「原発4号機からの大放出は10日間継続した。それには放射性ガス、凝縮したエアロゾル【空気中を浮遊する微粒子】、大量の燃料粒子が含まれていた。放出された放射性物質の総量は、1986年4月26日の時点で約1.4 ×1019Bq【ベクレル】であり、その中には1.8×1019Bqの131I【ヨウ素131】と8.5×1016Bqの放射性セシウム【137Csと他の同位体】、1.0×1015Bqの90Sr【ストロンチウム90】、の放射性プルトニウム【各種同位体】が含まれていた。放出された全放射性物質の約50%は希ガス【放射性キセノン=半減期5日など】によるものであった」
【外部リンク】チェルノブイリ原発事故による環境への影響とその修復:20年の経験
これに対して、福島第一から放出された放射性物質は旧原子力安全・保安院の推計値
では1万1340ペタベクレルだ。
【外部リンク】東京電力株式会社福島第一原子力発電所の事故に係る1号機、2号機及び3号機の炉心の状態に関する評価について
つまり次の様になる。
チェルノブイリ事故:福島第一事故=1万3650ペタベクレル:1万1340ペタベクレル
事実は、チェルノブイリ事故を少し下回っているだけで、とても「7分の1」という差が有るわけではないということだ。
では、なぜ「7分の1」という表現が横行するのか。それは、放出量を総量で比較せず、別の値で比較しているからに他ならない。使われているのはヨウ素換算倍率係数だ。
ヨウ素換算倍率係数の罠
このヨウ素換算倍率係数とは、放射性物質の危険度に応じて国際原子力事象評価尺度(INES)に定められているもので、危険とされるものほど値は大きくなる。当然、ヨウ素131の係数は1であり、仮にヨウ素131が10ペタベクレル検出された場合は、その値(ヨウ素131等価)はそのまま10ペタベクレルとなる。では、他の物質はどうか。セシウム137 のヨウ素換算倍率係数は40、ストロンチウム90は20だ。
ところが、係数が0のものもある。放射性希ガスがそれだ。原発事故の関連で言えば、キセノン133とクリプトン85がそれにあたる。何れもヨウ素換算倍率係数は0とINESで定めている。
(続く)
帯刀良(ジャーナリスト 大手放送局で20年間ドキュメンタリーなどを制作。アイ・アジアの設立に参加)