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【参院選25FactCheck】れいわ新選組”消費税を引き上げると個人消費が落ち込む”は本当か?

【参院選25FactCheck】れいわ新選組”消費税を引き上げると個人消費が落ち込む”は本当か?

れいわ新選組は消費税の廃止を参院選の公約に掲げている。その理由として「経済の長期停滞」を指摘し、「(消費)増税するたび消費が落ち込む」からだとしている。それはリーマンショックをはるかに上回るマイナスだったとも指摘している。それは本当なのかファクトチェックした。

対象言説

「増税するたび消費が落ち込む。100年に一度の不況、リーマンショックでの落ち込みは4.1兆円。消費税5%では7.5兆円の落ち込み。リーマンショック超え。消費税8%では10.6兆円の落ち込み。影響はリーマンショックの2倍以上。消費税10%では18.4兆円の落ち込み。影響はリーマンショックの4倍以上。」(れいわ新選組の公式サイトreiwasan202507manifestから抜粋)

結論

内閣府の四半期別のGDP=国内総生産において、半分を占める個人消費を実質で見ると確かに消費税率が引き上げられた度に、引き上げられた直後1年の個人消費の総額はその前の年の同じ期と比べてマイナスとなっている。ただ最新のデータでみると数字はやや異なっており、その点を考慮するとれいわ新選組の指摘は「ほぼ正しい」となる。

ファクトチェックの詳細

れいわ新選組が公式サイトで、数字の根拠に挙げているのが、内閣府経済社会総合研究所の資料だ。出典として「四半期別GDP速報(1994年1-3月期~2023年7-9月期1次速報値)」と書いている。

公式サイトでれいわ新選組が使ったとしている資料を見たが、どのデータを実際に使用したのか判らなかった。このためここでは最新のデータをもとに見ていく。最新のデータは2025年6月9日に発表された改定値、「四半期別GDP速報(1994年1-3月期~2025年1-3月期2次速報値)2025年1-3月期四半期別GDP速報(2次速報値)時系列表1 統計表一覧(2025年1-3月期2次速報値) : 経済社会総合研究所 – 内閣府」になる。

5%引き上げ時

まず消費税率が3%から5%に引き上げられた1997年4月から見ていこう。比較するのは1年前の1996年4月から翌年の3月にかけての民間最終消費支出、いわば個人消費の総額と1997年4月から翌年3月にかけての総額だ。個人消費は全体のGDPのおよそ半分を占めるもので、名目と実質に分かれるが、ここでは経済ニュースで扱われる実質、つまり物価の変動を除いた形を用いる。

1996年4月から1997年3月までの総額:263兆380億円

1997年4月から1998年3月までの総額:260兆1396億円 

3%に引き上げた時のマイナスは2兆8984億円となる。

8%引き上げ時

消費税率が5%から8%に引き上げられた2014年4月についても1年前の2013年4月から翌年3月までの総額と2014年4月から翌年3月までの総額を比べる。

2013年4月から2014年3月までの総額:305兆9952億円

2014年4月から2015年3月までの総額:297億9417億円

5%へ引き上げた時のマイナスは引き8兆535億円となる。

10%引き上げ時

8%から10%に引き上げられた2019年10月について、1年前の2018年10月から翌年の9月までの総額と2019年10月から翌年9月までの総額を比べる。ここで留意すべきは2020年春からコロナ危機が発生し、個人消費自体が抑えられたとみられる点だ。

2018年10月から2019年9月までの総額:302兆8318億円

2019年10月から2020年9月までの総額:287兆8846億円

10%に引き上げた時のマイナスは14兆9472億円となる。

リーマンショックによるマイナス
次にリーマンショックによる影響を見ていく。リーマンショックとは2008年9月にアメリカの投資会社リーマン・ブラザースが経営破たんしたことをきっかけに起きた世界的な金融危機で、100年に一度の不況と指摘された。これも1年前の2007年10月から翌年の9月までの総額と2008年10月から翌年9月までの総額を比べる。

2007年10月から2008年9月までの総額:289兆2142億円

2008年10月から2009年9月までの総額:283兆4455億円

リーマンショックによるマイナスは5兆7687億円となる。


リーマンショック時の落ち込みと比較した場合、5%への引き上げ時のマイナス幅の方がむしろ小さい。また8%への引き上げ時のマイナス幅は「2倍以上」ではなく、「1.4倍」だ。10%への引き上げ時についても「4倍以上」ではなく、「2.6倍」だ。

以上が、れいわ新選組が指摘した3つのケースでの個人消費の落ち込みについてファクトチェックした結果だ。指摘の通り、消費税率が引き上げられた前後の前年同期比で個人消費はマイナスになっている。リーマンショックによる落ち込みとの比較では厳密に見れば異なる点もあるが、総じて正しいと言える。一方で、消費税率を引き上げる直前は「駆け込み需要」も手伝ってマイナス幅が広がる傾向がある点にも留意が必要だ。

れいわ新選組には、どのデータを使用したのか問い合わせたが、現時点で回答はない。

(清水竜太郎)

編集長追記

InFactのファクトチェックは、対象言説を否定したりその発信者を批判したりするものではありません。発信された内容を確認し、その確認結果を社会と共有することを目的としています。

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