阪口徳雄弁護士
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◇「視聴者としての抗議の意思表明です」
NHKの籾井勝人会長の言動に対する批判がやまない。3日、弁護士と研究者のグループが、「もはや、公共放送の会長に貴殿がこれ以上、座り続けることを、視聴者として認めることはできない」として、籾井氏が会長職を辞めるまで受信料支払いを停止することを宣言。NHKと経営委員会に辞任要求書を送った。グループの世話人の弁護士・阪口徳雄さんに聞いた。(聞き手:石丸次郎)
石丸 ひどく怒っておられます。
阪口 慰安婦問題に対する発言の他、特定秘密保護法についての「一応通っちゃったんで、言ってもしょうがないんじゃないかと思う」という発言、国際放送(委託放送でない国際放送)についての「政府が『右』と言っているのに我々が『左』と言うわけにはいかない」という発言など、公共放送の会長としてあるまじき言動です。
NHKは国営放送ではなく公共放送。多くの国民によって支えられているわけだから、時の権力者、時の総理大臣が、都合のいい人を選ぶということは控えなければならないと思う。なぜなら、権力を批判しない報道機関になっては困るわけですから。本来は放送法上もあってはならないことです。
石丸 籾井会長の発言の放送法上の問題は?
阪口 放送法はいわばNHKの「憲法」です。(そこには)放送の仕方について、政治的には公平でなくてはならないと書いてあります。仮に意見が対立している問題については、できるだけ、一方の意見だけでなくて、多くの角度からその論点を明らかにするということが書かれています。時の会長が、ある一方の都合のいいことばかりを言うのは、本来あってはならんことです。
籾井さんは放送法を知らないんじゃないか? あるいは、知っていてあえて「俺はやってやるんだ」と乱暴なことを考えている人で、それが記者会見の席で本音がポロリと出てしまったのか。今まで、NHKの会長にはいろんな批判を受けた人がいましたが、籾井さんほど露骨に言う人はいなかったですよ。
石丸 「アベ様のNHK」になってしまったという声もあります
阪口 籾井さん、あるいは経営委員会に安倍晋三首相のお気に入りで入った人たちの中に、いろんな暴言を吐く人がいます。籾井会長はじめ、こういう人たちが辞めるまでNHKの受信料の支払いを停止しようと、弁護士と学者で宣言しました。
NHKには、籾井問題で多数の抗議のメールや電話が行っているそうですが、それぐらいでは効かないですよ。NHKの今の事態はあってはならないことです。それを視聴者として抗議の意味を込めて、受信料の支払停止を連名で通知します。
石丸 支払い停止に対してNHKは裁判に訴えるかもしれません。
阪口 NHKが裁判を起こしてくれたら、どんどん受けて立ちますよ。籾井さんみたいな人がNHKの会長にふさわしいのかどうか、現場は委縮しないかどうか、放送が会長に不利な報道を控えているではないか等・・・、視聴者が日頃疑問に感じていることの論争を挑みます。国会議員の生っちょろい質問ではなくて、籾井さん等を証人申請して公開の法廷で2時間でも3時間でも尋問するつもりです。
※ 受信料の支払い停止を決めたのは、弁護士の阪口徳雄さん、神戸学院大学大学院教授の上脇博之さんら20名で結成した「NHKを考える弁護士・研究者の会」。
※ 放送法の抜粋
(目的)
第1条 この法律は、次に掲げる原則に従つて、放送を公共の福祉に適合するように規律し、その健全な発達を図ることを目的とする。
一 放送が国民に最大限に普及されて、その効用をもたらすことを保障すること。
二 放送の不偏不党、真実及び自律を保障することによつて、放送による表現の自由を確保すること。
三 放送に携わる者の職責を明らかにすることによつて、放送が健全な民主主義の発達に資するようにすること。
(放送番組編成の自由)
第3条 放送番組は、法律に定める権限に基づく場合でなければ、何人からも干渉され、又は規律されることがない。
(国内放送等の放送番組の編集等)
第4条 放送事業者は、国内放送及び内外放送(以下「国内放送等」という。)の放送番組の編集に当たつては、次の各号の定めるところによらなければならない。
一 公安及び善良な風俗を害しないこと。
二 政治的に公平であること。
三 報道は事実をまげないですること。
四 意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること。
NHKに提出された籾井会長辞任要求書(PDFでみることができます。)