
高市総理大臣は、党首討論で「『責任ある積極財政』への大転換」を強調した。積極財政はこれまでの政策の「大転換」なのかファクトチェックした。
対象言説 『責任ある積極財政』への大転換

「(ボードに書いた『責任ある積極財政』への大転換について)日本列島を強く豊かにするために、これは必要なことです。特にリスクを最小化する危機管理投資、そして未来への成長をつくっていく成長投資。これを中心に今年の国会から審議をされる来年度予算にも盛り込ませていただいております。非常に大きな政策転換をするということ」(日本記者クラブ主催の党首討論会)
InFact「党首討論!高市総裁の発言のポイント」で記事化。
結論
当初予算ベースで見れば、2010年度ころより、歳出は基本的に右肩上がりに増えており、積極財政が続いてきたと言える。このため、正確には「積極財政」の更なる延長或いは拡大であって、「大転換」というわけではない。
ファクトチェックの詳細
まず、「大転換」という言葉を明確にしたい。Weblioによると、「物事が大きく変化すること」とある。つまり、従来行っていたことが異なる急激な変化を生じさせるということだろう。
次に、「積極財政」とは何かを見る。積極財政については、「経済の拡大や社会資本の整備のために積極的に支出を増やそうとする財政」(小学館・デジタル大辞泉「積極財政」の意味や使い方 わかりやすく解説 Weblio辞書 )となっている。積極財政とは、景気を良くするため政府が財政支出を増やす政策だということになる。当然、その反対は緊縮財政ということになる。
つまり、高市首相の「積極財政への大転換」とは、従来緊縮財政か或いはそれに近い政策だったものを、そうではない「積極的に支出を増やす財政」に変えるということだろう。
必然的に、これまでの政府がどのくらい支出を出そうと考えていたかを見る必要がある。そこで財政支出、つまり国の歳出がどのように推移しているのか見てみたい。

このグラフは財務省の財政に関する資料 : 財務省からのもので、1975年度から2025年度までの一般会計の歳出総額を示したものだ。青の直線が決算の数値、青の点線が当初予算の数値だ。歳出と共に税収総額と借金となる公債発行額も示されているが、ここでは、政府の姿勢を見るため当初予算に注目する必要がある。つまり青色の点線の流れを見て欲しい。
これを見ると当初予算は、小泉政権などが担った2000年代は80兆円余りでほぼ横ばいだったが、民主党政権となった2009年度の101兆円を機に右肩上がりとなっている。そして2012年に第二次安倍政権が始まり、2019年度の当初予算は101兆4564億円となり、初めて100兆円を突破する。グラフからわかるのはその後も当初予算は増え続け、2025年度は115兆円、2026年度案はまだ審議されていないが122兆円を超える過去最大規模となっている。
つまり2010年度ころから、歳出は基本的に右肩上がりに増えており、これは積極財政と考えられる。そうであれば、今後も積極財政を続ける高市総理大臣の主張は「大転換」ではなく、正しくは積極財政の「継続」或いは「拡大」と考えるのが妥当だ。
ここで決算も見てみよう。こちらは青色の実線の方だ。当初予算でこれまでも積極財政だったことがわかるが、念のために決算ベースでも見ておくことは無駄ではないだろう。グラフからわかるのは近年、当初予算と決算との間に乖離が見られることだ、これは補正予算が関係している(内閣府の公式サイト第1-3-1表 近年の補正予算規模の推移 – 内閣府)。以下が近年の補正予算だ。

勿論、補正予算が膨れた背景にはコロナ対策が有るが、物価高対策についても政府は補正予算を組んでおり、2020年度から2024年度にかけて総額で約170兆円の補正予算を組んでいる。その原資の9割近く(85%)が国債の発行によるものだ。中には使いきれなかったものもあり、その結果として決算は2020年度以降、右肩下がりとなっているが、当初予算の規模に加え補正予算を組むなど、これまでも積極財政であったことを裏付ける内容となっている。
(清水竜太郎)

