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【参院選25FactCheck】兵庫・泉候補”市長を務めた明石市の5つの無料化”は正しい?

【参院選25FactCheck】兵庫・泉候補”市長を務めた明石市の5つの無料化”は正しい?

参院選兵庫県挙区の立候補者、泉房穂氏(無所属)は政見放送で、自身が市長を務めた兵庫県明石市における「5つの無料化」を成果として主張している。それは事実なのかファクトチェックをした。

対象言説

兵庫県選挙区の立候補者で、元明石市長の泉房穂氏(無所属)が、NHKテレビで放送された政見放送の中で述べた以下の言葉。

「明石市、5つの無料化と評価されているのは、明石では子供の医療費は18歳まで完全無料。保育料も2人目以降は完全無料。給食費の無償化も。駅前には子供が喜ぶような施設を作り、親子とも利用料無料。さらに赤ちゃんのいる家庭にはおむつなども無料で届けている。/その結果、明石では子育てがしやすい、住みやすいと評価が高まり、人口減だった人口が人口増に転じた。中核市の人口増加割合で明石市はトップになった。合計特殊出生率も明石では直近5年間の平均が兵庫県内トップとなっている。」

InFact【参院選25FactCheck】注目の兵庫県選挙区・候補者の主張③  参照

結論

兵庫県明石市における18歳までは子どもの医療費無料など「5つの無料化」の内容は明石市の公表している数字を確認する限りでは正しい。しかし、その成果として示している一部の内容については根拠が不明だった。

ファクトチェックの詳細


泉氏は2011年から2023年まで明石市長を4期務めている。発言にある「5つの無償化」とは次の5つだ。

①子どもの医療費が18歳まで完全無料

②保育料も2人目以降は完全無料

③給食費の無償化

④駅前には子供が悦ぶような施設を作り、親子とも利用料無料

⑤赤ちゃんのいる家庭におむつなども無料で届けている

これら5つについて明石市の公式ウェブサイトで確認すると、泉氏の発言の内容が書かれている。それは以下の内容だ。

子どもの医療費が18歳まで完全無料 :明石市には「こども医療費助成制度」がある。市内在住の0歳から高校3年生までは、健康保険に加入していれば、外来・入院医療費(薬代含む)が無料になる。所得制限も設けられていない。

保育料も2人目以降は完全無料 :明石市では、第2子以降の児童が保育所や幼稚園を利用する際の保育料を無料にしている。市内に居住する児童が対象。兄弟姉妹の年齢差も関係ない。子育て世帯の経済的な負担を軽減するため、2016年9月に制度を導入した。

給食費を無償化 :明石市では中学校の給食費を無償化している。2020年4月から実施。

駅前に子供が喜ぶような施設を作り、親子とも利用料無料 :JR明石駅、山陽明石駅の近く、「あかしこども広場」にある屋内大型遊具を備えた親子交流スペース「ハレハレ」は、小学生以下の子どもと保護者が利用できる。

赤ちゃんのいる家庭に無料でおむつなども届けている :見守り支援員が保護者に会い、生後3カ月から満1歳の誕生月まで毎月おむつを配達している。転入の場合でも転入の3か月後から満1歳の誕生月まで毎月配達する。

泉氏は続けて、それらの成果として、①子育てがしやすい、住みやすいと評価が高まり、人口減だった人口が人口増に転じた、②中核市の人口増加割合で明石はトップになった、③合計特殊出生率でも明石では直近5年間の平均が兵庫県内トップになっている、の3点を挙げている。これらについても根拠を調べた。

①人口減から人口増へ :国勢調査による人口の推移で確認した。それによると、明石市の2000年の人口は293117人、2005年は293117人、2010年は290959人、2015年は293409人、2020年は303601人となっている。泉氏の市長就任は2011年であり、「人口減から人口増に転じた」とするのは正しい。

②中核市での人口増加割合でトップ:兵庫県内の中核市は明石のほか、姫路、尼崎、西宮の4市である。政府統計ポータルサイト(e-Stat)が公開している人口増減率を参照すると、2015年から2020年にかけての増減率は明石(△3.5%)、姫路(▼1%)、尼崎(△1.6%)、西宮(▼0.5%)となり、明石市がトップであった。各市のHPに掲載されたデータを参照し、2020年の国勢調査人口と今年6月1日での推計人口(各市のHPに掲載)を比較した。その結果、増減率は明石(△0.91%)、姫路(▼2.56%)、尼崎(▼1.20%)、西宮(▼0.89%)となり、明石市だけが上昇し、他の3市は減少している。明石市が中核4市の中ではトップであり、泉候補の主張は正しい。

③合計特殊出生率は直近5年の平均が県内トップ:合計特殊出生率は、1人の女性が生涯で産む子どもの平均数を数字で示したものだ。兵庫県「合計特殊出産率」のデータによれば、明石市は県内41市町村のうち、2010年は21位(合計特殊出生率1.48)、2015年は15位(同1.58)、2020年は6位(同1.62)となっている。このデータは1985年から2020年まで5年ごとの数字であるため、直近5年間の合計特殊出生率の平均値を算出することはできなかった。

仮に「直近5年の平均」を一覧データがある2015年と2020年の中央値として算出すると、1位は南あわじ市(1.77)、2位が加東市(1.70)、3位が朝来市(1.69)と続き、明石市は丹波市と同着の6位(1.60)。確認できる範囲では、「合計特殊出生率は直近5年の平均が県内トップ」とはならず、泉候補の主張を裏付けるデータは見つけられなかった。

(北谷龍聖)

編集長追記

InFactのファクトチェックは党派によらず対象言説について発言の根拠を確認し、その結果を社会と共有することを目的としています。

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