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【日本学術会議問題】加藤官房長官会見(10月6日)

【日本学術会議問題】加藤官房長官会見(10月6日)

菅義偉首相が日本学術会議の会員6名の任命を拒否した問題で、政府は同会議の推薦どおりに首相が任命する義務はないとする2018年11月作成の内閣府見解文書を開示した。これを受け、加藤官房長官は政府の考え方を整理したもので、解釈を変更したものではないと強調した。(インファクト編集部)

(注)会見録一覧はこちら。記者会見は公開情報ですので、転載等は自由です。首相官邸サイトの動画などで発言内容を確認し、日本学術会議関連の発言は全て抽出するようにしています。途中で別の内容で質疑応答があった箇所は横ラインを入れています。聞き取りにくい部分などは●●としています。必要に応じて正確を期すための修正を行います。

加藤勝信官房長官 定例記者会見(10月6日午前)

(記者)
共同通信のカサイと申します。話題変わりまして、学術会議についておうかがいします。
総理は昨日の内閣記者会のインタビューで、現状では事実上現会員が自分の後任を指名することも可能な仕組みとなっていると述べられましたが、2011年から17年に会長だった大西東大名誉教授はですね、今日のテレビ番組で辞めるときの後任についてこの人にしてくれと言うわけではない、誤解を招く表現だと指摘していますが、政府のご認識をお聞かせください。

(長官)
日本学術会議が会員候補者を内閣総理大臣に推薦するに当たって、日本学術会議内の選考過程において、現会員が次の会員候補を推薦することが可能であり、その選定も現会員のみが行う仕組みになっております。
これは日本学術会議会則に記載されております。
それを踏まえて発言されたものというふうに思います。

(記者)
朝日新聞のキクチです。関連でおうかがいします。
昨日の首相のグループインタビューで、首相は、総合的俯瞰的活動を確保する観点から今回の任命について判断したと述べられております。
あの、趣旨は長官会見でも官房長官が度々おっしゃられていることと同じだと思いますが、ここで首相が判断理由とした総合的俯瞰的活動とは、これは具体的にどういったことを指しているんでしょうか。

(長官)
まず日本学術会議が、科学の向上発展を図り、行政、産業および国民生活に科学を反映、浸透させることが目的とされているわけでありますが、その目的を果たしていただく上において、総合的俯瞰的観点からその活動を進めていただきたい、こういう意味であります。

(記者)
関連で重ねておうかがいします。朝日新聞のキクチです。
その目的を果たすためということですけれども、昨日の首相は今回の任命の判断理由として、こうした活動を確保する観点を挙げていると。
そうした説明をした以上、今回6人が除外されたのは、こうした観点から外れたと考えるのが合理的だと思うんですけれども、長官のご認識をお願いいたします。

(長官)
ですから、それはそうした観点に立って任命をさせていただいたということは既に申し上げているわけであります。

(記者)
重ねてお伺いします。
そうした観点に立って任命したという理由はそのとおりかと思うんですけれども、裏を返せばそうした観点に立って任命されなかった方もいると解してよろしいんでしょうか。

(長官)
それは結果においてそういうことにつながるんだと思いますが、基本的には任命をしないんではなくて、任命をするという立場でありますから、そういった観点に立って任命をしたということであります。

(記者)
関連でもうひとつおうかがいします。朝日新聞のキクチです。
菅総理は一方で学術会議の在り方についても言及されています。
例えば、政府機関であったり、10億円の予算を使っていたり、特別職の公務員であったりすると。
加えてですが、先ほど質問にもありましたが、現在の会員が後任を指名することが可能であるという、この仕組みそのものにも疑問を呈されています。
ただ、これは学術会議の在り方に関する議論であって、今回6人が任命除外された問題とは別の議論だと思うんですけれども、いかがでしょうか。

(長官)
そういう疑念というものをお持ちになる中で、先ほど申し上げたように、学術会議の本来の目的に沿って、総合的俯瞰的に活動していただく、そのためにどうあるべきなのかという観点から任命をさせていただいたということであります。

(記者)
産経新聞チダと申します。関連でおうかがいいたします。
昨日もお伺いしたんですけれども、学術会議の予算関連ですが、約10億円の予算がついていて、内訳について人件費を含む政策提言などに2億5000万円、事務人件費、事務費などに5億5000万円ということで、昨日答弁いただきました。
改めてですが、その2億5000万円のうち会員に支払われている人件費は幾らなのか、また事務局には何人所属して、5億5000万円のうち職員には幾ら支払われているのか教えてください。

(長官)
はい、昨日は、ちょっと政策提言、たしか2.9億円と言ったような記憶が残っていますが、いずれにしても何年度、何年度ということでありますけれども、決算ベースで申し上げると、令和元年度の会員手当の支給総額は約4500万円と承知をしております。
また、学術会議事務局の常勤職員は50名、その人件費は令和元年度で約3億9000万円ということであります。
それ以外に例えば旅費等々がそれに乗ってくるということです。

