞かれましたので、その範囲で私は誠実にお答えをしたつもりでございます。(昨年11月26日、国会の党首討論で)(※1) |
出典
(※1)【アーカイブ】党首討論 国家基本政策委員会合同審査会(2025年11月26日)(共同通信 KYODO NEWS)
https://www.youtube.com/live/2r9BcC9KHzM?si=szty6XUsPgnN__mJ&t=1545
(※「国会会議録検索システム」→「第219回国会 国家基本政策委員会合同審査会 第1号 令和7年11月26日」にも議事録あり)
| ■判定:質問者は「存立危機事態」に言及しないよう求めており、「予算委を止められてしまう可能性もある」は不正確・ミスリーディング |
高市早苗首相は去年11月7日の衆院予算委員会で、「台湾有事」を巡り「武力の行使も伴うものであれば、これはどう考えても存立危機事態になり得るケース」と答弁した。同10日の衆院予算委で「今後はこの場で明言することは慎む」と反省を口にしたが、従来の政府見解を踏み越えた答弁に、中国側が「台湾問題への干渉」として反発。日中関係が悪化する発端になった。
予算委で首相答弁を引き出したのは、立憲民主党の岡田克也元外相だった。ネット上で「しつこく聞いた岡田議員が危機を招いた」と質問者側の責任を問う言説が流れる中、高市首相は11月26日の党首討論で「私も具体的なことに言及したいとは思いませんでした」と発言。質問者が答弁に納得しないと審議が止まることがありうる予算委の仕組みを念頭に、「政府のこれまでの答弁を繰り返すだけでは、予算委を止められてしまう可能性もある」と岡田氏の要求に応じて答えたと主張した。
11月7日の質疑を確認すると、岡田氏は、高市氏が首相就任前の2024年、中国による台湾の海上封鎖が発生した場合に「存立危機事態になるかもしれない」と発言したことを取り上げ、「どういう場合に存立危機事態になるとお考えだったんですか」と尋ねている。しかし、前提として高市氏の過去の「存立危機事態になるかも」との発言を「不用意な発言」と指摘していた。さらに、首相が「どう考えても存立危機事態になり得るケース」と発言したのは、岡田氏が「軽々しく(存立危機事態に)なるかもしれないとか、可能性が高いとか、(中略)述べられていることは極めて問題だと思うが、いかがですか」と抑制を促す質問に対する答弁だった。
従来の政府見解を踏み越えた首相の答弁は、質問者の岡田氏が要求した内容ではない。「予算委を止められてしまう可能性もある」と質問者側に責任を転嫁した首相の弁明はミスリーディングと言える。(※2) なお、政府は11月7日の質疑前、岡田氏からの質問通告に沿って、首相向けの想定問答を作っていた。「台湾をめぐる問題が、対話により平和的に解決されることを期待するのが我が国の従来から一貫した立場」などと、従来の政府見解に沿った内容だった(※3)。首相がそれを逸脱して答弁したため、問題が発生したのが真相だ。
(琉球新報衆院選ファクトチェック取材班)
出典
(※2)【高市総理 “存立危機事態”発言】立憲・岡田克也氏の質問と総理の答弁をノーカットで再検証(2025年11月7日 衆議院予算委員会)|TBS NEWS DIG(TBS NEWS DIG Powered by JNN)
https://www.youtube.com/watch?v=jgzZn3kqV_U
(※「国会会議録検索システム」→「第219回国会 衆議院 予算委員会 第2号 令和7年11月7日」にも議事録あり)
(※3)立憲民主党の辻元清美参院議員に内閣官房が提出した資料(次ページ以降に添付)

以下が、岡田議員の質問に対して事務方が作成した資料で、当時、立憲民主党の議員だった辻元清美氏が入手した。「問6-1」「問6-2」は質問に対する回答の順番を示した通し番号だ。


琉球新報の記事は右のサイトから読めます。→https://ryukyushimpo.jp/national/entry-4984711.html
編集長追記
この記事のタイトルに「そもそも」とつけたのは琉球新報ではなくInFactです。今回の選挙を含めて、今の状況を生んだのがこの発言だとの印象が強いからです。歴史にifは無いといいますが、この発言が無ければ今の日中関係はないことは間違いないでしょう。これによって経済的には日本は厳しい状況に置かれたわけですがが、逆に高市首相の支持率は中国に弱腰ではないとして上がり、その状況から見て首相は解散にうって出た・・・そう考えると合点が行くわけです。
ここで誤解を恐れずに書くと、InFactは首相が国会に出て答弁する回数は減らした方が良いと考えています。それは、首相には懸案の日中関係を含め首脳外交など様々な執務が有るからですが、他に2つの理由があります。
1つは、首相の答弁以外で重要な審議が国会の各委員会で行われているにも関わらず、新聞、テレビが首相の答弁だけに注目してしまい、他の重要な審議が国民の目の届かない状況があるからです。閣僚や事務方である官僚の答弁によって政府の進める政策の矛盾点が明らかになることもあります。私たちはそうした点にもっと注目する必要が有ると考えます。
そしてもう1つは、首相が出ることによって野党の質問が首相の失言を引き出すことに集中してしまう点です。これは野党からすれば仕方のない点もありますが、やはり国会の審議を泥仕合のようなものにしている点も否定できません。
ただ、こうした考えを踏まえても、首相が国会で発言することの意味は大きいことは間違いありません。だからこそ、回数を抑制しても良いから国会で発言する際には、それなりの覚悟で臨んでほしい欲しいと思います。また、今回の岡田議員の質問は「泥仕合」の逆で、首相の外交の軸を確認する重要な質問だったと考えて良いでしょう。
そして大事なことは、首相が仮に失言をしたとして、その責任を質問した側に帰さないことです。本人も、国民も。それは琉球新報のこのファクトチェックでも明らかなとおり事実ではありませんが、仮に質問者の無理強いによって首相が失言をしたケースがあったとしても、それは質問者ではなく発言者の責任であることは間違いありません。
ファクトチェックは高市首相の発言の是非を問うているものではありません。今回の高市首相の発言については、「当然のことを言ったまでだ」との擁護の声も多く聞かれます。そうであれば、日中関係が悪化しても毅然とし、松本会長が言うように「虚心 坦懐
に話し合って落としどころを見つけ」ることが肝要で、質問者を非難するのは筋が通りません。
ファクトチェックはどちらかの側に立って行うものでもありません。繰り返しますが、InFactは首相の発言の是非を議論するものでもありません。首相の国会答弁が問題になった際に、それが質問者の責任だとする言説があたかも事実であるかのように語られることはあってはならないということです。

