台所の床上10センチ程あった泥と大量の日用品を出し終え、床が見え始めた。「床が見えた!もう少し!」メンバーの間で歓声が沸き起こった。その時、「水! 水が沸いてくる!」と地元の高校生でボランティアのメンバーの声に、私は、台所に飛び込んだ。
そこでは、台所の壁から水道の蛇口をひねった様に水が沸いていた。家を半分埋め尽くした土砂崩れで裏山を流れる川の流れが変わり、家を通るようになってしまったものと考えられた。
この惨状に、落胆の様子を隠せない清水さんは、「もう住めない」と、ポツリと言った。私は、清水さんのその姿にかける言葉が無かった。
この水を止めるには家を半分以上覆い尽くしている土砂を重機で撤去しなければいけない。しかし、それを清水さんは市に要請しているが、「何度もお願いしているのに、来ない」と力なく話す。今は避難所暮らしの清水さんは、「お先真っ暗。アパートはみんな押さえられてしまった。市営住宅を応募したが抽選に外れた。仮設住宅はどうなる?建てるという話はまだ聞いてない」という。
生活再建を手助けするのがボランティアで、もう住めない家の清掃は行うことはできない。私たちボランティアもどうにかしてあげたいが、これが限界だった。