
NHKと民放は公職選挙法に基づき、参院選の各候補者につき5分30秒で自らの主張を伝える政見放送を行っている。全国の選挙区のうち、13人が立候補している兵庫県(定員3人)に注目し、NHK総合テレビで放送された各候補者の主張のポイントをまとめた。兵庫県選挙区は3〜4人ずつ4回に分けて記事化する。
政見の中で、根拠を確認する必要が有るとInFact 編集部が判断した部分は、黄色のハイライトを付けている。これはこの部分が誤りである可能性が有るということではない。ファクトチェックの結果が出た段階で記事にする。
候補者は放送順になっている。1回目は以下の4人の候補。各候補者の画像はNHKの画像を使っている。
よしひら敏孝(日本維新の会)

経歴
兵庫県淡路島出身。東京大学法学部、体育会系ボート部、三菱商事、妻を亡くし、2児のシングルファザー。44歳。
政党の主張部分(吉村洋文代表)
日本維新の会は、次世代のための政党。子供たち、孫たちが活躍できる社会を作っていきます。その上で、高齢者の皆さんをお支える。
今の政治は課題を先送りしている。物価が高い、収入が上がらない、経済が良くならない。その負担が国民の皆さんにのしかかっている状態。
維新は、次世代のために有言実行する。今、ここで見直すべきことを見直して、目を背けることなく改革を進めていく。皆さんが、そして次の世代が、未来に希望を持って暮らせる国づくりをしていく。
日本維新の会は、社会保険料を下げる改革をやる。なぜ必要なのか?子どもの数は、昨年生まれてきた数、68万人。僕の時は200万人。これから子供はどんどん減っていく。その中で、社会保障の負担はどんどん、何もしなければどんどん増えていく。少子高齢化はこれからさらに進む。
その中で、高齢者の皆さんをしっかりと支えて、若い世代、子供たちの世代が元気でいられる、そういった社会保障を作っていかなければならない。今のままでは負担が増える一方。
給与明細で一番引かれているのは社会保険料。給料が上がっても社会保険料が多くて、そして若い世代の手取りもなかなか増えない。これを変えていかなければならない。
そのためには、膨張する医療費、年間今47兆円。2040年には80兆円になる、ここを抑えていく必要がある。医療の無駄を徹底的に見直し、そして医療費を年間4兆円削減する。この改革によって、手取りは年間6万円アップする。
日本維新の会は社会保険料を下げて、そして手取りを上げていく。
大阪、兵庫、京都、京阪神、ここががっちりとタッグを組んで関西を成長させていく。東京一極集中で、この30年間、日本は成長してこなかった。もし万一、首都圏で災害が起きた時、どこがバックアップするのか。関西が果たすべき役割は非常に大きい。東西二極の一極として関西が成長していく、ここが重要。
今行っている大阪・関西万博もそう。未来につなげていく必要があります。関空、神戸空港、そして京都、奈良、和歌山、この関西圏、ものすごく大きな魅力と力がある。この力を発揮できる仕組みが必要。そのためにも関西を強くして、そして関西が強くなれば日本が強くなる。
東西二極ができれば、いろんな都市がニョキニョキと成長してくることになる。都市が成長を引っ張っていく。今、日本にない、国政にない視点、それは都市戦略。関西の経済を強くしていく。
候補者・よしひら敏孝の主張部分
私は生まれ育った兵庫県から参議院選挙に挑戦。古いしがらみの政治が長く続き、税金と社会保険料の重い負担によって国民生活は疲弊している。食品消費税ゼロにより、まず物価高で苦しむ皆様の食卓を支える。そして、企業団体献金を受けない、しがらみのない立場から、社会保障制度を改革して財源を生み出し、働く世代の税金よりも重い社会保険料を年間6万円引き下げる。また、妻を病で亡くして、シングルファザーとして幼い2人の子供を育てている経験から、子育て支援政策に取り組み、親も子どもも安心して暮らせる社会を作る。
米村明美(れいわ新選組)

経歴
66歳。広島市生まれ。アメリカコロンビア大学卒。元ユネスコ国連職員、元大学教授。
政党の主張部分(山本太郎代表)
