「私は ポスト(ワシントン・ポスト紙)から月に1ドルしかもらっていません。そのかわり、私は本を書くためにポストのリソースを使って自由に取材をすることが許されています。有難い話だと思っています」
条件が1つ有るのだと明かした。
「本を出す際には、その内容についてポストに書くことになっています」
その時も、著書「OBAMA’S WARS」を出した時で、その内容のエッセンスがワシントン・ポスト紙のトップを飾っていた。
この時期、彼に対する批判も出ている。その批判につながる言葉を、実はその場で私が引き出している。
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当時、政府内の資料をハッキングされて流失するウィキリークス事件が大きな話題となっていた。私がこれについてウッドワード記者の見解を問うたところ、彼は次の様に答えた。
「彼らの入手した文書は、私が常日頃見ている政府高官のメモに比べれば大したものじゃない」
その言葉はメディアで報じられ、結果、「ウッドワード記者は単に政権中枢にコネを持つだけの人間だ」という批判が生まれる。「あいつは結局、インナーサークル(政権の仲間)であって、ジャーナリストじゃない」といった批判さえ出た。
その批判は今も実は根強くある。ただし、そのコネを最大限に利用して、政権の内幕を伝えているという点、伝えている内容が事実だという点についての評価は変わらない。
そして、その「Fear」の内容だが、ウッドワード記者自身が明かした条件であるワシントン・ポスト紙の記事(9月4日付)から読むと、それなりにインパクトが有る。先ず、大統領自身が捜査の対象となっているロシア疑惑についてのやり取りが目を引く。
この疑惑については、繰り返しYahoo個人に書いているが、最大の焦点は、トランプ大統領がFBI長官のジェームズ・コミー氏を解任したことが司法妨害にあたるか否かだ。そして、捜査を指揮するロバート・モラー特別検察官が求めているのは、トランプ大統領の事情聴取だ。
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これについて著書では、当時のトランプ大統領の顧問弁護士のジョン・ダウドが、予行演習をやろうとして最後に諦めるところが描かれているという。 ワシントン・ポスト紙によると次のようになっている。
「ジョン・ダウドは、もしトランプ大統領が特別検察官の事情聴取に応じれば、偽証するだろうことを確信させられた」
ダウドがモラー特別検察官から投げかけられるだろう質問を出したところ、トランプ大統領は直ぐに冷静さを失い、「これはでっち上げだ」と叫び、「証言はしない」と言い放ったという。開始から僅か30分しか経っていなかった。
ダウドは「あなたが事情聴取に応じれば、(偽証罪で)刑務所行きは免れないでしょう」と言い残して弁護士を辞任している。この大統領はまともに物事を整理して話すことができないということだ。
そうしたエピソードは主要閣僚についても描かれている。
大統領の側近中の側近である首席補佐官のジョン・ケリー氏が会議で語ったという言葉は痛烈だ。
「彼(トランプ大統領)は馬鹿野郎だ。彼に何かを説明するなんて意味が無い。常軌を逸している。我々はクレージータウンの中にいる。私は我々がなぜここにいるのかさえわからなくなる。これまででこんなにひどい仕事を経験したことはない」
これが首席補佐官の発言だ。日本で言えば、官房長官である。安倍総理が菅官房長官から陰でこう言われるなど、想像できるだろうか?
一貫してトランプ大統領を支えてきたジェームズ・マティス国防長官が何度も切れかかっているというエピソードも出てきている。その1つは、その死去(8月25日死去)が大きく報じられたジョン・マケイン上院議員についてのやりとりだったという。
マケイン議員がベトナム戦争で捕虜となったことは知られるが、なぜかトランプ大統領はそのエピソードに難癖をつけたがるところが有り、マティス長官や軍の高官との食事の席でマケイン議員は「意気地なしだ」と語ったという。その理由として、マケイン議員が米軍の高官だった父親の力を使って捕虜交換話をベトナム側に持ちかけたからだと言いだした。