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総選挙ファクトチェック 維新の「大阪で教育無償化実現している」は「事実ではない」

総選挙ファクトチェック 維新の「大阪で教育無償化実現している」は「事実ではない」

10月17日
総選挙での有力政治家の発言について事実関係を確認するファクトチェックを行っているNPO「ニュースのタネ」が調べたところ、選挙戦で日本維新の会の松井一郎代表が繰り返している「大阪では4歳から高等学校まで無償化している」との発言は、事実ではないことが判った。松井代表は大阪府の知事であり、実態を把握できる立場であるにもかかわらず事実と異なる発言を行っていて極めて問題が有る。「ニュースのタネ」は、嘘度を示すエンマ大王度で上から2番目に重い3とした。
(ニュースのタネ 鈴木祐太/立岩陽一郎)

エンマ度3
エンマ度3

日本維新の会の松井一郎代表は10月10日の総選挙公示日の第一声で、「幼稚園の4歳、5歳、そこから高校の私学まで実質、無償化してるのは大阪だけです。それだけのことはできるわけです。これは実行してきたということなんです」と語っている。そして、消費税の引き上げに反対した上で、消費税を引き上げずとも役所の支出を見直すことで教育の無償化は可能だとしている。

この発言について大阪府の他、大阪市、堺市などについて調べたところ、以下のような状況であることが判った。

4歳、5歳の幼稚園、保育園の無償化を実施している大阪府内の自治体は、大阪市守口市だけだった。これに5歳児の無償化をしている門真市を加えても3市のみだった。

私立の小中学校については特別な取り組みは行っておらず、国の施策として所得に応じて年間一人当り10万円の補助があるのみだった。

一方、高等学校については、所得に応じて無償化を行っており、公立高校に通う生徒の85%で授業料の無償化が実施されていた。また、私学に通う生徒の5割で授業料の無償化が実施されていた。

松井代表の発言は、自らが知事を務める大阪府がこうした施策を行っているかのような印象を与えるものとなっているが、幼稚園、保育園の無償化は大阪市、守口市、門真市の独自の予算で行われているものだった。また、私立の小中学校については前述の通り国の予算で行われており、高等学校の公立高校の無償化も国の施策で行われたもので、大阪府の予算からまかなわれたものではなかった。私立高校の無償化のみ、大阪府の予算で行われていた。

(参考記事:
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これらから、松井代表の発言は実態を全く反映しておらず、「事実ではない」と判定せざるを得ない。松井代表が大阪府知事としてこれらの情報を把握する立場にあることを考えると、意図的に事実と異なる発言を行っていたと見られても仕方がなく、「ニュースのタネ」は最も問題があるエンマ大王度4に極めて近いエンマ大王度3とした。

安倍総理は、消費税の引き上げによって得られる5兆円強を教育の無償化などに充てるとしており、そのための信を問うのが今回の解散の理由の一つだとしている。このため、教育の無償化は今回の選挙の重要な争点となっている。松井代表の発言は有権者が投票する際に極めて重要な指標となるもので、松井代表には事実関係の確認と釈明が求められる。

安倍総理が解散理由で述べた「5兆円強」の根拠については、「ニュースのタネ」でファクトチェックを行っている。

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