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【参院選25FactCheck】選挙カーでは候補者の「箱乗り」はOKか?

【参院選25FactCheck】選挙カーでは候補者の「箱乗り」はOKか?


選挙カーを使った選挙活動で、候補者や運動員が車の窓から身を乗り出す「箱乗り」と呼ばれる行為が選挙期間中は許される、という意見がX上で広がっている。違法ではないという指摘も散見される。本当に道路交通法などに違反しないのかファクトチェックした。

対象言説

「選挙のときは違反ではありません。」(2025年6月29日Xの投稿

結論

選挙活動中の選挙候補者や運動員は、選挙カー内でシートベルト着用義務は免除される。しかし、警察は車の窓から上半身を乗り出す「箱乗り」と言われる行為は法律で禁止されており選挙でも例外ではないとしている。対象言説が紹介する動画は、女性候補者が選挙カーから大きく身をせり出し両手を突き出すポーズを繰り返す「箱乗り」であり、「選挙の時は違反ではない」とは言えない。

ファクトチェックの詳細

上記のポストを参考に調査したところ、各都道府県によって対応が変わる可能性があったため、複数の警察に問い合わせ、事実確認を行った。

京都府警、大阪府警、滋賀県警に対し下記2点について電話で問い合わせた。

① 選挙の候補者や運動員が選挙カーを運転する時、選挙カーに同乗する時にシートベルトの着用義務は免除されるのか?

② 窓から上半身をせりだす「箱乗り」は法令に抵触するのか?

①の質問ついては3府県警の担当者からいずれもシートベルト着用は「免除される」との回答を得られた。

道交法71条の3にはシートベルトの着用義務が規定されている。しかしここでは、その他政令で定めるやむを得ない理由があるときはその限りでないことも書かれている。道交法施行令26条3の2、1項8号と2項8号は、公職選挙法の適用を受ける候補者または選挙運動に従事する者が、選挙カーを運転するか、同乗する時に、シートベルトの着用義務が免除されるとしている。

②の質問については、3府県警の担当者からいずれも、「法令に抵触する可能性がある」との回答を得た。

道交法55条は、車両の乗車のために設備された場所以外の場所での乗車の禁止、運転手の視野を妨げるような行為の禁止が定められており、これは運転者、同乗者共に適用される。これについて滋賀県警の担当者は、55条はシートベルトの着用義務と異なり、除外規定はない、つまり選挙期間中でも55条が適用されないことはないとした。

道交法76条4項7号は、道路上で交通の危険を生じさせるか、著しく交通の妨害となるおそれがあると、公安委員会が認めた行為は禁止すると定めている。これは各都道府県の道路交通規則で定められている。関西3府県の道路交通規則、細則は以下のように、禁止する行為を定めている。

・京都府道路交通規則13条8号「交通の危険または妨害となるような方法で、自動車および路面電車から身体または物を突き出すこと。」

・大阪府道路交通規則14条5号「進行中の車両等からみだりに身体を出し、又は物を突き出すこと。」

・滋賀県道路施行細則第19条4号「みだりに物件を道路上に突き出し、または車両等の中から身体もしくは物件を出すこと。」

さらに投稿の内容となっている候補者の選挙区の警察に道路交通規則を確認したところ、第21条3号で「車両(牛馬を除く。)から、みだりに身体の一部を出し、又は物を突き出すこと。」が禁止されているとした。

したがって「箱乗り」は法令に抵触する可能性が高いということが言える。シートベルト着用義務とは異なり、選挙期間中の除外規定はない。

ただし、大阪府、京都府、滋賀県、奈良県、兵庫県の各選挙管理委員会に、選挙カーにおける「ハコ乗り」の注意喚起を行っているかに確認したところ、各選管の担当者から、「選挙カーでの「箱乗り」を含め、選挙運動の特定の行為について注意喚起が行われていない」との回答があった。

(北谷龍聖,笠川大地,椹木純奈)

編集長追記

InFactは検証の対象となる投稿及びその発信者を非難したり否定したりするようなファクトチェックはしていません。拡散する情報の内容を確認し、明らかになった事実を付け加え共有することを目的としてファクトチェックをおこなっています。社会で正しい情報を共有するため、選挙期間中であっても仮に個別の候補者の言動に誤りがあれば、党派を問わずそれを指摘することにしています。

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