30年この国を壊した、衰退させた原因は自民党にある。やってることが間違ってる。政治によってつくられた地獄は、政治によってしか変えられない。生きてて良かったって思える社会にする。
厚労省の調査では国民の59.6%が生活が苦しいと言っている。こんな時は、さっさと減税。今すぐ、現金給付。
物価高だけじゃない。失われた30年を取り戻す大胆な経済政策が必要。賃金で見ると、この30年間、先進国はどこも右肩上がり。日本だけ下がりっぱなし。所得の中央値はこの27年間で145万円も下がっている。そんな国日本だけ。
一方、大企業は内部留保が過去最高。現預金をみれば、この12年で139兆円新たに増えている。日本の大金持ちの資産はたった2年間で105兆円も増えた。世界で2番目に大金持ちが多い国が日本。あなたから搾り取りまくって、大金持ちからは取らない。それを30年もやったら、国民が貧乏になった。
さっさと減税。今すぐ、現金給付。税金は大金持ちから、ちゃんと取る。消費税は廃止にしよう。社会保障の心配ご無用。消費税は、その一部しか社会保障に回ってない。
大企業などが支払う法人税はこの30年ずっと減税されている。(グラフを示しつつ)縦に入った赤い線が消費税。3、5、8、10%。消費税が増税される前後で、必ず法人税が下がる。この30年の間、法人税は305兆円以上減った。一方、消費税は499兆円増えた。つまり、消費税の約61%が大企業への法人税引き下げの穴埋めに回ったと言える。
例えば、あなたが150円のりんごジュースを買う。その150円は買ったお店だけでなく、りんごを作った農家、ジュースを作る工場、そこで働く人たち、それぞれを運ぶトラックドライバーにあなたの150円が波及する。誰かの消費は、誰かの所得。誰かの消費が減れば、誰かの所得も減る。あなたの使えるお金が増えないと景気なんて良くならない。賃金も上がらない。
消費税は消費に対する罰金。増税するたび、必ず個人消費が落ち込む。例えば100年に1度の不況、リーマンショックで、個人消費は4.1兆円落ち込んだ。消費税5%では7.5兆円。消費税8%では10.6兆円、消費税10%では18.4兆円の落ち込み。リーマンショック以上の影響を、自ら3回もつくり出した。
消費税を減税すると、あなたの使えるお金は、食料品のみ0%の場合、年6.4万円、月に5300円。消費税廃止では年29.8万円、月2万4900円。
参議院の計量シミュレーションでは、消費税をやめれば7年後、1人当たり賃金は年間35.7万円上がるという結果に。
候補者・米村明美の主張部分
広島の母子家庭で育ち、経済力、家庭環境による教育格差を体験し、教育で平等な社会を築くことを決意した。国連機関で教育専門家として勤務中、ゼネガルで山本太郎代表の街頭演説をYouTubeで聞いて日本社会こそ問題と考え、帰国して、れいわのメンバーとなった。
教育予算を増加させて無償化を進める。危険な原発は即時廃止し、核なき社会を作ることを目指す。
高橋ひであき(無所属連合)

経歴
42歳。早稲田大学教育学部中退。元IT会社社長。農家。政治団体鼎立の党代表。無所属連合兵庫国政政策委員。
候補者・高橋ひであきの主張
参議院議員になったらどんな政策を実現したいのか。4つある。
1つ目は農業政策。13年間、丹波市というところで黒豆農家をしていた。農業政策に非常に問題が多い。まず、今、日本の農地、いろんな国から狙われている。日本は農地を集約化して、企業化して、なんと株式会社化してしまうので、売りやすくなってしまうような制度を取っている。これは一刻も早く止めない。
日本の自給率、非常に低いです。今、38パーセントと言われている。タネを入れると9%台。日本の食料は海外から来てると言っても過言ではない。しっかり自分の国の食べ物は自分たちの国で作る、そんな国に変えていかなきゃいけない。
どうやってやるのかというと、価格維持政策が絶対に必要。なぜなら、市場の原理に任して輸入されるコメ、麦、大豆の価格が安いので、この価格を上げてあげることによって、農家が食べていける水準まで持っていくことが非常に重要。