(記者)
東京新聞のムラカミです。関連しておうかがいいたします。
日本学術会議のその会員の任命についておうかがいしますが、これまで日本学術会議側にですね、ごめんなさい、推薦名簿の人数についておうかがいします。
改選時や欠員の補充の際に、その推薦候補の人数を少し多めに示すように求めたということはこれまであるんでしょうか。
また、ある場合はそれはいつからそういうふうに求めて、また何人ほど上回る名簿というのを求めていたんでしょうか。

(長官)
少なくとも結論から申し上げますと、これまで定員どおりの推薦が上がっていたということではあります。
学術会議からはですね、その間にいろんなやりとりがあったというふうに思いますけれども、これはちょっと人事にかかるプロセスでありますから、コメントは控えさせていただきたいと思います。

(記者)
東京新聞ムラカミです。関連してまた日本学術会議でおうかがいいたします。
その日本学術会議法に基づく任命ですけれども、それはその上位法の憲法にのっとっているというのが昨日の長官からのご説明だったかと思います。
15条だったり、また23条の学問の自由、あと65条の行政権は内閣に属することなどを挙げていましたけれども、改めてこの憲法と日本学術会議法の関係で、憲法で関係する条文というのはどういったものがあるんでしょうか。

(長官)
憲法ですからいろんな形で絡んでいるんでですね、網羅的に挙げるってなかなか難しいと思いますが、主にということで申し上げれば、憲法15条の国民、公務員を選定し、およびこれを罷免することは国民固有の権利であるということ。
それから、第65条の行政権は内閣に属すること。
第72条に、内閣総理大臣は、ちょっと飛ばしますけど行政各部を指揮、監督する、こういう条文、それに憲法23条の学問の自由はこれを保障するというところが主だった条文だというふうに思います。

(記者)
東京新聞ムラカミです。その条文に関連しておうかがいいたします。
映画監督のですね、是枝裕和さんら映画人の有志が、今回の人事介入に関する声明を出されて、その中で学問の自由のみならずですね、21条の表現の自由や言論の自由にも、言論の自由への挑戦だとも、というふうに抗議をされています。
こういった言論や表現の自由の萎縮効果につながるという指摘もありますが、そういったご認識というのは今回の件で政府としてはお持ちなんでしょうか。

(長官)
いろいろな観点から、いろんな方が、いろいろなご意見を言われるというのはそれは当然あることだというふうに思いますから、我々それぞれのお話はしっかり聞かなければならないというふうに思います。
ただ、一方でいま申し上げた15条でありですね、要するにこの、日本学術会議の組織は行政組織であります。
選ばれている方は特別公務員であります。
したがってそうした意味において、果たすべき政府としての責務も当然あるわけでありますから、そこはしっかりさまざまな観点に立ってですね、適正な判断をしていくということであります。

(記者)
●●新聞●●です。関連でおうかがいいたします。
先ほどのご質問にもございましたが、総理がインタビューで、事実上現在の会員が自分の後任を指名することも可能な仕組みとなっていることと発言された件ですけれども、政府はその後任を前会員が指名することが可能な仕組みのどのような点を問題点としてご認識なんでしょうか。

(長官)
総理はあくまでもそういうことを踏まえてということでありますから、具体的にAという方が次のというんじゃなくて、いま申し上げた条文を私申し上げましたけれど、そういう条文の過程の中でですね、具体的な運用というものがどうされているんだろうかということでおっしゃったんではないかというふうに思います。

(記者)
毎日新聞のサトウです。関連でおうかがいいたします。
それでしたら、いま現在までに政府として何かその、後任を選ぶ仕組みについて検討された過去の経緯などっていうのはございますでしょうか。

(長官)

どういう意味ですか。

(記者)
過去のその制度のあり方、後任を指名するその仕組みについて検討が議題に上ったことというのはございますでしょうか。

(長官)
あの、まずひとつは基本的にはいまの法律上ですね、日本学術会議の中でそれはどういうやり方をされるのか、現状のやり方もですね、会則ですから、学術会議がお決めになったそれにのっとっておやりになっているということでありまして、基本的に推薦について一義的には日本学術会議がおやりになるわけであります。
ただ、それから任命との関係含めて、いろんなやりとりは先ほどご質問があったように、いろんな議論は当然なされてきているんだというふうに思います。

(職員が官房長官に助言)

(長官)
あそうなの、すみません、あの、はい、すみません、えー日本学術会議の会員は特別職の国家公務員ということで、私が特別国家公務員と言ったとすれば、特別職の国家公務員というのが正確であります。
訂正させていただきます。


(記者)
北海道新聞のイシイです。
先ほどの学術の関係で、総合的俯瞰的活動という、それがどういうものかということで、その中身についてはその、政府の方針にのっとるとかですね、そういう活動に偏りがないということも含まれているんでしょうか。

(長官)
ん?おっしゃるちょっと趣旨が十分とり切れてませんけれども、まさにそうした目的を達するために、総合的俯瞰的に活動することを期待をしているわけでありますから、そうした観点から我々も判断をさせていただいている、こういうことです。


2020年10月6日午前、首相官邸

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