反(たん)あたりですね、基礎、基礎支払いということで3万円農家さんに渡す。そうすると、再生産と言って、もう一度作った作物をもう一度作れるということが可能になる。これをするだけで日本の農業は蘇る。予算はたった1.5兆円規模。税収上振れしている分を農政に充てることで農業政策していきたい。
2つ目は林業政策。今、拡大造林と言って、戦後、植えられたスギ、ヒノキが山を覆っている。常緑樹なので、山肌に光が当たらない。そうすると、山の土が、どんどん流れていってしまって土砂災害を起こしたり、雨が降ると、水害を起こしたりする。これを強度の間伐をして地面に光を当ててあげる必要がある。スギ、ヒノキだけじゃなく広葉樹を植えて混交林化していく。それによって、山が天然のダムに変わる。川も海も綺麗になる。このために小規模な林業家をどんどん育てて村の担い手を育てていく、村の経済を回していく、そんな制度を取る必要がある。
3つ目は経済政策。こちらは、今、空前のカネ余りなのが日本。マネーストックと言って日銀が刷ったお金の総量に対してGDPは半分。なので、刷ったお金の半分しか今、市中に出回ってない、経済が回ってない。それは大企業とか資本家のとこにある。この方々はおカネを使う手段がない。なので、提唱したいのは、そういった大企業一極集中ではなくて、小規模、中規模、いろんな事業者さんたくさんいる、そういった方を支援することによって経済を活性化させる。そのためには減税もありだ。そして、消費税を取ったら輸出企業にだけ還付するんではなくて、すべての企業に還付するような新しい制度を設ける。それで負担を軽減して、使えるお金増やして、事業者が経営を続けていけるようにすればいい。
4つ目は憲法。自民党の4つの改憲の項目は、どれも緊急性が高くない。緊急事態条項と言って、内閣が強力な権限を持つことだけが可能になってしまう。これは、有事になった際に、私たちの本当の気持ちが反映されずに独断でいろんなストーリーが描かれてしまう可能性があるので、これは絶対に反対。自衛隊は合憲なので、憲法は改正する必要はない。
多田ひとみ(国民民主党)

経歴
45歳。同志社大学卒、経済産業省勤務、イギリス留学、公認会計士試験合格後、EY新日本有限責任監査法人勤務。
政党の主張部分(玉木雄一郎代表)
私たちは結党以来、一貫して真面目に働く人の手取りを増やす政策を訴えてきた。30年間動かなかった103万円の壁を動かすことができたのは、私たちに思いを託してくれた皆さんのおかげ。178万円までの引き上げは道半ばだが、私たちは諦めません。
国民民主党は、減税、社会保険料の軽減、ガソリン代や電気代などエネルギーコストの引き下げで手取りが増えたと実感の持てる経済を作る。自分の国は自分で守る。食料、土地、海、情報、そして日本人を守り抜く。
候補者・多田ひとみの主張部分
ふるさとを美しく優しい街のまま、次世代に残すため立候補した。今、この街では、県政の混乱から始まり、ネットでの行き過ぎた誹謗中傷、人を傷つける言動が飛び交っている。「ネット被害の救済制度」を実行性のあるものに改革する。
「情報流通プラットホーム対処法」の強化などで、命と対話を大切にする仕組みを作っていく。論破ではなく、互いの意見を尊重し合う社会で、生活者のための政治を第一に考える。
2024年、日本企業の経常利益は過去最高を記録した。しかし、その利益がどれほど「働く人」に届いているのか。日米で比較すると、日本はここ10年、アメリカよりも低い水準が続いている。格差社会と言われるアメリカよりも企業で働く人たちへの還元が少ない。手取りを増やすために、年収の壁の見直しに加えて、賃上げを促す中小企業減税、社会保険料の負担調整など、民間の成長と両立するかたちで、働く人の努力がもっと報われる制度を提案していく。
私は1980年生まれ、いわゆる就職氷河期世代。自分自身、結婚による退職、子育て、親の看護と介護などが重なる中、体調を崩したこともあった。公認会計士の試験に合格したのは35歳を過ぎてから。事情があって、今は働けなくても頑張ろうとしている方のために動くのは私の使命。
国民民主党は、年金の遡及救済制度や、正社員化助成などの法案を国会に出している。再チャレンジする人たちを支える政治に向き合う。